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第177話 女王様の恋の御相手を

王都グーテンベルクへ向かう中間地点にある街に着いた。

今日はここで一泊する事に。


「姫様、どうでしたか」


「魔王子様はゲット出来ました?」


「ダメ。フラれちゃった…」


「ええ~?女好きじゃなかったんですか?」


「ん~…やはり周りに婚約者がいる状況ではダメなんじゃ?」


馬車から降りた途端、侍女と思しき二人の女性がクローディアさんに近づいて来た。

親し気だし姫様と呼んでるあたり、昔から傍にいる侍女なのだろう。


「そうかもしれないけど…やり方を変えないとダメね。先ずは私が恋を知らないのが問題なのよ」


「なるほど、確かに。姫様は男性の口説き方はおろか恋人が居た事もありませんしね」


「ですね。男心がまるでわかってないのにいきなり求婚。確かに性急過ぎたかもしれません」


「それなのに自信家。100%の成功を信じて疑ってなかったし」


「本当。あの自信はどこから来てたのかしら。今考えると結構痛い人よね」


「言いたい放題ね、貴女達…」


そっちの御二人の仰ってる事は間違ってないと思います女王様。

男心を勉強して次の機会にトライしてください。

次の機会は無いと思いますが。


「兎に角、作戦会議が必要よ。アニータ、エッダ行くわよ。それでは皆さん、また後ほど。夕食を皆さんとご一緒したいと思いますので、その時に」


「あ、はい。また後ほど」


さて…向こうが作戦会議をするなら、こちらもせねばなるまい。

ボク達に宛がわれた部屋で一番大きい部屋に、アイシス達とダーバ王子達も含めて全員集まってもらった。


「というわけで!女王様対策を話し合いたいと思います!」


「対策って言っても…断り続けるしかないんじゃない?」


「そうね…会わないわけにもいかないし。治癒魔法使いの派遣はするつもりなんでしょ?」


「うん。負傷者を回復すればこの国の復興も早まるだろうし」


治癒魔法使いの育成はこういう時の為でもある。

学校や育成施設が出来てもう四年。

治癒魔法使いはそれなりに増えた。

一時的にグンタークに派遣するくらいは問題無い筈だ。


「治癒魔法使いの派遣には見返りを要求するのか?」


「え?さぁ…どうかな。今、この国に何かを要求してもね。ボクは思いつかないけど」


「また、恩を感じてもらえばそれでいいんじゃないの?」


「いや、今回はそれじゃダメだろう。治癒魔法使いの派遣はグンタークの女王が自らの口で、エルムバーンに打診したんだ。国から国へ、な。これで何も要求しないとなるとそれはそれで問題になる。村を救ったのとは状況が違うぞ」


確かに…フランコ君の言う通りかもしれないな。

エルムバーンでは治癒魔法使いが充実して来ているけど、それはエルムバーンだけの話。

治癒魔法使いの派遣を願う国は沢山あるだろう。

無償でやってもらえるとなれば尚更。


「でも、その辺りはお父さんに任せるよ。それともやっぱり勇者の遺物に関する情報を探してもらう?」


「いや…前にも言ったが、エルムバーンの利益になる事を要求すべきだ。それにしても少々意外だな」


「意外?何が?」


「女王陛下との婚約を断った事が、だ。あれほどの美人からの求婚をジュン殿が断るとは思わなかった」


「あ、私もです。確かに女王陛下は政治的観点からジュン殿との婚姻を望んだのでしょう。そしてグンタークにメリットはあってエルムバーンにメリットが無い。それも事実でしょうけど…デメリットも無いのでは?」


