路頭に迷ってたら仲間に誘われた
お久しぶりです。遅くなってすみません!でも今後もたぶんこんな感じです!忙しいとなかなかできないので・・・。
アルフォンスに連れられて洋平ギルドの中にある、ドーム状の広々とした空間に入る。ここは普段、武器の試し打ちや模擬戦闘などが行われるらしい。
一行全員がホール内に入ったところでアルフォンスがふり向いて叫ぶ。
「よし、ナツキ。今からお前をテストする!」
「・・・へ?テスト?」
声高々に言うアルフォンスだが、いったい何が言いたいのだろうか?テスト?俺の学力を測定してどうするのだろうか。そもそも俺の学力は中二で止まっているというのに。
「そうだ、お前に俺たち、チームシルバーウィングに入る資格があるかどうかテストする。」
「チームシルバーウィング?」
「そうか、お前は記憶喪失だったな・・・。そうだ。多くの冒険者や傭兵は数人でチームを作ってギルドに来る依頼をこなすことが多い。そしてチームの人数も増え、実績も増えるとギルド公認のチームとして動くことができる。ギルド公認のチームになれば、難しい依頼や、報酬の良い依頼は優先的に回ってくるってこった。そして俺たちもこの傭兵ギルド、そしてこの町にある冒険者ギルド、両方の公認チームだ。だから、仲間にするやつは簡単には決められないし、中途半端なやつを連れて行って危険な目に合わせるわけにもいかねえ。だからお前をテストしてやる。」
なるほど。どうやらこの人たちはこの町でもかなり強い方らしい。それならテストというのも納得ができる。しかし、
「えと、じゃあ俺はどうすれば合格できるんですか?」
「お前にはこいつと、戦ってもらう。」
そういって首根っこを摑まえられて俺の前に移動させられたのはカインだった。
「お、おれっすか!?」
カインも何も聞かされていなかったようで困惑しているようだ。
「そうだ。ナツキ、こいつと戦って一撃でも入れられたらお前を俺たちのチームに入れてやろう。制限時間は15分だ。いいか?」
「いや、絶対無理ですって!」
「今朝ニーナから魔法の使い方教えてもらったろ?」
「教えてもらいましたけど・・・・。」
そう、今日の朝食後、約束通りニーナから魔法の使い方を教えてもらったのだ。しかし、使う時がないままここまで来たのである。
「しょうがねえな。ほれ、これかしてやるよ。」
そういって渡されたのは少し短めの木刀のようなものだった。
「カインも同じやつを使ってくれ。これで戦って一撃で良い、カインに入れてみろ。ルールはなし。場所はこのホール内ならどこでも使え。以上だ。質問はあるか?」
「・・・・ありません。」
もう俺に拒否権などないのだろう。まあ悪い話じゃないし、一緒に連れてってもらえるならそれに越したことはないだろう。しかし、いままで平和な世の中で引きこもっていたやつが、こんなやつらに勝てるのだろうか・・・。いや、かつ必要はないのか。一撃でも入れられれば・・・。
「よし、じゃあ始める。二人とも準備は良いな?それでは・・・スタート!」
アルフォンスの掛け声とともに俺はニーナに教わった通りに魔法の準備をする。魔法は、体内にあるマナを消費して放出する。マナとは、見ることができるものではないが、どのような生物も持っているもので、魔法のエネルギーの元となる。また、マナは消費した後回復することができるが、自然からエネルギーを吸収してマナにするため少し時間がかかる。
俺は火でできた矢をイメージした。魔法は想像によって作られる。その威力や大きさ、消費するマナは、そのイメージによって変動する。しかし、自分が持つマナには限りがあるため、マナを消費しすぎると、マナが回復するまで打つことができなくなる。だから俺は長さ一メートルくらいの、小さ目の矢を三つ空中に浮かぶのをイメージした。すると、俺の周りでほのかな温かさを感じる。どうやら成功したようだ。
「・・・・。」
「・・・・。」
