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第110話 アーミーアント 1

「こんにちは、ウーシュさん」


「あ、こんにちは、ジュン様」


新装備を受け取って訓練をした翌日。

実戦訓練を兼ねて討伐系の依頼を受けに冒険者ギルドにやって来た。


「相変わらず美少女と美女を大勢侍らせてますね~、その内、刺されますよ」


「うん、まぁ女性を多く連れてるのは事実だからいいけど、刺されるような事はしてねぇよ」


相変わらず失礼な人だ、ウーシュさんは。

それでもギルド受付嬢人気ランキング2年連続1位。

人気の理由は明白。

巨乳は正義という事だ。

勿論ボクも投票した。


「今日は装備を新しくしたんで、実戦テストを兼ねて討伐系の依頼を受けたいんですけど、何か手頃な依頼はありますか?」


「ん~、そうですねえ。ゴブリン討伐も今は無いですし…」


「あるぜぇ。今、入ったばかりのホットな依頼がな」


「あ、ギルドマスター」


「こんにちは、ギルドマスター」


モンジェラさんと結婚して2年。

幸せそうな顔したギルドマスターが一つの依頼を持ってやって来た。


「奥さんと、お子さんは元気ですか?」


「おう。元気だぜ。元気過ぎて困ってるくらいだ。ガハハハハ」


半年前、二人の間に子供が生まれた。

名前はアンジェラちゃん。可愛い女の子だ。


「ギルドマスター、高給取りなんだから、ベビーシッター雇ってモンジェラさんを早く戻してくださいよ~」


「ばっか、お前。モンジェラが産休の間くらい文句言わずに仕事しろい」


「産休何ですか?退職じゃなくて」


「おう、モンジェラは復帰するつもりだぜ。て、それよりもだ。依頼の話だ」


「はい」


ギルドマスターが持って来た依頼は「アーミーアントクイーン」の討伐。

アーミーアントとは現代地球にいた軍隊アリとは違い巣を作る。だが獲物と見ればどんな相手でも襲う。マウンテンバッファローくらいなら数分で喰いつくす。人間大のアリだ。

単体討伐難度はE。クイーンでC。


「一匹一匹は大して強くねぇ。だが兎に角数が膨大だ。どんなに少なくても二千。巣の中には何匹いるか検討もつかん。だから討伐には複数の冒険者パーティーに参加を要請する。巣が発見されたのは王都から北東にある山脈に挟まれた平野。王都とは別の街の冒険者も参加する」


そうアーミアントの最大の武器は数だ。

そして連携して襲ってくる。

巣丸ごとの討伐難度はA。


「で、この依頼。実はお前さん達には指名依頼になってる。お前には転移魔法で王都の冒険者を一番近くの街まで移送して欲しいんだ。アーミアントの討伐は早ければ早いほどいいんでな」


「なるほど」


冒険者になって三年。

その間に国内の街はほぼ転移できるようになった。


「出発は三時間後。それまでに準備を整えてもう一度ギルドに集まってくれ」


「わかりました」


まぁボク達の準備は既に万端なのだが。

他の参加者達の招集と準備があるだろうから、時間まで待つしかないか。


「ジュン様。アーミーアントが相手なら、親衛隊から増援を呼びましょう。数が数です。こちらも出来るだけ人数は増やした方がいいかと」


「ん~…ギルドマスターが要請してこないって事は冒険者だけで事足りるんだと思うけど…念を入れて増員するのはいいけど、あまり連れて行けないよ。親衛隊全員を転移で連れていくと流石に魔力が尽きる」


クリステアの提案はもっともなのだけど、それじゃボクがまともに戦えなくなる。

それに移送する冒険者の人数もわからないし。


「魔力回復薬があるから多少は呼んでも大丈夫だろうけど…そうだな。二十名までなら問題ないだろう。選抜はカイエンに一任する。2時間後までに冒険者ギルドに集合するようカイエンに伝達して来て」


