リンからの手紙
展開がなかなか進まず、多少グダっているのは多めに見てください!(・ω・)
結論から言うと、少女の名前については一旦保留にした。まずは、服だ。それをどうにかしないと、もし村や街があったとしても、そのまま入るのは気が引けるし、最悪の場合、襲われたり、捕まえられかねない。
「君がリンに転生…?させて貰ったときに、何か貰ったりしなかった?俺を手助けしてほしいと言われたなら、なにか特典みたいなものをくれてもいいはずだけど」
青葉自身、服を着た状態で転生したし、リンからは様々な能力を貰った。但し、その能力は彼女の服をどうにか出来るようなものでは無かったため、彼女自身が何かを貰っていることに期待したのだ。
「そういえば、リンから青葉にって、預かってる物があった。今、出す」
と言うと、未だ燃え続けていた焚き火の前まで移動し、しゃがみこむと、躊躇無く、両手を焚き火の中に突っ込み、何かを掴み取り出した。
「何やってんの!?」
青葉は突然の彼女の行動に驚いたが、彼女は何事も無かったかのような顔をしている。見ると何かを握りしめている両手には、火傷1つもない。
「大丈夫。これが取りたかっただけ…」
彼女は立ち上がり、掴み取った物を青葉へと差し出してくる。
それは、丸いブローチだった。綺麗な赤い宝石を中心に、周りは金や銀で装飾されている。派手な装飾に見えるが、赤い宝石の輝きを阻害せず、むしろ輝きが増して見えるのは、単純に宝石の存在感があってのことだとは思うが、作り手のセンスの良さが伺える一品であった。
「これが、前の私。リンが私を人の姿に変えてくれるときに、魂を取り出した石。リンはその石をこの形に変えて、『持って行くといい』って言って、くれた。
『アイテムボックス化しておいた、青葉君なら使い方は分かるはず』、って。あと、この中にリンからの手紙があると思う。」
作り手がリンだとわかり、ブローチに魅入った青葉は、微妙な気持ちになったが、何も言わずに彼女から受け取った。
だが、アイテムボックスだと言われても、ぶっちゃけ使い方など分からなかった。そもそも、使ったことが無いのだから、仕方がない。
「俺なら分かるって言われても……」
その時に、青葉の頭を過ぎったのは、昔呼んだファンタジー小説やゲーム、アニメ等でのアイテムボックスの使い方だった。
まさかと思い、入っているという手紙をブローチから取り出すイメージをして見た。すると…
「…出ちゃったよ…これでいいのかよ…」
イメージとは僅かに大きさや模様は異なったが、手紙と思われるものは現れた。御丁寧に、封筒に入り、ハート型のシールが貼ってあった。まるでラブレターの様だ。
差出人がリンだと分かっていたために、青葉は封筒ごと手紙を破り捨てたい衝動に駆られたが、それを押し殺して封をあけ、手紙を取り出した。
折りたたまれていた手紙を広げると、A4ほどのサイズになり、青葉は早速それを読んでみた。
『拝啓
この手紙は、僕から青葉君への最後のメッセージとして、彼女に持たせた物だ。
彼女というのは、言うまでもなく、今は君の隣にいるであろう、赤髪の子の事だ。
彼女から何処まで聞いたかは分からないが、彼女は、僕が隕石の中に宿っていた魂を元にして、新たな体を構築した存在だ。ちなみに、外見は君の好みに合わせている。君の記憶を読んだ時に、知っていたからね。嬉しいかい?』
「余計なお世話だ!!」
思わず、青葉は手紙を地面に叩きつけた
「どうかした?」
「…いや、何でもない」
ちなみに彼女は、青葉の隣で手紙を見てはいるが、字は読めないらしかった。
青葉は、彼女が字を読めない事に少し安堵しつつ、地面から手紙を拾い上げ、再び読み始めた
『余計なお世話だ!!とかいって手紙を破くのは止めてくれよ?結構重要な事を書いたから』
なら余計な事を書くなよ!?という言葉は飲み込んだ
『まず、先程彼女が隕石に宿っていた魂と書いたが、厳密には、少々違う。どちらかと言うと、君の元の世界でいう、付喪神だ。隕石に宿るというのはかなり希少な事だがね。つまり、彼女の魂は精霊や、神に近い。そのおかげで、能力は通常の人間よりも遥かに高くなっている。但し、寿命だけはは君ら人間と同じくらいにしておいた。』
付喪神…聞いたことだけはある。年月を経た道具に宿る神や精霊の事だ。たしかに、隕石に宿るのは稀な事だろう。そもそも、道具では無いのだから
『ちなみに、彼女の能力は僕でも把握は出来ていないから、一緒に過ごしながら分析していけば良いだろう。
次に、彼女には、人間の16歳くらいまでの一般常識は与えておいたから、意思疎通には困らないハズだよ?
