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第178話 女王様とフランコ君 1

「うん。いい感じじゃない?」


「素敵だよ、フランコ!」


「うん。変わった」


「何で私だけこんな…」


フランコ君を生贄…もとい。女王様に婚約の相手として御薦めする為に、エルムバーンの城から正装と、ちょっとしたアクセサリーを用意。

フランコ君をビシッとコーディネイト。

アイとユウの力作だ。


「私だけ、こんな…浮いてないか?」


「うん。浮いて…いや目立ってるね」


「ウチらは旅装のままだしね」


「まぁ何もしないよりきっといいよ」


「あとは…フランコさん。女性と付き合った事は?」


「な!何でそんな事を!」


「いえ、女性の口説き方とかわかるかなと。で、どうなんですか?」


「な…無いです…」


うん、まぁ。

そうだと思った。

ダーバ王子も酷な事聞くなあ。


「う~ん…女性慣れしてないってのは不利ですねー」


「でも~女王様も男慣れしてないなら五分じゃない?」


「ジュン様と比べると…」


「それは言っちゃダメなんじゃない?ターニャちゃん」


「でも…ジュン様よりいい印象を持ってもらわないと…」


「うーん…それはまぁ確かに…」


「酒の力を借りるというのはどうじゃ?」


「最初からそれはダメでしょ爺さん」


酒の力かぁ。

酔える人はそれが出来るんだろうなぁ。


「そもそも何で私が…ジュン殿の身代わりのような真似を…」


「あ~…それに関しては…ごめんね?」


何かマズい事になったら出来るだけフォローさせてもらおう。

いや、ほんと。


「(あのさ、フランコ君。もっと前向きに捉えようよ)」


「(そうそう。今の姿はアイシスも見てるわけで。アイシスにいいとこ見せると思えば)」


「な!何を…何で…」


「(そんなの見てればわかるって。何も本気で女王様と婚約しろなんて言わないし、思ってないからさ。女王様の意識を逸らしたいだけで。でもフランコ君にとってもいい機会じゃない?)」