「了解しました」


「ルチーナは親衛隊から増援を呼ぶ話をギルドマスターに伝えて。それから城に戻って準備を手伝って」


「はい!」


「ウチらはどうする?三時間もどうやって時間を潰す?」


「皆は自由にしてていいよ。ボクはちょっと軽く偵察してくる」


「あ、ウチも行く!」


「お兄ちゃん、私も!」


「ああ、はいはい。じゃあ三人で。行ってきまーす」


「あ、ちょ、ジュン様、オレも!」


「ジュン様、私も!」


「直ぐ戻るから~じゃあね」


セバスト達には悪いけど、ちょっと秘密で試したい事もあるので、これ以上希望者が増えない内に三人だけで転移する。


「じゃ、ここからは飛行魔法で高速移動だ。行くよ」


「「うん」」


アーミーアントの巣から一番近い街では念の為避難が始まってるようだ。

上空から見ると冒険者ギルドと駐屯兵の兵舎は慌ただしく動いているが他の場所は閑散としてる。


「やっぱり結構大事みたいだな。急ぐか」


アーミーアントのある巣まで上空を飛んで直線で行く。

約十分後、巣が見える位置に到達する。


「「「うわぁ…」」」


人間大の大きさのアリがうじゃうじゃと固まってる。

その光景は中々に気持ち悪い。


「これ、どれだけいるの?」


「探査魔法を使ったけど…知りたい?」


「…一応聞いとく」


「驚きの二万オーバーだ。ハッハー笑うしかないね~」


「にまっ…ん…」


「ねぇ、お兄ちゃん、これってもう災害レベルなんじゃ…冒険者だけじゃなくて騎士団を派遣するレベルなんじゃ…」


「どうだろうな。兎に角、ちょっと試してみるよ」


アーミーアントは仲間の死に頓着はしない。

だが攻撃してきた相手には猛然と反撃するし、獲物には容赦しない。

だが逃げた相手をどこまでも追うような執念深さはない。

また、感知能力はそれほど高くも無いらしい。

となれば


「やる事は遠距離から魔法で攻撃だな。まずは焼くか」


上空から巣に近づいて巣の周りにいるアリを魔法で焼く。

上空の敵に攻撃手段を持たないのか、アリは威嚇音を鳴らすだけだ。


「空を飛べる魔法使いなら一方的に攻撃し放題かな?これは」


「そうでもないみたいだよ、ジュン」


おっと、あれは…羽付きアリか。

航空戦力もあるとはね。


「転移するよ」


「「うん!」」


一瞬で凄い数が飛び立ったのでとりあえず転移で距離を取る。

するとアリ達はあっさりとボク達を見失ったようだ。

羽付きアリたちは巣に戻っていく。


「やっぱり感知能力は低いみたいだ」


「そうみたいだね」


「次はどうするの?お兄ちゃん」


「次はあの森にいるアリを倒す。直接戦闘能力を図りたい。あと【フレイヤ】も試してみる」


恐らくはあの森の魔獣を根こそぎ狩りつくそうとしてるはず。隊列があの森に続いていたからな。

転移で森に移動して地上で戦ってみる。

すると直ぐに襲われた。


「こいつら、確かに一匹一匹は大したことないけど!」


「キリがないよ!お兄ちゃん!」


確かに一匹の戦闘能力はゴブリン程度。

しかし、怯むことなく、襲ってくるし遠距離から酸を飛ばす等の簡単な連携攻撃をしてくる。

中々厄介だ。


「そろそろ限界かな。【フレイヤ】を使う」


【フレイヤ】の能力で森の植物に干渉。

アリを捕まえさせる。

森の中となれば植物が沢山ある。【フレイヤ】の能力が一番活かされる環境だろう。

結構広い範囲に干渉できるようで、今まで途切れなかったアリの攻撃が止まった。

後はボクがここを離れても能力がいつまで消えないか確認しよう。


「転移するよ、近くへ」


「「はい!」」


転移で森の上空まで移動。

森の様子を観察する。

【フレイヤ】能力はその場から離れても、直ぐに効果が消失するわけではないらしい。

十分後、効果は消失。拘束を解かれボク達を見失ったアリ達は再び元の作業に戻る。


「こんなとこかな。王都に戻るよ」


「「は~い」」


「その前に、一発大きいの撃っておくか」


風魔法の上位魔法「トルネード」を放つ。

巣を破壊しないようにアリを吹き飛ばしバラバラにしていく。

巣のみを壊すとクイーンは全アリを連れて別の土地でまた巣を作る事になるからだ。

やるならクイーンを倒してからだ。


「よし、帰ろう」


魔法で数百匹を吹き飛ばしてから、王都に戻る。


「ただい、まってっ、うおおう」


転移で王都の冒険者ギルドに戻るといきなりノエラに抱き着かれた。

あれ?ノエラ泣いてる?


「ジュン様!お怪我は?体は大丈夫ですか?どこも異常はありませんか!?」


「あ、ああ。うん。大丈夫、何ともないよ」


「そうですか…ジュン様!もう二度とこんな事はしないでください!」


「全くだ。いいかジュン様、オレ達はジュン様達を守る使命がある。でも、傍にいなきゃ守れない。なのに護衛を一人も付けずに自ら偵察に行くなんて論外だ。ましてや、ユウ様にアイ様まで連れて…もう二度としないでくれ」


「リリーも心配したですぅ」


「あたしはご主人様ならきっと大丈夫だって信じてたんだよ?」


「ティナ達も心配したの!」


「はい、お姉ちゃんの言う通りです」


「クーちゃんも心配し過ぎて泣いてたんですよ」


「な、泣いてねーし!」


どうやら皆に心配をかけたようだ。

ノエラとセバストにこんなに真剣に怒られたのは初めてかもしれない。

ここまで心配されるというのは、嬉しいやら気恥ずかしいやら。


「ごめんね、みんな」


「ダメです。許しません。罰として今からどんな時も一緒です。睡眠時は勿論、御風呂からトイレまで」


「いや、それは勘弁してください」


クリステアが今ここにいなくてよかった。

居たら更にややこしいことになってたに違いない。

ここでそういう事言わないでおけば感動したまま終わったのに。

ノエラもブレないね。

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