表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

プロローグ

 カイザースベルン王国の王都ディアトゥーヴの街は、ぐるりと街壁に囲まれている。

 街の中はこの時期特有の美しいイルミネーションで彩られており、大陸の各国から集まった旅人や商人でにぎわっている。

 街の郊外の広場には、1ヶ月の間、遊園地やサーカス、劇団などの巡回団が滞在し、天幕を張ったり小屋を建てたりして興行する。彼らは広場の隅に居住用のテントを張り、そこで生活をしている。

「なに!?いないだと?」

 広場の最奥に建つ天幕の中から大きな声が響いた。見せ物小屋の裏手にあたる、一際ひっそりとした薄暗がりだ。周りには7つほどの天幕があるが、先ほどの天幕が一番大きかった。

「どういうことだ! 説明しろ!」

 そして、激しくテーブルを叩く音。

「すいません。ちょっと目を離した隙に、抜け出したみたいで…」

「みたいで?」

「はい」

「それで、例のものをあいつが持ち出したっていうのか!?」

 不機嫌そうな野太い声は、先ほどよりもさらに刺々しい。

「はい。すみません」

 二人の男が同時に謝る声が聞こえた。

「すみませんじゃねぇだろう! あれがないってことがどういうことか解ってんのか? あれがなけりゃぁ、何もできねぇんだよ! 何のためにこんなとこまで来たと思っているんだ! わかってんだろう! お前達!」

 ガシャンとガラスが何かに叩きつけられて割れる音がした。

「もういい! 早く探し出して捕まえろ! 何としても、ブツは取り戻せ! まったく。あんなガキ、いつまでも生かしておいたのが失敗だったか。何をしている! 早く行け!」

 怒鳴り声に押されて、二人の男達が飛び出すように天幕から出てきた。いずれも、体格の良い中年の男だ。

「なんとしても捕まえるぞ! 警吏に怪しまれないように、充分気をつけて探せ!」

 外に控えていた複数の男達にそう指示を出し、イルミネーションで白く染まる街の中心部の方へと走り出した。

前作、キールの薔薇編からの続きです。

事件が連鎖して、物語は続いていきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