第4話「異世界転生はテンプレです」
暇を見ては書きました。今回は、色々説明回です
「身体の調子はどうかな、烏丸君?」
「んー、良いとは思うんだけど、何だろう……身体があって、動かせるっていうのが、凄く懐かしい……?まぁ、さっきまでは魂だけだったみたいだし仕方ないのかな?」
身体が心無しか、動かしずらく感じて、その場で跳ねたり、ストレッチをしてみる。ちなみに、服は着ていた。恐らく高校生の時に使っていたであろう学生服で、黒い学ランに黒いズボン。左胸にはご丁寧にネームまで着いている。
『烏丸 青葉 (改)』
「……ん?」
何だよ。この(改)って!
「あの?神……様?このネームの、(改)ってなんですか…?」
「あぁ、それ?文字通りの意味だよ。実は君の身体の再構築にあたって、少し改造……というか、色々弄りやすくしてみた」
勝手になんてことしてやがる!?
「あ、安心してね。バッタ人間にはならないし、加速装置とかも着いてない。まだ、何もしてないから。そのことについてはあとで話すよ。そんなことより……」
「いや、そんなことよりって……俺には結構重要なんだけど…」
釈然としなかったが、取り敢えず話を聞くことにした。
「君、異世界に転生してみない?」
さらっと言われた言葉に、脳が一瞬フリーズする。しかし、許容範囲内だ。
「やっぱりそういう展開になるのか……。で、もし転生することを選ぶとしたら、異世界の魔王でも倒せばいいの?それか誰か守らないといけないやつがいるとか?」
生前、青葉はアニメやゲーム、ライトノベルが大好きであった。当然の如く、数多の作品の中には、異世界転生モノも存在しており、記憶が戻った時点で、ある程度の想像は出来ていたため、あまり驚きはなかった。
「あまり驚きは無いようだね。やっぱり君の住んでいた世界の人達は理解が早くて助かるよ。僕は、何度か君の世界の人間を、転生させたことがあるけど、大体みんな直ぐに状況を理解してくれる。
転生させるための理由は時と場合、世界によって異なるけど、今回、君に転生してもらいたい世界には、魔物と呼ばれるモノはいるけど、魔王はいないし、そもそも勇者という概念さえ存在しない。
武勲をたてて、『英雄』となろうが、それによって世界を救うなどの義務は発生しない。多くの異世界の中でも、平和なほうだと思うよ?それに、君の世界と違って、魔法も存在する世界だし、転生するに当たっては異世界で生きて行けるように、僕から特典もつける。さっきの改造っていうのは、その特典を付けやすくするために必要だったんだ」
その言葉を聞いていると、青葉は自分が転生する必要も無いように感じた。魔法や、特典は魅力的だが、もっと危険な異世界だと思っていたからだ。やはり現実はライトノベルや漫画のようなものではないのだろうか。ただし、神は言ってはいなかったが、敢えて危険なものを挙げてみると、それは人間達の渦巻く思想にほかならないのでは無いだろうかと思った。
「それで?もしも転生するのを断ったら、どうなるんだ?まさか拒否権がない、なんてことは無いよな?」
そう。これは聞いておかなければならない重要な事だ。知らない世界への転生の話に加え、現時点では何をするかもわからない状況だ。転生をしないという選択肢は持っておくべきだ。
「勿論、拒否権はあるよ?僕は相手の同意なしには転生させることができないからね。それから、転生を断った場合のことだけども、その場合は君の世界の輪廻転生の輪に戻ってもらうことになるね。今の君は、僕が君の世界の神に許しを得て、転生前の君の魂を交渉のために借り受けてるような状態なんだ。」
話が少しややこしくなってきた気がする。
「大体わかったけど、その話から察するに、つまりあんたは俺の世界の神じゃあないんだな?あんた自身は何処の神なんだ?俺が行く世界か?」
「あぁ、ごめんね。言い方が悪かったかな。僕はどの世界の神でもない。遅くなったけど、改めて自己紹介しようか。僕は転生を司る転生神。今回は先程説明した異世界の神に頼まれ、君をこの場に誘った。名は……そうだねリンテンジンとでも呼んでもらおうかな」
リンテンジン……輪転神とでも書くのだろうか……
「なるほどな。リンテンジン……じゃあ長いからリンって呼ぶわ。でも、お前その名前今考えたろ?」
「え、突っ込むとこ、そこ?しかも勝手に縮められたし……」
だって、気になったんだから仕方が無い
「とにかく、リンの事情は分かった。じゃあ、話を進めようか」
リンの奴、色々納得してないって顔をしてるな。無視するが
「結局は俺が異世界に行くか、行かないかだろ?行かないことを選んだら、リンは新しい転生してくれそうな俺みたいな候補を探して、また交渉する訳だ」
「その通りだよ。まぁ、それが僕の仕事だからね」
「最後に聞きたいことがある。俺の転生する場合の姿についてと、俺が転生する理由だ。姿に関しては、もしかして、この姿で転生するのか?」
そう、先程気付いたのだが、俺の死亡した時の年齢は23歳だったはずだ。だが、今は明らかに若返っている。学生服姿から考えると、16・17歳くらいだろう。
「良く気がついたね。そうその通りだよ。その身体が、君の人生で最も身体的ステータスが高かったんだよ。それから、理由については、頼みたいことがあるから、かな。詳しくは君の返答を聞いてからになるから、まだ言えないけど……」
「そうだね、今言えるのは、君には世界を救って欲しい。平和な異世界だとはいったけど、今回はちょっと特別……というか……」
意地悪をして、話さない訳では無さそうだ。その辺りは何か訳ありなのだろう。
「あ! でも、世界を救うのは、一度きりだから! それも、転生してすぐのことだし、それが解決したら、以降は自由に異世界ライフを楽しんでもらったらいい。そのことは保証するよ!」
「多少不安では、あるがそれはいまは詳しく聞かないでおく」
詳しく聞いたところで、これ以上の情報は得られそうにないからな。
「それで、姿については、何かあるかい? なにか不都合があるなら修正もできるけど?」
不都合はない、むしろ都合がいいともいえる。
「いや、このままでいい。……異世界を楽しむにはちょうど良さそうだ」
そう。すでに俺の心は決まっていた。
「異世界を楽しむ……ということは」
「あぁ、行くよ。異世界に」
その言葉を言った瞬間、白い世界にファンファーレが鳴り響いた。リンが喜んでいるのだということはわかるが、ぶっちゃけ五月蝿い。
「ありがとう青葉君! じゃあさっそく、超巨大隕石を破壊しに言ってもらおうか!」
「は?」
青葉は、唖然とした
「そんなの聞いてねwww」
青葉の叫びは、未だ鳴り響くファンファーレに、かき消されていった。
次回、やっと…やっっと異世界に!!
はぁ、長かった…