「(い、いい機会?)」


「(女の子の口説き方を勉強をするいい機会だよ。アイシスにいつもと違うフランコ君を見せてアピールも出来るし。悪い事ばかりじゃないでしょ?)」


「(う、う~~む…)」


何やらアイとユウがフランコ君とヒソヒソ話してるが…


「(それにもし本当に婚約ってなっても所詮婚約だし。後で婚約解消だって可能だし。気軽に挑戦してみようよ)」


「(い、いや…女王陛下との婚約を解消なんて…簡単に出来るわけ…)」


「(大丈夫大丈夫。いざとなったらエルムバーン魔王家も協力するから。何とななるなる)」


二人の悪い顔からして何か吹き込んでるに違いない。

説得してくれてるんだろうけど…


「…わかった。やってはみる…」


「それでこそフランコ君!」


「目指せモテ男!」


何か二人に、悪魔の尻尾と角が見える気が…。

いや、実際二人は魔族なのだが…


「「ヒヒッ」」


すっげー悪い顔してるよ、君達。

何だその悪魔の微笑み。


「失礼します。夕食のご用意が整いましたので、皆様食堂の方へ」


「ああ、はい」


夕食の食堂はセバストやノエラ達とは分けられてしまった。

護衛は必要だとノエラやクリステアが粘っていたが引いてもらった。


「ささ、ジュンさん。グイっと」


「ああ、ありがとうございます」


料理は一見、豪華ではあるが量はそれほどでもない。

味も…ダーバ王子が言ってたようにイマイチ。

そしてさっきからやたらと…酒を進められている。

結構強い酒だ。

距離もやたら近いし。


「ところで女王様」


「クローディア、ですよ」


「あ、クローディアさん。婚約の話ですけど」


「考え直して戴けました!?」


「違います。フランコ君はどうですか?」


「フランコさん…ですか?」


小首を傾げるその姿から察するに…。

『何言ってんだ、こいつ』か『誰だっけ』のどちらかだと思うけど、どっちだ。


「フランコさん…あちらのフランコさんですよね?ヴェルリア王国の大臣の御子息の…」


「そうです。勇者アイシスの仲間で、優秀な魔法使い。治癒魔法も使える逸材ですよ」


「う~ん…私は今はジュン様を口説いてる身ですから。あっちもこっちもと手を出すような女ではありませんよ?」


『何言ってんだ』の方だったか。


「いやいや~ボクの方は結論が出てるじゃないですか」


「私、諦めの悪い女なんです」


「そう言わずに。フランコ君はいい男ですよ?政治的に考えてもいい相手だと思いませんか?」


「う~ん…ヴェルリア王国の大臣の次男…勇者の仲間…王位継承権問題にも絡んでなく家督の相続にも問題が無い。王族との結婚ほど強い縁が出来るわけではないのが少々残念ではありますが…確かに悪い相手ではありません」


「でしょ?ささっ、フランコ君のお隣へ。どうぞどうぞ」


「ですが、今はジュンさんを口説いていますので。ジュンさんを諦める事になったら、その時改めて考えさせてもらいますね」


決意が固い!

フランコ君もホッとしてるし!


「ささ、ジュンさん。もう一杯」


「はぁ…はい…」


フランコ君は既に我関せずの空気を醸し出してるが…そうは行かない。


「クローディアさん。やけに酒を勧めますが…これがもしや作戦ですか?ボクを酔わせてどうするんです?」


「う!な、なんの事でしょうか?私にはさっぱりで」


クローディアさんの侍女の二人を見ると…目を逸らした。

二人の入れ知恵ですか。

ゴードンさんの言ってた作戦を向こうが仕掛けてくるとは。


「そうですか。なら飲み比べと行きませんか。フランコ君も交えて三人で」


「飲み比べ、ですか?」


「は?え?私も?」


「ボクだけ飲むのも申し訳ないですし。そうですねぇ…折角ですから賭けでもします?」


「賭け、ですか?」


「はい。クローディアさんが勝ったら…そうですねぇ。治癒魔法使いの派遣はボクが責任を持って確実に行いましょう。無償で」


「それは…婚約じゃないのは残念ですが魅力的ではありますね。ジュンさんが勝った場合は?」


「ボクとの婚約は諦めてください。それだけでいいですよ。フランコ君が勝ったらどうする?」


「わ、私か?か、勝ったら考える」


「ふむ…まぁいいか。どうですか、クローディアさん」


「…いいでしょう。勝負は受けます。ですが婚約は諦めるのではなく王城に着く迄は何もしません。それとフランコさんとの婚約を前向きに考えます。それでどうですか」


う~ん…少々賭けのバランスが取れてないように思うが…いいか。

多分負けないし。


「飲み比べと聞いては黙っておれませんなあ!」


「わしらも参加させていただけますかな?」


「バ、バルトハルトさん」


「おい、爺さん。遠慮しとけよ。爺さんが参加したら勝負は見えたも同然じゃないか」


ここでまさかの年長者二人組が参戦。

空気読んで!


