第1話 死んで神になった
風が岩の隙間を通り抜ける音がヒューヒューと、子供の鳴き声のように聞こえることから「夜泣き岬」と呼ばれているこの海岸は、街灯の1つもない。
不気味な雰囲気から近所の住人も滅多に近づかず。今では立派な自殺の名所となっている。
自殺防止の警告が書かれている血のように真っ赤な看板のすぐ横を懐中電灯1つで歩いている男がいる・・・
この30年間、俺には苦痛でしか無かった。いじめなどは日常。
親からも見下され、兄弟達からも嫌われ、ずっと1人だった。
俺には、何で嫌われているのかも分からなかった。
そんなこと考えるなら、どうすれば、被害が少なくて済むかを考えていた。
俺に手を差し伸べた人がいなかった訳じゃない。
ただ、関わった人が全員不幸になっていき、恨まれ、死んでいった。
だからこそ、俺は誰にも近づかなかった。
そして結論が出た。
死のう。
生きてるからこそ苦しまないといけないんだ。
生から解き放たれて楽になろう。
そう思い崖から大きく一歩を踏み出す。
踏み出した足は空を切りそれに引っ張られるように体が崖へと落ちていく。
夜泣き岬の幼子のような泣き声を聞きながら俺の人生は幕を閉じた。
「起きなさい。」
暖かい声が聞こえてくる。
目を開けると、そこは真っ白で何も無い広い空間だった。
さっきまでいた夜泣き岬とは似ても似つかぬ風景に、少し目眩をおぼえつつも周囲を見渡す。
まず俺の目に飛び込んできたのは、目の前に佇む純白の服に包まれた綺麗な女性だった。
過去のトラウマから女性に対してものすごく嫌悪感を持っている俺でも目を奪われるほど美しかった。
いったい何秒ほどフリーズしていただろうか。
先ほどから俺を見下ろしていた女神が歌を歌うよう涼やかな鈴のような声で呼び掛ける。
「今野健二さんですね?」
「貴方を生き返らせます。」
「はい?」
何言ってるんだろうこの人は。
「何か問題でも?」
「いやいや、問題大ありだよ!死んだんだよな!俺。」
「はい。」
「じゃあ、どうやって生き返るんだよ!大体死にたいから死んだのに何で生き返らさせられなきゃならないんだよ!」
「ぷー、折角生き返らせてあげるって言ってるのに、何で拒否するんですか!」
「生きたくないからだよ!」
すると女神は一瞬はっとしたような顔をしたかと思うとその表情が怒りを秘めた泣き顔に変わっていく。
「何でそんなこと言うんですか!私は貴方に生きて欲しいんです!!」
こう言い放った。
さすがの俺でも女性に泣かれるのは、ちょっと申し訳ないと感じてしまう。
文字通り女神級の美女の涙目のこの言葉は、普通の男なら即死級の爆弾だっただろう。
だが、俺は違う。耐えきった・・・
決して心なんか1ミリたりとも動いてない。
絶対だ。
いや、ちょっとは揺れ動いたかもしれないけど・・・
自問自答していると女神と目が合う。
自分を心配してくれ涙を流してくれるのは素直に嬉しい。でも、俺はもう決めたんだ。
「俺は生きるにもう満足したんだ。だから、すまんが生き返らせるって話は無しにしてほしい。」
すると、女神はさっきまでの怒った顔をだんだんと青くすると、
「すいません本当に言いにくいんですが、この空間に来てしまったあなたはもう戻れないのです。」
二人に時間が数秒ほど止まる。
「何!?じゃあ、俺はどうするんだ?」
戸惑いの感情をそのまま女神へぶつけてしまう。
「あ、あの〜、え〜と・・・
そうだ!わ、私と神様して、くれませんか?」
女神は小動物のように体をちっちゃくし、上目使いでこちらを伺っている。
もう驚かないぞ・・・
このまま駄々こねても解決しそうもないし・・・
フッ、神様か、やってやろうじゃないか。
「あぁ、いいぜ!」
こうして、神界に新たな神が誕生した。
ゲル化剤
「メガハナ」を読んでくれてありがとうございます!
文章構成を主の担当してますゲル化剤です。シハーと一緒に作ったメガハナはとてもいい作品になる予感がしてます。応援お願いします。
シハー
読んでくださりありがとうございます。
主に会話文などを担当していますシハーです。
ゲル化剤と作ったこの作品は誰でも楽しめる話にして行こうと思います。
応援お願いします。