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第144話 レヴィと指名手配犯

「へえ~武闘会でジュン様と戦ったんですか?」


「うん。引き分けだったけどね」


「ジュン様、強い」


「ま、人格はともかく、強いのは認める」


「こら、フランコ。ジュン殿は人格も素晴らしい人物ですぞ、レヴィさん」


狩を終えて、帰る間、アイシスさん達からジュン様の話を聞いた。

ジュン様って剣と魔法のも超一流なのかぁ。

凄いなあ。


「フランコさんはジュン様が嫌い何ですか?」


「べ、別に嫌ってるわけじゃない。ジュン殿の人格を冷静に分析しただけだ」


「フランコはヤキモチを妬いてるだけ」


「違う!ジュン殿の女好きは見てればわかるだろう!」


「え」


女好き?ジュン様が?

だとしら本当にハーレムを作るのかな…。

もしかして本当にチャンスが?


「ジュン様は単にモテモテなだけ。ジュン様から手を出された女はいない」


「それは!彼女達がそう言ってるだけで…口止めされてるだけかもしれないじゃないか」


「やめろ、フランコ。ジュン殿の評価が下がってもお前の評価が上がるわけじゃない。逆もまた然りだ。ジュン殿に勝ちたいなら、自身を高めてみせろ」


「う…はい…」


フランコさんはジュン様に敵対心…ううん、ライバル心を燃やしてるのかな。

そこに嫉妬も混じってる?


「全く、フランコは…どうしてそんなにジュンに噛みつくの?」


「え」『え』


「ん?何?」


「あ、いえ…」


『人に関わりの薄い私でもわかるのに、この娘は何を言ってるんです?』


うん、恋愛経験なんて皆無に等しい私にも分かる。

アイシスさんて朴念仁なんだ…。


「それで、レヴィは?」


「はい?何がです?」


「ジュンと以前から知り合いだったんでしょ?どこで会ったの?」


「あ、いえ…知り合いというほどじゃ。私が五歳の時にジュン様の魔法で病気を治してもらったんです」


「あ~、ジュンがエルムバーン各地の街に治癒魔法使いとして周ってた時の話だね」


「はい。その時の私は凄く体も痩せてて。病気が治っても痩せた体まで治せない。だから甘いお菓子までくれて。他の子供も欲しがったから全員で配って…最後には炊き出しまでしてくれて。私も、お父さんもお母さんもその場にいた皆、ジュン様を神様みたいに思ってると思います」


「なるほどねえ~。確かにご両親はそんな感じだったね」


「『ジュン様のお仲間なら喜んで』だったな」


「ここはエルムバーンでは無いというのに。異国でもジュン様を崇拝するものが居る。大したものだ」


家に着くまでジュン様の話は続き。

夕食時にもジュン様の話で盛り上がった。

お父さんとお母さんもジュン様の話が聞きたくてしょうがないって感じだったし。

ただ…


「どれだけ作ればいいの!?」


「すいません…うちのアイシスが…食材と食費を幾らかお支払いしますので」


「バルトハルトさんも飲み過ぎじゃない?お父さんはとっくに潰れちゃったのに、まだ飲んでるし」


「あれもいつものこと」


『どっちも普通じゃ…いえ、異常なのは間違いないですね』


うん、私の眼から見ても二人は異常だと思う。

アイシスさんとバルトハルトさんは孫と祖父の関係らしいけど、血筋って凄い。


「それじゃ、おやすみレヴィ」


「はい、おやすみなさい」


アイシスさん達は私の部屋の隣の客間で寝る事になった。

四人で寝るのは狭いからアイシスさんかセリアさんは私と一緒に寝ないかと提案したけど、二組に分けて見張りをするからいらないらしい。


「見張りなんて必要なのかな」


『用心に越したことはないとは思います。それに、この村でも見張りくらいいるでしょう?』


「まぁたまに魔獣が来るしね」


来ても一匹だけとか、弱いのが二、三匹とかだし、今まで大事になった事はない。

少なくとも私が知ってる限りでは、だけど。


「まあ明日にはジュン様も戻るんだし、大丈夫でしょ。じゃ、おやすみ、ヒーノ」


『ええ、おやすみなさい、レヴィ』


そして数時間後。

まだ暗くて、もう少しで日が昇り始める頃。


『レヴィ、起きてください。何か変です』


「へぁ?」


確かに、外が騒がしい。

それに鐘が鳴っている。

あれは…


「魔獣が来たんだ!この鐘は魔獣が来た時の警報だよ!」


跳び起きて着替えを始める。

お父さんとお母さんも起きたみたいだ。


「アイシスさん達はまだ寝てるの?」


『いえ、そうではなさそうです。部屋の中に気配がありません』


ノックをして開けてみると確かに誰もいない。

一体どこに行ったの?


「お父さん、お母さん。アイシスさん達は?」


「わからん」


「私達も今、起きたのよ」


「ああ、よかった。起きてましたか」


お父さん達と話をしてると、外からバルトハルトさんが戻って来た。

いつ外へ?