カインたちの様子がおかしい。俺の周囲を見て目を丸くしている。俺が成功したのにびっくりしているのかもしれない。それもそのはず、俺が魔法を使うのはこれが初めてで、成功したとなっちゃあそりゃあ驚くだろう。俺も自分の出来栄えを確認するために作り出した火の矢を見た。しかし、
「・・・・ちっさ!!!!!」
そう、俺の周りの火の矢は俺が想像したものの十分の一ほどの大きさ、つまり、10cmほどしかないような、小さな矢が三つ、俺の周りに浮いているだけだった。
「お前、そんなんで俺に当てるつもりなの・・・?」
カインが呆れて手で顔を覆っている。
「ち、違う!本当はもう少し大きいのをイメージしたけど失敗しただけだし!っていうかこんなんでもカインに一発当てるくらい簡単だっての!」
そういって俺はカインに向かって火の矢が飛んでいくのをイメージした。すると、今度はイメージ通りに矢がカインめがけて飛んでいく。それと同時に俺の体から何かが抜けて空になるのを感じた。
「はあ・・・・。さすがに俺もなめられたもんだな・・・。」
そういうとカインは手に持っていた短剣を軽く横なぎにするすると、火の矢はあっけなく消えてなくなった。
「う、うそでしょ・・・?」
あっけにとられながらも、俺はもう一度火の矢を放つためにイメージを再開する。しかし、今度は俺の周りには何も出てこなかった。
「あ、あれ?出てこない?」
「ナツキ・・・もしかして、お前さっきのでマナが尽きたんじゃないか・・・?」
うそーん。さっきのでなくなるとか俺のマナどんだけ少ないんだよ・・・。っていうかもしかしてそれってもう俺に勝ち目ないってことじゃない?
しかし、ここであきらめてしまうのも情けないので、アルフォンスに借りた木刀でとりあえず向かっていく。しかし、これもまたあっけなくカインに弾かれ、短剣をのど元に突きつけられる。
「そこまで!これ以上はもう無駄だろうな。嬢ちゃん、いいな?」
「はい・・・。」
さすがに体術で勝てるとは思えないし、頼みの魔法もあれじゃあしょうがない。ここはもうあきらめるしかないだろう。でも、それじゃあこの先どうすればいいのだろうか。とりあえずこの辺でアルバイトでもしようかしら。
「隊長、本当にこいつおいてくんですか?」
カインが不安そうな顔でアルフォンスに問いかける。その眼は連れていきましょうよと訴えているように見えた。しかし、アルフォンスの言う通り、弱いやつを連れていれば足手まといになりかねない。ここはおとなしく引き下がるべきである。
「カイン、お前も大人になるんだ。俺たちはここいらじゃ一流のチームだ。危険な依頼だってたくさん来る。その中で戦えないこいつを戦闘員として繰り出すのはちと酷じゃないか?」
アルフォンスの言葉にカインは悔しそうに下を向いた。それを見たアルフォンスはにやりと笑うと、先ほどとは打って変わって明るい口調で言った。
「そういやニーナ、お前、家事とかの雑用係が欲しいとか言ってなかったか?」
「え!?えー・・・その言葉にはちょっと語弊がありますけど、まあ、いっつも私が家事やったりしてるので、たまに誰かにやってもらいたいとはずっと言ってましたけど・・・、雑用係?・・・・あ!そういうことですか!はい!言いました!」
ニーナも目を輝かして満面の笑みを浮かべている。
「だよな。よし。おい、嬢ちゃん、お前を戦闘員として迎えることは今のところ不可能だ。だから、非戦闘員の家事兼雑用係としてお前を雇おうと思うんだが、どうだ?」
いままで、こんなに心がイケメンな人を見たことがあっただろうか。俺のほうを向いて白い歯を見せながら笑うしぐさもかっこいい。アルフォンスさんマジイケメン!あとは全体的なヤクザ感さえなければ完璧なんだけどね。
「ありがとうございます!」
俺は頭が地面を抉る暗い深く頭を下げた。
「よし、決まりだ。じゃあ今日はもう遅いから各自休め。明日もう一度このギルドのエントランスに集合。次の依頼の確認をする。それでは、解散!」
さて、徐々に設定とかが露わになってきたかなと思います。もうしばらくおつきあいください・・・。