第171話 村を救おう 7
「着いたよ。ここがエルムバーンの城で、この部屋はボクの部屋だ」
「凄い…本当に一瞬で…」
「ふわぁ…」
「綺麗な部屋…」
「うん…侯爵様の部屋よりずっと凄い…」
騎士団長との交渉を終えて、侯爵の下に居た四人の子供達を保護し、エルムバーンに連れ帰って来た。
見ようによっては誘拐に近いかもしれないが…同意の上なので侯爵にバレなければ大丈夫だろう。
「さて、と。先ずは…ノエラ、ティナ達を呼んで来て。そうだな…レヴィさんも一緒に」
「畏まりました」
この時間なら学校は終わって帰って来てるだろう。ティナ達なら歳も近いし、仲良くなれるだろう。
「ジュン様、連れて参りました」
「ジュン様、来たのー」
ティナ達は直ぐに来た。レヴィさんもちゃんと居る。
「皆、この子達は訳あってボクが引き取った。ここで働いて貰うことになると思う。君達の後輩になるかな」
「「「「後輩!」」」」
「わ、私も先輩になるんですか?」
「「「「よ、よろしくお願いします」」」」
「先ずは、そうだな…ティナ、ニィナ。四人を風呂に案内してあげて。ルーとクー、レヴィさんは部屋の用意を。ああ、服も用意してあげて。仕事は明日からでいいから」
「「「はい」」」
四人の事はティナ達に任せて。
ボクとノエラは父アスラッドに四人の事を報告に。
「そうか。分かった、好きにしていいぞ」
と、いつものように軽い許可を貰えた。
有り難いけど、もう少し何かありそうなもんだと思うが…
「それだけジュン様が信頼されてるという証だと思います」
「だといいけどね。じゃ、皆のとこへ戻ろうか」
「はい」
結構時間が掛かったし、もう夜だ。
皆、心配してなきゃいいけど。
「ただい…ま?」
「え?」
「あ」
転移で戻った先では…アイシスとセリアさんか着替え中だった。
下着姿で固まるアイシス。
セリアさんは…ノーブラだ。
これはマズいかもしれない。
ここで騒ぎを起こすわけにはいかないのだが…
「んんっ…あ~失礼しました。ごゆっくり~」
「ちょっとお待ちなさい、ジュンさんや。そんな簡単に逃げれると本気で思っておるのかの?」
「あ、やっぱり?ダメかのう」
見逃してもらえなかった。
どうしようかな…。
ていうか、先ず服を着てください。
「ジュン、君って奴は…」
「アイシス、先に服」
「あ」
セリアさんは結構冷静だな…よかった。
着替えが終わって仁王立ちのアイシス。
その前でボクは正座させられている。
「さて、ジュン。何か言い残す事は?」
「弁明の前に遺言聞くの!?待って、冷静に話し合おうじゃないか」
「弁明~?弁明の必要なんてある?ジュンは僕達の着替えを覗いた。それが全てです!」
「いや、覗いたわけじゃないじゃない?事故でしょ。情状酌量の余地が!」
「無いね!有罪!」
「そんな、御代官様!御慈悲を!」
「ダメ!」
「何のプレイなのですか?ジュン様」
プレイってわけじゃないんだけど。
強いて言うなら…
「悪代官に赦しを請う平民の図?」
「誰が悪代官!?ジュン、反省してないでしょ!」
「いや、だって…弁明も聞いて貰えないんでしょ?」
「だって有罪確定だもん!セリア!セリアもそう思うでしょ!」
「私は別に。何も」
「え?…嘘だよね?だってセリアはおっぱいまで見られたのに?」
「うん。事故だし。そもそも、この部屋に帰って来るって聞いてたし」
「流石セリアたん。冷静な判断力」
「…たん?」
「気にしないで」
セリアさんはどうも容姿が幼いし、小動物みたいなイメージがあるのでつい子供扱いしてしまう。
本人に言えば怒るかもしれないので、言わないが。
「アイシスは照れ隠しに怒ってるだけ」
「ち、違うもん!」
「じゃあ、どうするの?」
「ど、どうするって…」
「殺すの?着替えを見られたくらいで?」
「殺さないよ!」
よかった。殺されはしないらしい。
いや、本気で殺されるとは思って無かったけども。
「じゃあ、もう許すべき。謝ってもらったんだから」
「う…うぅ…」
「あの~アイシスさん?ごめんね?」
「…わかったよ、もう…」
何とか鎮まったかな?
