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いま

作者: 深月

大学に入って、もう2年近く経った。



大学生に擬態するのはだいぶ上手くなったと思う。


お化粧だってできるようになったし、バイトだって慣れたものだ。自分のお金で買えるものがぐんと増え、行動範囲だって広がった。

毎日、研究室と課外授業とバイトとで、放課後は埋まっている。全部が将来のために直結してるから、すごくすごく充足感があって。忙しく楽しい生活だ。


高校生から大学生。大きな変化だ。

こんなにも、世の中って楽しかったんだって、たまにはっとする。




それでも、変わらないことだってある。



毎晩、目を閉じる前にふっと思う。

これは全部夢なんじゃないかって。こんな都合のよいこと、現実なはずがないよ。

起きたら、私はまだ何もできない高校生で、うまく食べられないって悩んで、食後は一生懸命トイレに篭って、部活ができないよ、未来が見えないよって絶望してて。

あぁいい夢だったなぁあんな生活ができる人間は羨ましいなぁって。ちょっと妬んだりするの。


2度と目を覚まさないですみますようにって、必死に念じながら、どうにか目を閉じる。

厨二病だって笑われるかな。





大学に入って、初めて知ったことがある。



私は、いつからかあまり落ち着いて勉強が出来なくなっていた。 集中し始めたと思ったら、集中が切れる。


だって、何度も何度も、明確に思い出してしまうから。私がやらかしたこと、言ってしまったこと、言われたこと。

まるでその場にいるみたいな気分。


こんなことをするんじゃなかったって思いながら、その言葉を言い言われる自分の繰り返し再生。

ごめんなさいごめんなさいって胸を掻き毟りたくなる。私が悪かったですって手当たり次第のみんなにみんなに謝りたくなる。

この世から消えてしまいたくなるくらい恥ずかしくて恥ずかしくて。

勉強どころじゃなくなるから。



みんなそうだと思ってた。私ほどの頻度じゃないにしても。だって、そうでしょ。みんな覚えてるでしょう自分のしてしまったことを。夢に見るでしょう、ならば現実でも見るでしょう。



ところがどっこい、とんでもない。



マインドワンダリングって言葉を知った。

私はまだ高校生の時の呪いを解けていないんだって分かった。


こんなに毎日充実してるのに、こんなに楽しいのに、まだ私の中には高校の時のあれやこれやが重くのしかかる。それらが私を縛って、時にその影響力をまざまざと見せつけてくる。



なんてこった、助けてくれ。




かのChildrenだけどMr.をつけた方々の歌に、「あぁ生きてるって感じ」って歌詞がある。

サビの入りの前だけど、毎回聞くたびに胸がぐっと突かれる。


生きてるって感じ。実感。


今はちゃんと感じてるよ、大丈夫。私はまだいけるって、念仏のように繰り返し言い聞かせる。

こんなにも楽しい毎日が、幻想なはずがない。

これは本当に起こっていること私の人生の一部だよ。





言い聞かせても言い聞かせてもどこか、私には生きている実感がない。

この充実している生活なんて夢幻の類なんじゃないかって、疑う自分がここにいる。

疑り深い癖ばかりは、残るのでしょう。


今の充実した時間を、ふわふわとまるで他人事のように過ごすこの間は。

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