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第134話 愛さえあれば

「ありがとうございます、ジュン殿。話をする機会を頂けて」


「いえ。それで、話とは?」


今、ボク達はノエラ達が待機してる部屋で話をしている。

ロミリオ君達に護衛がいないのはいいのだろうか。

着いてこようとしたのを、命令してまで退がらせていた。


「ええ。実は今回の話を無かった事にしたいので、協力をお願いしたいのです」


「「え?」」


それは願ってもない事だけど…


「それは…いいんですか?御父上との意向とはそぐわないのでは?」


「はい…失礼だとは思いますが、私はアイ殿を愛せそうにありませんし」


「あたしも。ジュン殿とジーク殿はあたし達と違い過ぎるんだもん」


ああ、うん。それに関しては全く以って同意です。

最初っから気になってたけど、会話の合間にケロケロと鳴いてるし。


「それに、一番の問題は父上の目的がブーダンビルとダルムダットが血縁関係になった場合、ダルムダットの力を利用してバルサラームと戦争を始める事です」


「それは確かに避けたい事だと思います。でも、それならロミリオ殿から進言して止める事は出来ないんですか?」


「はい…父上はバルサラームの魔王バアル様を嫌って…いえ、憎んでいまして。理由は知らないのですが…とにかく、この件に関しては父上はまるで取り合ってくれないんです」


「バルサラームのバアル様はどうなんです?向こうもケロン様を憎んでいるのですか?」


「いえ、バアル様はそれほどでも…嫌ってはいるようなのですが。バアル様は父上が矛先を治めるなら、歩み寄ってもいいと仰ってくださいました」


「うん?バアル様と親しいのですか?」


「あ、いえ…私が直接聞いたわけではないのです。実はその~…」


「お兄ちゃんはジュリエッタさんと恋仲なんだよ」


「あ、こらっ」


「ジュリエッタさん?」


「あ~その~ジュリエッタは…んんっ。ジュリエッタ・バルサラーム。バアル様の長女です。私は彼女と戦争を回避するために情報の交換を行ってます。勿論、父上には秘密です」


敵国と…いやまだ戦争にはなってないか。

戦争になるかもしれない国の姫…魔王女と恋仲か。

しかもロミリオとジュリエッタって…ロミオとジュリエットみたいだな。

ロミオとジュリエットは互いの家が対立してるだけだったけど、こっちは国家な分スケールは大きいかもしれない。

でも、ボク達から見れば蛙の恋なので今一つ感動出来ない。

ビジュアルって大事だよね…。


「えっと…ジュリエッタさんも蛙人族(フロッグマン)なの?」


「いえ。バルサラームの魔王家は蜥蜴人族(リザードマン)です」


「「「え?」」」


「ん?どうかしましたか?」


「あ、いや…」


蛙と蜥蜴?