「これは…私が不利なのではないですか?四対一も同然では?」


「御安心ください。女王陛下」


「わしとバルトハルト殿は賭けには加わりませんので。ただ飲み比べに参加するのみです」


ただ飲みたいだけじゃん、それ…

しかし、まぁそれでも二対一か。


「じゃあ、そちらのアニータさんとエッダさんでしたか?御二人も参加されては?」


「いいのですか?」


「私はお酒強いですよ?」


「どうぞどうぞ」


ボクも酒の強さには自信がある。

なんせザルだし。

仮に負けても然して問題じゃない。


「いいでしょう。受けて立ちます。ではお酒を…」


「あ、酒はこちらからも提供しますよ。あと…ボクの従者達を呼んでもらえますか」


ボクとセバストの魔法の袋の中には酒がそれなりに入ってる。

多分かなりの量を飲む事になるだろうし、提供しよう。

ところで…


「(フランコ君はお酒はイケるほう?)」


「(いや…人並だと思う。バルトハルトさんには勝てないのは確実だが…)」


「(何とかクローディアさん達には勝って。ボクはクローディアさん達がギブアップしたら、勝ちはフランコ君に譲るから)」


「(わ、わかった…)」


というわけで始まった飲み比べ。

先ずはグンタークのワインからだ。

甘口の白ワインで結構飲みやすい。


「ところで今更ですが、クローディアさんは成人されてますよね?」


「はい。先月十五歳になりました」


一つ年下だったか。

女王陛下っぽく振舞ってる時は年上っぽく見えたけど、素を出してる時は年相応の女の子に見える。


「なら大丈夫ですね。さ、どんどんいきましょうか。あ、お酒だけ飲むんじゃなくて何かつまみながら飲んだ方がいいですよ」


「余裕ですね…敵に塩を送るなんて…」


「そうですね。実際余裕だと思いますよ?」


「ぬ~…」


アニータさんとエッダさんは全然平気そうだがクローディアさんは既に少し酔ってる感じだ。

フランコ君は…


「…………」


ダメだー。

既に出来上がってる感じだ。

人並より弱いじゃん。


「中々のワインですな!」


「いいワインですが、わしは辛口の方が好みですのう。あ、つまみを追加してくだされ」


バルトハルトさんとゴードンさんはもはやただ飲んでるだけだな。

飲み比べだから、それでいいんだけども。


それから一人一本のワインを飲み切る頃にまずフランコ君が脱落。

早い、早いよフランコ君。


「ふ、ふふふ…ま、まず、ひほりでふね」


「そうですね。二人目ももうすぐみたいですねー」


それから間もなくクローディアさんも脱落。

ここからが本当の勝負みたいだ。

バルトハルトさんとゴードンさんはどうでもいいとして…


「こんなに飲んだのは久しぶりかも」


「そうね。内乱が起きる前になるわね」


アニータさんとエッダさんはまだまだ平気そうだ。

ボクも全然平気。


グンタークの白ワインを飲み干した頃には皆、酔ってはいるがまだ平気そうな感じ。

次はボクが出した赤ワインだ。


「ん~…これはこれは。実に美味い」


「いいですのぅ。実にわし好みの味ですな」


「ん~ふふ~まだまだいけますよ~」


「わたしもまだまだ~」


バルトハルトさんとゴードンさんは変わらないがアニータさんとエッダさんは結構回って来たな。

ボクが出した赤ワインを飲み切る頃にはアニータさんとエッダさんの限界が見えて来た。

次に出したのは例の林檎を使ったリンゴ酒だ。

これが実に美味い。

普段お酒を飲まないボクだけど、これは好きだから偶に飲んでる。

そしてかなり強い酒だ。


「これは美味い!」


「林檎を使った酒ですな?実に美味い酒です!」


「美味しい!」


「ほんと、美味しい!」


甘くて飲みやすいし、極上に美味いから、かなり酒が回ってたアニータさんとエッダさんも飲む勢いが回復したが…今までで一番強い酒をグイグイ飲んだので一本開ける頃にはダウン。

これで勝負は決まったわけだ。


「で、御二人はどうします?まだ飲みます?」


「まだまだいけまふぞ~」


「酒でわしが負けるわけにはいきまふぇんので~」


ここまでで全員で開けた酒瓶の数は…六十本。

周りで見てる人は驚愕の眼で見てる。


「ジュン殿は酒も強いのですね…完全無欠なんですか?」


「凄いわねぇ。どういう体してるのかしら」


まぁ普通じゃないよね。

強い酒ばかりだったし。


「はい、じゃあどうぞ」


「まだまだいけまふ、いけまふぞ~」


「わしも…まら…いけまっふ…」


それからもう十本。

合計七十本目で二人もダウン。

予定通り、ボクの勝利だ。

まぁ、バルトハルトさんとゴードンさんに勝つ必要は無かったけど。

 

二人がダウンした所で解散となり、今日はもう休む事に。

そして翌日。

ちょっとした事件が起こった。

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