名ずけと始動と色々と
タイトルだけ変えるかも知れません。
近々あらすじは編集しようかと思っています
「この服……ダメ…?」
彼女が純粋な目で聞いてくる。ダメな訳では無いし、むしろかなり似合っていた。
夏服のように半袖で、スカートから襟まで全身が白く、本来リボンを付けるであろう胸元には、赤いブローチが輝いている。
をぶっちゃけお持ち帰りを考えるほどに可愛らしかった。
「青葉の世界の女の子はみんなこの格好をしている……ってリンから教わった。私、服を着たことが無かったし、これしか知らない。」
「…分かった。当分の間はその服で行こう。街や村があったら服でも買えば…………!?」
そして今更になってだが、重大な事に気が付いた。
「俺、この世界の金なんて持ってないぞ!?ていうか、通貨の知識も無いし、どうやって暮らしてけばいいんだよ!?」
その時、不意に服の袖が引っ張られた。
「…大丈夫。ブローチにこの世界の一般常識も大体教えて貰った。」
「あ…そ…そう……(俺、彼女がいなかったら本格的に色々とヤバかったんじゃね?)」
当初、彼女が異世界に来る予定など無かった。
リンがわざとなのか、忘れていたのかは分からないが、青葉にこの世界の一般常識など伝えてはおらず、青葉しかいなかったら、この先どうなっていたか分からない。改めて、彼女には感謝しか無かった。
「そういえば、そろそろ君の名前を考えないとな。」
随分と後回しになってしまったが、いつまでも『彼女』という呼び方では可哀想である。
しかし、自分の決めた名前が彼女の、一生呼ばれるようになる名になると思うと、慎重に考えざるを得なかった。
青葉は地面に胡座をかいて、考えていたが、暫くして、彼女の名前を思いついた。
「朱璃……シュリって名前でどう?」
「シュリ……」
「そう。漢字にしたら、こう書くんだけど……」
といい、落ちていた木の枝を使い、地面に『朱璃』と書いた
「君のブローチに嵌っている赤い宝石…君の元々の体であるそれをイメージしてみた。まぁ、赤色と朱色は少し違うけど、『朱』の方が君の名前としては、似合ってるかと思って。
あと、『璃』って言うのは、主に『美しい宝石』を意味する言葉だ。」
「朱璃……シュリ!私の名前……!」
どうやら気に入ってくれたようだ。なんども「シュリ」と繰り返し口にして、顔を綻ばしている。彼女がもう少し感情表現が豊かだったならば、踊りだしていたかも知れない。
朱璃が喜ぶ様子を見て、青葉も嬉しかったが、不意に「ぐぅ〜…」という音が聞こえた。音の発信源は朱璃であり、彼女のお腹の音だった
「もしかしてお腹が空いてる?」
「わからない…お腹の中がキューってなって、何だかちょっと力が抜けそうになる。……これがお腹が空くって事?」
朱璃にとって、人間としての空腹はこれが初めてだ。無論、リンから知識として知ってはいるが、感覚的には理解出来なかったのである。
「間違い無くお腹が空いてるね。何か食べれる物が周りにあればいいんだけど……」
周りを見渡すも、特に食べられそうな木の実や、キノコなどは生えておらず、湖に魚はいるかもしれないが、捕まえる手段がない。完全に手詰まりだった。
「青葉、さっき水の中を泳いでたら、いっぱい魚いた。捕まえる?」
「捕まえる為の道具がないと……というか、朱璃が現れた時に、湖から上がって来たようだったけど、泳いでたんだ…」
「ん…青葉が溺れてたのを助けた後、なかなか目を覚まさなかったから、泳いで待ってる事にした。」
それから朱璃は、水の中で泳ぐに至ったまでの経緯を、青葉に伝えようと、ぎこち無い言葉で話し出した。その朱璃の言葉を要約すると、以下の通りになる。
『まず、宇宙には水も空気もない。当然生物などおらず、当時は鉱石だっために、感覚なども無かったが、リンに体を造ってもらって以来、皮膚を撫でる風や揺れる草木の弟が新鮮だった。特に湖の中は、冷たい水が心地よく、泳いでいる魚は、この世界で青葉を除き、初めて見た生物だった為、とても興味深かった。ずっと観察しておきたかったが、ふと、青葉のことを思い出し、水から出たら、青葉が起きていた。』という事らしい。
「水の中…楽しかった。初めてがいっぱい…」
話し終わった朱璃は、沢山の初めてに触れた感動を思い出しているようで、何処かフワフワとした雰囲気になっていた。…が、しかし
「くぅ〜」
今度は先程よりも少し可愛らしい音が朱璃のお腹から鳴った。
「……朱璃?」
「……楽しくても……お腹は膨れない……」
朱璃、少し涙目である。余程お腹が空いているようだ。
青葉、朱璃の様子をみて、内心「可愛いぃぃぃぃぃぃぃ!!」と思ったが、顔には出さず、『食べ物をどうするか』について考える事にした。
「……やっぱり森から出なきゃ駄目だよな…
朱璃は、この辺りの地理とかまでは分からないよな?」
駄目元で聞いてみた
「地理とかはわからない。けど……」
といい、森に向かって指を指した。
「青葉がここまで吹飛ばされて来たときに、最初の落下地点からここまでの道が出来てた。」
「そういえば、色んなもんを巻き込みながら、吹き飛んでいた記憶があるな……目的地も無いし、取り敢えずはその道まで戻ってみるか。もしかしたら森の外の近くまで続いてるかもしれないし」
朱璃もその意見には賛成し、やっとの事で動き始めたのだった
次回は……早ければ明日です