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第174話 村を救おう 10

さて、どうするか…。

どうもアイシスは本気で戦うつもりらしい。

とりあえず距離をとって魔法戦に持ち込むか?


「(アイシス、目的だけは忘れないでよ?)」


「(フンだ!僕は手加減が下手だから怪我しても恨まないでよね!)」


それは怪我させる気満々って事ですか、そうですか。

しかし、あの距離でよく聞こえたね。


兎に角、一旦距離を取る。

それに立ち位置を変えなきゃ。

背後に兵士達がいると流れ弾が当たりかねない。


「さて…先ずは見た目が派手な魔法で…」


何度か他人が使うのは見たけど、自分で使うのは初めてかもしれないな。

雷系最上位魔法「サンダーストーム」だ。


「「「うわぁああ!!」」」


かなり広範囲に渡り雷を落とす魔法「サンダーストーム」

威力もさることながらその見た目と爆音でかなりのインパクトを与える。

勿論、使用者によって威力も範囲も変わってくるが、ボクは魔法に関しては魔王の紋章もあってかなりのモノだと自負してる。


「お、おい…何だよ、今の…」


「魔法…だと思うけど…あんな魔法使う奴を捕まえろって?」


「無理だろ…死刑宣告と同義じゃねぇか」


兵士達を恐怖させるのは上手く行ったようだ。

これでボクを捕まえようと無理に迫って来る事は無いだろう。


「お、おい…」


「嘘だろ…あの魔法をくらって平気なのかよ…」


アイシスは無傷で同じ場所に立っている。

【メーティス】が防御魔法を張っているがボクも当ててはいない。

威力を抑えた手加減は出来ないが、魔法のコントロールには自信がある。

当たらないように魔法を撃つくらいわけない。


「む…」


「…」


今度はアイシスが、いや、【メーティス】が魔法を放つらしい。

アレは火系中位魔法「ファイアアロー」の乱れ撃ちか。


「な、何だよ、あの数…」


「50…いや100は超えてるんじゃ…」


流石、神に祝福された聖剣【メーティス】

その魔法使用能力はかなりのモノ。

「ファイアアロー」一本一本の威力も高い。

コントロールも正確…


「うっ!」


「!」


こちらが魔法の回避に専念してる隙にアイシスが距離を詰めて来ていた。

魔法の使用と武器による戦闘を分担出来るというのは大きいな…これが【メーティス】の最大の利点だろう。


「くっ!」


「!!」


不意を突かれた形になったが何とか防げた。

ていうか今、急所を狙ってなかったか?