アイシスの年頃だと、そりゃあまだ恥ずかしいよね。
「ところで、結果を話したいんだけど、他の皆は?」
「皆、部屋にいると思うよ」
「アイとユウは?この部屋だよね」
「アイとユウの二人はクリステアさんとルチーナさんの部屋にいるよ。何か相談事だって」
「相談事?」
「内容は知らない。でも緊急な内容でも凄く困ってるわけでもなさそうだったよ」
「ふむ…」
ボクじゃなくてクリステアとルチーナに相談か。
女の子同士じゃないと相談しにくい内容なのかな。
まぁ、本当に困ったなら相談してくれるだろう。
「兎に角、一度集まってもらおう。ノエラ、お願い」
「畏まりました」
この時間なら皆まだ起きてるだろう。
そう言えば夕食をまだ食べてないな。
何かつまめる物…林檎でいいか。
「ん?」
「…」
「アイシス?欲しいの?」
「うん…」
「いいよ。はい」
「ありがとう」
「ジュン様、私も欲しい」
「はいはい」
これでアイシスも機嫌を直して…くれてないな。
まだ不機嫌のままだ。
どうしたものか。
「(どうしたらアイシスの機嫌直ると思うかね、セリアさんや)」
「(ん~…褒めてみる?)」
「(褒めるって何を?)」
「(アイシスの下着姿)」
「(それは火に油じゃない?)」
「(多分、大丈夫)」
そうだろうか…。
まぁボクよりアイシスと付き合いの長いセリアさんが言うんだ。
従ってみよう。
「あ~アイシス?」
「…何?」
「アイシスの下着姿…とってもセクシーでしたよ」
「なっ…ちょ…バカ!」
あ、やっぱり火に油?
「(ちょっとセリアたん?ダメじゃん)」
「(大丈夫。照れてるだけ。皆が来る頃には元通り)」
本当かなぁ?
だといいけど。
「ところでジュン様」
「何ですかな、セリアさんや」
「私の裸はどうだった?」
「ぶっ」
「セ、セリア?何聞いてるの?」
「アイシスだけ褒められるのは不公平」
「ええ~…た、大変にお美しい御姿で…」
「ん、ならいい」
「う~…ジュンのバカ!」
ああ…再びアイシスの機嫌が…。
もう今は何もしないほうがいいかな、これ。
「お待たせー」
「お帰り、お兄ちゃん」
そうこうする内に皆が集まって来た。
もうアイシスの機嫌は明日には直ってる事を期待して、今は真面目な話をしよう。
「というわけで、騎士団長は時間稼ぎをする事を約束してくれた。これで何とかなるだろう」
「ふ~ん。映像で見た通り、騎士団長はまともな人なんだね」
「いい人だと思うよ。侯爵の傍に居た子供達の事も案じていたし。あ、それとその子供達。四人は引き取って来たよ。それも騎士団長は上手くごまかしてくれるってさ」
「引き取ってって…無許可でしょ?誘拐しちゃったの?お兄ちゃん」
「誘拐じゃないよ。同意の上だし。無許可だけどね」
「まぁ侯爵にバレなければ問題無いでしょう。ジュン殿の下に居た方が確実にあの子達の為になりますでしょうし」
「そうですね。それは間違いないでしょう。流石にあの豚侯爵の傍にいるよりは、ジュン殿の方が何倍もマシだろうな」
うん、普段なら恐縮するか疑問を持つとこだけど、今回は自信たっぷりに頷ける。
だからこそ、引き取ったんだし。
「それでジュン様。これからどうされますか?」
「ダーバ王子達が戻って来るまではこの宿で待機かな。侯爵が何かするようなら騎士団長がここに来る事になってる。治安が悪いから出歩くのはナシで。夜は交代で見張りを立てよう」
「心配しすぎじゃない?ウチらがこの街のチンピラにどうにかされるわけないじゃん」
「そうだろうけど、騒ぎになれば侯爵の耳に入るかもしれないし、出歩けば兵士に見つかってここに居るのがバレちゃうだろ?そうなったら厄介だ」
「あ…そっか。でも…それじゃあ退屈だね…」
「そうだな…まぁ無理して全員此処にいる必要も無い。何かあれば呼びに戻るから、皆はエルムバーンに戻っててもいいよ?ここには…そうだなセバストとボクだけでいいし」
「ううん。残るよ」
「そうだよ。お兄ちゃんとセバストさんだけじゃ、お兄ちゃんが休めないでしょ」
「そうです。ジュン様はまだ疲労が残っているはずです。見張りも私達がやりますから。しばらく御休みください」
「大丈夫だけど…わかった。休ませてもらうよ。クリステアとルチーナは二人部屋だったよね。見張りを立てるからベッド空くし、四人部屋の方に移って。念の為に」
「「はい」」
ハティが居れば多分大丈夫なんだけどね。
番犬ならぬ番狼。
侵入者や悪意持って宿に近づく者が居れば眠っていても直ぐに気が付いて起こしてくれる。
それから四日間。
夜間に強盗が来た以外は特に問題無く。
兵士が居なくなった子供達を探しに宿に来たりもしたが、転移で城に戻ってやり過ごせた。
そして四日目の朝。
問題が起きた。