青葉君は、異世界に着いて直ぐに溺れていたからね。ついでに、人工呼吸の仕方も教えておいた。覚えてないかも知れないけど、初キッスおめでとう(笑)』
「人工呼吸!?」
初耳である。
「あ、うん。したよ?やり方はリンに習ったし、きちんと出来たはず」
リンのやつ、やっぱり今度会ったら殴るわ。彼女の言葉に赤面しながら、改めて青葉はそう思った。
『あ、ちなみにこの手紙は不思議な力で、青葉君しか読めないようにしている。その方が、イロイロ都合が良いだろう?』
彼女にこの手紙が読めない訳が分かった…やはり、余計なお世話である。
『最後にブローチの事だが、前に僕が太陽に匹敵するくらいのエネルギーが隕石の核、つまり現在のこのブローチの宝石にはあるって言った事を、覚えているかい?
僕は、そのエネルギーの半分を彼女の身体を構築するための力に。もう半分をブローチとして分離させた。
アイテムボックス化も、このエネルギーがあってこそ出来たんだ。ちなみに、アイテムボックスとしての容量は不明だ。ただ、とてつもなく大容量なのは間違いない。
それ以外の使い方としては、ブローチ内のエネルギーを使って、物を燃やしたり、エネルギーの魔力への変換や、物質生成など、つまりは、何でも出来る。
ただし、自然回復する魔力とは違って、このエネルギーは有限だ。必要だと思う時に使えばいい。まぁ、程々に使っていっても、君の生涯が尽きるまでは普通にもつハズさ。
ちなみに、僕はちょっと弄っただけなんだけど、このブローチ、神器クラスだから、扱いは気を付けてくれ。』
「いやいや、何だよ神器って!そんなもん気軽に渡していいのかよ!?」
ブローチの性能は、正直右も左も分からない現状では、かなり助かるものだった。しかし、同時に特級の危険物を手に入れてしまったように感じた。
そんな事を青葉が思っていると、急に紙の余白に文字が浮かび上がってきた。
『あ、ブローチは君達2人しか使え無いようにしてるから、安心してね?万が一無くしたとしても、元々同一の存在だった彼女なら、何処にあったって呼び出せるから。
と言うか、そんな事より早く彼女の名前を決めてあげなよ。』
「心を読まれた!?てか、リンの野郎!どっかで見てやがるだろ!?」
すると、また文字が浮かび上がってくる
『さて青葉が何を考えているかなど、欠片も分からないが、取り敢えず話は以上だ。いずれまた会える時を楽しみに待ってるよ。
リン』
手紙これで終わりのようだ。余計な事も多々書いてあり、色々と突っ込みたいこともあったが、知りたかった事は大体わかった。
「つまり、このブローチを使えば服も作れる…てことか」
青葉は早速、彼女の服を作ることにした。
リンは、具体的なブローチの使い方について書いてはいなかったが、手紙を取り出した時のように、イメージが重要なのだろうと青葉は思い、彼女にブローチを渡すと、手紙に書いてあったことを、余計な部分を除き、説明した。
「服…」
彼女は青葉の説明を聞いて、ブローチから服を生成使用とするが、なかなか上手く行かない。
それもそのはず。リンから一般的な常識は習ったものの、服の造形ついての知識などは持っていなかった。
暫く考え込んでいた彼女は、一瞬チラリと青葉を見ると、目をつぶり服のイメージを固めた。
そして、出来上がったモノは…
「…何でセーラー服!?」
だった。
ヒロインの名前……