「おお…何て激しい剣戟…」


「どっちも凄い動き…離れた場所からでも目で追うのがやっとだぜ」


兵士達が呑気な事言ってるがこっちはそれどころじゃない。

アイシスの本気な攻撃を必死で躱しているのだ。

そう、アイシスは本気なのだ。

勇者の紋章を使用し、全力で攻撃してきている。

武器の差は無い。

剣の腕も互角。

身体能力も紋章の力で互角。こっちは四種の紋章をフル活用してようやく互角なのだが…。

だが、向こうは剣を使っての近接戦闘中にも正確な魔法使用が出来る。

魔法と武器の使用の分担。これがここまで有効だとは…戦って初めてわかる。

このままじゃいずれ押し切られるな。

まだ時間は十分に稼げていないし…


「仕方ないなぁ…ボクの新魔法を見せてあげよう!」


「!!」


周囲に七つの魔法の玉が浮かぶ。

七つの玉はそれぞれ色が違い赤青黄緑橙白黒でそれぞれが違う属性の魔法の玉だ。

赤が火。青が水。黄が雷。緑が風。橙が土。白が光。黒が闇だ。

この玉には下位の精霊を宿らせてある。

そして簡単な命令を与えておけば自動で攻撃・防御に魔法を使用する。

任意で操作も可能。

日本でゲームや映画なんかに出てたセントリーガンを魔法で再現したのだ。

単に精霊を七体呼び出すとの違いは精霊がボクの魔力を使用して魔法を使うという事。

使用する魔法は下位の物だけだが、七種の魔法を同時使用可能。ボク自身も使えば八種。

何より自動で使用されるというのが大きい。

フェニックススピリッツとブルードラゴンスピリッツの簡易版だが有用性は高い。

単に精霊を呼び出してもいいっちゃいいんだが、精霊はこちらの考えを読んで魔法を使ってくれないが、この魔法は行動を限定してあるからどんな魔法を使うか、予測は容易い。

今回与えた命令はボクに飛んで来る魔法を魔法で防御しろ、だ。


「さて、再開しようか」


「!」


アイシスから距離を取る。

【メーティス】が魔法で攻撃してくるが、魔法の玉が全て迎撃した。

下位の魔法で【メーティス】の中位魔法を迎撃出来るのは複数の魔法で迎撃してるからだ。


「問題無さそうだな。この魔法は名付けて…スピリットオーブってところか」


これで、状況を五分に持って行ける。

そして更に【フレイヤ】の蛇腹剣モード。

【アトロポス】の伸縮自在の魔力剣を使用。

中距離戦を開始する。


「おお!何だあの武器!」


「剣がバラバラになって鞭みてえに!」


「もう片方の剣も何か伸びてるぞ!」


兵士達はもはや完全なギャラリーだな…。

いやまぁ、目的は足止めと時間稼ぎだから、それでいいんだけども。


「!」


「おっと!」


中距離戦となるとアイシス自身には攻撃手段が少ない。

今のようにオーラフラッシュを飛ばすくらいだ。

だがボクには【フレイヤ】と【アトロポス】がある。

中距離戦はボクの方が有利だ。


フフッ…勇者であるアイシス相手に有利な戦いが出来る。

ちょっと楽しくなってきた。


「そらそら!どうだぁあ!」


「!!!」


ハハハ!

ってイカンイカン。

ボクまで目的を忘れてどうする。

戦闘で昂るとか、ボクも大分染まって来たな…気を付けよう。

まだ時間稼ぎは必要だし、本当にアイシスを倒すわけにもいかないしね。

って、アレは…?

剣を前方に真っ直ぐに突きだし、剣先から自分の全身まで勇者の紋章の力がアイシスを包んでいく。

そしてそのままの体勢で高速で突進して来た。

これは魔法でもオーラフラッシュでも止められそうにない。

避けるしかないな。


「って、何!?」


「!」


空中に逃げたら方向転換して追って来た。

あれは【メーティス】の飛行魔法も併用して移動してるのか。

咄嗟に剣で防いだけど、防ぎきれそうにないので転移で脱出した。


「お、おい今の…」


「ああ、消えたと思ったら一瞬であんな所に…」


「もしかして転移魔法か?そんなの使えるんじゃ捕まえるなんて絶対に不可能じゃねえか」


ボクを捕まえるという兵士の意思は完全に折れたようだ。

まぁ元々が乗り気じゃない任務だったのだろうし。

諦めるのも無理ない。

それよりも、だ。


「今のは危なかった。転移で逃げなきゃ死んでたかもね」


「…」


アイシスも戦闘で昂ってるのか、それとも怒り心頭で完全に我を忘れているのか。

ボクもやりすぎそうになったし、人の事は言えないが…


「お、おいアレ…」


「あれはグンターク王家の紋章じゃねえか。それに近衛騎士団…」


兵士達がある方向を見てざわつき始める。

そしてこっちに近づいてくる一台の馬車。

あれは…


「ジュン殿ー!お待たせしました!」


やはり、ダーバ王子達だ。

予定より一時間以上早く来てくれたな。


「ダーバ王子、予定より早いですね、助かります」


「はい、報せを貰って直ぐに速度を上げるように頼みましたからね」


どうやら、大物とやらをちゃんと連れて来てくれたらしい。

なら、アイシスとの戦闘ももう終わりだな。

やれやれ。


ボクが剣を納めたのを見て、アイシスも戦闘態勢を解いた。

それから仮面を外して、こちらに近づいてくる。


「アイシス、やりすぎだよ。本当に死ぬかと思った」


「うん…ごめんね。ちょっと本気になりすぎちゃったよ」


「いや…ボクもごめんね。あと兵士に言った内容は本心じゃないからね?」


「その件はあとでまたゆっくりと話合おうね」


「えー…」


まだダメっスか。

どんだけ気にしてるの…。

親し気に話すボクとアイシスを見て兵士達が困惑してるが、もはや演技をする必要も無いので無視する。


「ところでダーバ王子、連れて来た大物って結局誰なんです?」


「それはですねぇ…あ、あちらの方ですよ」


グンターク王家の紋章を掲げた馬車から一人の女の子が降りて来た。

十五歳から十七歳くらいの女の子だ。

緑の髪に青い瞳。

もしかしたら少しエルフの血が入ってるのか?

侯爵軍の兵士達がざわついている。

確かに大物らしい。


「あの方は?王族のようですが…」


「ええ。この国の最後の王族。名をクローディア・ウル・グンターク。この国の新女王様ですよ」


「それはそれは…また何とも意外な…」


確かに大物だ。

侯爵を処断するのにこれ以上ない人物だろう。

だけど、何故だろう。

新たな問題もやって来た気がする。

嫌な予感…

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