「デメリット…ですか?」


「はい。私と結婚すればレンド魔王国との仲は悪化する可能性が高い。というようなデメリットがジュン殿には…エルムバーンには無いでしょう?」


「そう、ですね…強いて言うなら縁談の申し込みが増えるかなってくらいですか」


だからって婚約に前向きになったりしないが。

ただでさえ婚約者が既に三人いるんだし。


「兎に角、クローディアさんには諦めてもらうか、この国を出るまで逃げ切るしかないんですが…何か意見は無いですか?」


「へぇ~本当に婚約しないんですね」


「女好きじゃなかった…」


「本当ねぇ。ダバちゃんが持って来た情報だっけ?情報収集はやっぱりマルちゃんじゃないとダメね」


「おかしいなぁ。冒険者ギルドで聞いた情報なんだけどな。私も胸触られたーとか言ってたし」


なるほど。

ダーバ王子にボクの事を話したのはウーシュさんか。

あんにゃろう…


「兎に角です!クローディアさんに諦めてもらうにはボク以外の条件に合う人を探して紹介が一番だと思うんですが…マルレーネさん、心当たりは?」


「え?え~と…思いつきませんねえ…というか考えれば考える程、ジュン様以上の相手っていないように思います」


「ええ?嘘でしょう?」


「いえいえ、本当に。グンターク王国周辺国家には大国と呼べる国はありませんし…適当な相手も私が知る限りいません。となると、ヴェルリア王国かエルミネア教国かエルムバーン魔王国ですが…ヴェルリアは女王様が仰ってたように王位継承権問題が片付く迄は無理でしょうし、エルミネア教国は論外です。グンターク王国にも魔族は多少住んでいますし、レンド魔王国との仲も悪化するでしょう。何よりエルムバーン魔王国から援助を受けておいてエルミネア教国と縁談を結ぶというのは…国民からの反発も大きいでしょう」


聖エルミネア教国は魔族を敵対視する国の筆頭。

魔王国とは仲が良くないしエルムバーンとも当然、仲は良くない。

戦争こそしてはいないが…


「あとは…ヴェルリア王国より南の小国群同盟。その盟主国、ガリア魔王国くらいですか。でもあそこは、恐らくは弱ったグンタークを狙うかもしれない国の一つだと思いますよ?」


「そうなんですか?」


「はい。内乱を起こしたグンタークの第一王子を蔭から支援したのがガリア魔王国という噂もあるくらいですし」


黒い噂の絶えない国だな…ガリア魔王国は。

あの爺の協力者の可能性が最も高い国でもあるし、同盟各国に軍備の増強を迫ってるんだったか。

そしてヴェルリアに攻め込む噂もある、と。


……もしかして、これら全部繋がってるんじゃないだろうな。

あの爺に協力してるのはヴェルリア王国との戦争の為?あのキメラを利用するとか?

グンタークで内乱を起こした理由は…わからないな。

でもヴェルリア王国へ侵攻する為の何かがある気がする。

位置的にグンターク王国は小国同盟のヴェルリア王国侵攻の邪魔にはならないが…


「ジュン様?如何されました?」


「何か、考え込んでるようだが。何か妙案でも?」


「あ、ああ。いや、何にも」


この考えは…城に戻ってから相談しよう。

今は目の前の問題だ。


「マルレーネさん、ボク以上の相手じゃなくてもクローディアさんが納得できそうな相手も思いつきませんか?」


「ん~…そうですねえ…ジュン様に親戚はいないんですか?従弟とか」


「従弟…エルムバーン国内にはいませんね。ダルムダットになら…」


「ダルムダット魔王国…アイ様の国ですよね。アイ様の弟君とかですか?」


「ジークはダメだよ。まだ八歳だから」


「だよな。それに海を越えなきゃいけない位置の国なんて後ろ盾としては微妙か…」


グンタークからはちょっと遠すぎるな。

他に親戚なんていないし…


「あとは…そうですね~…あ!案外フランコさんなんていいかもしれませんね」


「え?は?私が?」


まさか自分に白羽の矢が立つとは思ってなかったのか、目を丸くするフランコ君。

ボクもフランコ君は考えてなかった。


「はい。フランコさんはヴェルリア王国の大臣の御子息。王族との婚姻よりは結べる縁は薄いと言わざるを得ませんが、それでも縁は結べます。王位継承権問題にも絡みませんし、確かフランコさんは次男ですよね?ルーベルト家の家督相続問題にも触れない。双方にとって悪い話ではないと思います」


「なるほど、確かに…いい案かもしれませんね」


「いやいやいや!私の意思はどうなる!」


「フランコ君から見ても美人なんだよね?クローディアさんは」


「う!た、確かにそう言ったが…」


「グンタークの女王との縁談。ヴェルリア王国にとってもルーベルト家にとってもいい話ですよね?フランコさんも貴族なら政略結婚をする事は覚悟してるでしょうし」


「い、いや私は…」


「いい話じゃない!フランコ、チャンスだよ!」


「ア、アイシス…君まで…」


「フランコ。頑張って。二つの意味で」


「セリア…」


うん…アイシスまで応援しちゃうと、ちょっとフランコ君が可哀そう。

でも、本当にイヤなら破談にするのに協力するし、今は兎に角矛先をフランコ君に移させてもらおう。

そうしよう。

ごめんね!フランコ君!

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