「村の外から妙な気配を感じましたのでな。アイシス達が今、村の周りの魔獣を始末しています。皆さんは念の為、村の避難所へ。私が護衛に付きますので」


「は、はい」


「あの、バルトハルトさん。どのくらいの魔獣が来てるんですか?」


「ふむ…ざっと三十といったとこでしたな」


「「三十!」」


「ご安心を。既に半数は始末しています。それにジュン殿が置いて行ったマッドゴーレムが村の周囲にいます。ゴーレムが突破される前にアイシスが片を付けるでしょう」


やっぱり凄く強いんだ、アイシスさん…。

それにジュン様も凄い。


「ま、とにかく避難所へ」


バルトハルトさんに従って避難所へ。

途中、遠目に戦ってるアイシスさん達が見えた。


『あの動き…やはり只者ではないですね。狩の時は本気ではなかったようですね』


狩の時も凄かったけど、今はもっと凄い。

セリアさんとフランコさんの魔法も的確なサポートに見える。

実戦経験が豊富なんだろうな…。


「私なんて…行っても足手纏いにしかならないね…」


魔法に関しては村で一番になって天狗になってたけど、今じゃ自信喪失。

いつか魔法でジュン様の役に立てるかもなんて思ってた自分が恥ずかしい。


「もう残りの魔獣は数匹しかいないんじゃない?避難する必要もなさそうな…」


「そうですな。しかし念の為、避難所へ。あそこにはジュン殿が結界を張ってあります。村人と我々以外は入れません。そこなら…」


「いやはや、それは困るのぅ。ようやく見つけたんじゃ。もう逃がさんぞ」


空から、誰か降りて来る。

もしかしてアレは…。


「ねぇ、ヒーノ。もしかして…」


『ええ。最悪です。あいつが私を捕まえてた男です』


やっぱり…。この人が例の指名手配犯…。

確かにジュン様に見せて貰った似顔絵に似てる。

髪の色や髪型は違うけど。


「何者だ!」


「それはわしも聞きたいのぅ。お主らは何者じゃ?こんな村にお主らのような手練れがいるなど。それにあのゴーレムに結界。妙に厳重な警備。全く…おかげでわし自らが出向かなくてはならくなったでわないか」


「あの魔獣は貴様が差し向けたのか」


「そうじゃ。ま、大体の事はその鳥から聞いたのじゃろう?」


『……』


まだ、殆ど何にも話してません。

とは言えないよね…。


「それで、お主らは何者じゃ?冒険者か?」


「貴様に教える必要はない。貴様はここで死ね」


「おやおや。怖い怖い。さっさっと帰るとしよう。可愛いわしの魔獣達も倒されてしまったようじゃしの」


「可愛い?あれが?ふん!悪趣味な!」


「おや?アレがどういうモノか知ってるような口ぶりじゃの?ふぅん…ますます早く用事を済ませて帰ったほうがよさそうじゃ」


「出来ると思うか!」


「出来るとも。ほれ」


「あ、消えた!」


『レヴィ!後ろです!』


「え?きゃあ!」


何時の間に背後に?

全く見えなかった!


『レヴィ、今のは転移魔法です!そんなものまで使えるなんて!』


「転移魔法?今のが?」


「その通りじゃ、お嬢ちゃん。よく知っとるのう。さて動く出ないぞ?老いたとはいえお嬢ちゃんの首をへし折るくらいは容易いでな」


「レヴィ!」「レヴィを離して!」


「おっと、お前さん達はこの娘の親御さんかの?娘が大事なら動かぬ事じゃ。そっちの爺さんもな」


「ぐっ…おのれ…」


「安心せい。わしが用があるのはこの娘ではない。こっちの鳥じゃ。どれ、すまんが胸の鳥を捕まえるためじゃ、我慢せいよ」


「きゃー!エッチ!スケベ!変態!痴漢!」


「やかましいお嬢ちゃんじゃ。大人しゅうせんか」


どうしよう、このままじゃヒーノが…

イチかバチかやるしかない!


『レヴィ、このままでは貴女が危険です。私は…』


「(ヒーノ、目をつぶって)」


『え?』


「フラッシュ!」


「ぬ!」


魔法で目つぶし成功!

この隙にヒーノを!


「ヒーノ!逃げて!」


『あっ!レヴィ!』


思いっきりぶん投げちゃったけど、ヒーノは飛べるし大丈夫だよね。

って、私も逃げないと!


「おっと、お主は逃がさんよ。やってくれたのうお嬢ちゃん」


「きゃ!離してー!」


もう目つぶしから回復したの?

お爺ちゃんにはしては早すぎない?

てゆうかバルトハルトさんは?


「あああ!目が!目がぁぁぁ!」


ちょっとおおお!

バルトハルトさん!?なんで貴方の方がダメージ受けてるんですか!

そりゃ、事前に教えなかったけど!


「ホホ、頼りにならん護衛じゃの。さて…ん?」


「お祖父ちゃん!レヴィ!」


「もう来よったか。あの嬢ちゃんは厄介じゃのう。仕方ない、お嬢ちゃんには一緒に来てもらうぞ」


「え?ちょっと!」


一瞬にして視界が切り替わったと思ったら、ここは…森の中?


「ここは…村近くの森?どうしてこんな所に?」


「わしは転移出来ると言っても一度にあまり遠くに転移する事はできんのじゃ。ましてや連れがいるとな。じゃが…」


お爺さんが地面の枝や落葉をのけると、魔法陣が出て来た。

これは?


「これは転移魔法陣じゃ。こうやって魔法陣を使えば遠くまで転移できる。魔法陣同士で繋がった場所にしかいけんがな。さて、お嬢ちゃん。わかっておると思うがお主は人質じゃ。多少は魔法が使えるようじゃが逃げようなどとは思わん事じゃ。大人しゅうしとれば手荒な真似はせんからの。じゃが手間を掛けさせるようなら、足の一本くらい吹き飛ばすからの」


「う…わかったよ…」


どうしよう、捕まっちゃった…。

なんとかしなきゃ…。

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