捕食される側と捕食する側の関係にしか思えないんだけど。


「あの…ロミリオ…殿?ウチと貴方が違うのと同じくらい、蛙人族(フロッグマン)蜥蜴人族(リザードマン)は違うと思うのですが…」


「そうでしょうか?ですが私はジュリエッタを愛しています。その愛の前には種族の違い等ささいな問題です」


「はぁ…さいですか…」


いや、わかるよアイ。

その、なんとなくモヤモヤする気持ち。

激しくツッコミたいよね。


「えっと…それで協力とは?」


「はい。戦争をする理由が無くなれば父上も無理にアイ殿との婚姻を無理に進めようとはしないでしょう。戦争をする理由を無くす事に協力して欲しいのです」


「え?いや、しかし…御父上はバアル様を憎んでいるから戦争をするんですよね?」


「いいえ、それは違います。何も父上は自分の感情のみを理由に戦争をしかけようとしてるわけではないのです。もう一つ理由があります」


「その理由とは?」


「実は我が国の鉱物資源…とりわけ鉄が枯渇し始めたのです。そこでブーダンビルとバルサラームの間にある島々の豊富な鉱物資源がどうしても欲しい。とゆうわけです」


「つまり…鉱物資源がどうにかできれば、戦争は回避出来るという事ですか?」


「はい。せめて鉄がどうにかできれば…。父上も無理に戦争はしないはずです」


つまりブーダンビルの領土内で新たに有望な鉱脈を見つけるか、安く大量に鉱物資源を融通できる貿易ルートを確立させるか、という事だろうか。


「目処は立っているのですか?」


「それが…現在の所、領土問題となってる島以上の場所が無く…」


「貿易ではどうですか?」


「ダルムダットから輸入すれば?ウチとの婚姻じゃなく安く提供して欲しいに切り替えるとか」


「それも手ですが…貿易だけで不足分を補うのは難しいかと。安くとはいえ対価が必要になりますし。何より海を渡っての貿易は危険が伴いますから」


海の魔獣って大きいのが多いしね。

下手をすると船ごと沈められかねない。

ダルムダットの海軍は精強だが、それでも被害がゼロではないのだ。


「そこで、です。皆さんはブーダンビルの東にある島々はご存知でしょうか?」


「いえ…誰か何か知ってる?」


皆の顔を見渡したが誰も知らないようだ。

ユウが賢者の紋章を使えば何らかの事はわかるだろうけど。


「その島々の殆どが魔獣が支配する島なのです。一応はブーダンビルの国土となっていますが、魔獣のせいで録に調査も出来ていないのです」


「つまりボク達にその島々を調査して欲しいと?」


「はい。そして鉱物資源が採れるなら、島から魔獣を排除して戴きたいのです」


ボク達だけで一つの島から魔獣を排除する?

そんな事が可能だろうか?


「全ての魔獣を排除出来なくても構いません。我が国の兵士で倒せない強さの魔獣の排除だけでも」


「それって具体的に言うと?」


「そうですね…討伐難度C以上の魔獣は排除して戴きたいです」


「え?つまり…ブーダンビルの兵士では討伐難度Dまでしか排除出来ないと?」


「お恥ずかしながら…騎士団ならもう少し強い魔獣も倒せるでしょうが…採掘施設に常駐するのはただの兵士です。騎士団を常駐しなければならない場所では父上の考えを変えるのは難しいでしょう」


それは厳しいな、とは思ったけどエルムバーンの一般兵の強さも恐らくは似たようなものだろうと思う。

騎士団の強さはエルムバーンの方が上だと思うが。


「やはり難しいでしょうか?」


「そうですね…とにかく島を調査するしか無いでしょう。鉱物資源が無ければ魔獣を排除する必要も無い訳ですし。島にはケロン様の許可が無くても入れるのですか?」


「はい。それぐらいなら私の裁量でどうとでも出来ます。魔獣の素材目当てに冒険者を派遣する事もありますし」


ということはブーダンビルの冒険者ギルドに行けば、魔獣の情報も少しはあるだろう。島に入ると決まったら先ずは冒険者ギルドに行くべきだな。


「お話は分かりました。島の調査はお引き受けします」


「おお!ありがたい!それではこの通信用魔法道具を渡しておきます。私が持ってる物との専用ですが」


「よかったね~お兄ちゃん。あたしとしても助かるし、お願いしますね~」


「ミザリアさんにも恋仲になってる相手がいるんですか?」


「よくぞ聞いてくれました!」


両手を握りしめ立ち上がるミザリアさん。

ロミリオ君は片手顔を覆ってる。

うん、その仕草からその表情は読み取れました。


「あたしの恋人はお兄ちゃんです!」


「ほほ~そいつは初耳だなぁ。一体何処のお兄ちゃんだ?」


「んもぅ!お兄ちゃんたら、照れ屋さん!」


「はぁ…すみません、皆さん。妹の戯れ言は無視して下さい」


「お兄ちゃん、非道い!あたしの純潔を奪っておいて!」


「「「え」」」


「人聞きの悪い事を言うな!信じないで下さいね、こいつの虚言ですから」


「虚言じゃないも~ん。あたしのファーストキスはお兄ちゃんに奪われたも~ん」


「アレはどっちかと言うと私が奪われた方だろう…しかもジュリエッタの目の前で…誤解を解くのにどれだけ苦労したと思ってるんだ」


どうしてだろう。

彼の苦労が他人事に思えない。

すっごい理解出来る。


「ふ~んだ!と・に・か・く!あたしはお兄ちゃんと結婚する!その為なら大国との縁談だって断るし、戦争だって止めてみせる!」


その覚悟の程は立派だと思うけども。

動機がダメ過ぎる。

ダメだよね?


「私は応援する!協力は惜しまない!」


「あれー?ちょっとユウさん?」


貴女何言うてますのん?

いや、そりゃあボク達の目的を果たした結果、ミザリアさんの目的を援護する形にはなるかもだけど。


「分かってくれますか!ユウさん!」


「分かる!私には分かる!お兄ちゃんはもっと、美少女な妹という存在が如何に希少で愛すべき存在か!正しく理解する必要があると思う!」


「そうです!そのとーりです!」


「「ええ~…」」


いや、ボクはユウを大切に思ってるし愛してるよ?

妹としてだけども。

今それを言ったら余計ヒートアップしそうだから言わないけど。


「愛さえあれば!」


「兄妹でも!」


「「結婚していいよね!」」


「「いや、ダメだろ」」


二人の間に熱い友情が生まれたようだけども。

ボクとロミリオ君の間にも妙な友情が生まれた気がする。

そんな妙な気分で話し合いは終わるのだった。

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