スキル発見したらゴブリン見つけた
ちょっとずつ一つの話が長くなっていってる罠。
かなり中途半端に終わっちゃったし。
朝食も終わり、ゴブリン駆除に向けて移動が再開された。荷物は馬車に引かせ、隊員がその周りを取り囲みながら進んでいく。その数10人。ゴブリン駆除には相当少ない人数らしい。
そんな中、俺はある男の隣を歩いていた。その男は、ストーンラビットから俺を守ってくれた男だった。そしてそいつはなぜかそわそわしていて、時折チラリとこっちを見たりしている。さっきからそれの繰り返しですごい気になる。言いたいことあるなら言えよ!言いにくいならこっちから聞いてやる!
「なあ、俺の顔になんか付いてるか?」
ニーナとの一件のあと、隠すことなくこの口調で話している。最初は皆驚いていたが今ではすんなり受け入れてもらっている。ニーナに至っては俺っ娘hshsとか抜かしていたので往復ビンタを3往復しといた。
「あ、そういうわけではないんだが・・・。その、お前も大変だな。」
そう言って頬をポリポリと掻く彼。ちなみに名前をカインというらしい。朝食のあとの時間に全員の自己紹介をしたため、なんとか覚えている。正直何人かもう忘れた。
「本当だよ。ニーナってもしかしてあれなの?」
「いや、そんな話は聞いたことないが・・・。って俺が言いたいのはそのことじゃなくて、その、記憶喪失なんだろ?親のこととかも覚えてないのか?」
よかった。あれじゃないなら安心だ。って、そっち?あれ、もしかしてこいつ俺の事心配してくれてる感じ?
「ああ、親のこともわからんし、住んでたとこも全く。覚えてるのは自分の名前くらいだよ。」
ごめんなさーい!母親は寿江で父親は誠でーす!住んでたのは都内のマンションでーす!嘘ついてごめんなさーい!
「そうか、それって、寂しくないか・・・?」
気まずそうに聞いてくるカイン。
寂しい?そういえば俺、今の状態をすんなり受け入れすぎな気がするぞ?といってもあっちの世界じゃもう俺お先真っ暗だったし。しょうがないのか?学校も行かずに親に迷惑かけて。でも親はそんなこと忘れて。ああ、もう親孝行するチャンスはないのか・・・。なんだかんだ言ってご飯もくれたし、優しくいろんなこと教えてくれたし。あ、そういえば小学校の時は誕生日祝ってもらってたっけ。中学校からは仕事が忙しくてなくなったけど・・・。あの頃はまだ学校も楽しかったっけ・・・。
「お、おい!なんで泣いてんだよ!わ、悪かった!」
泣いてる?誰が泣いてるんだ?よくわからないけどわたわたしているカイン。
「何泣かせてんだカインてめええええ!ぶっころすぞ!」
そう叫んでカインに飛び蹴りを食らわせるニーナ。吹っ飛ばされたカインは近くの木を粉砕し、二回目に当たった木で止まった。
「ナツキちゃん大丈夫?あいつに何されたの?ことによってはあいつを土に埋めるわ。」
ニーナが俺の目元をハンカチで拭ってくれる。そこは水で濡れていて、どうやら泣いていたのは俺だということに気づいた。
「いや、大丈夫。おれもななんで泣いてるのかさっぱり。っていうか、泣いてることすら気付かなかった。」
「本当に大丈夫?何かされたらすぐに言うのよ?わかった?」
「あ、あぁ。」
頭をさすりながら起き上がるカインを一度睨みつけ、ニーナは自分のポジションへと戻っていった。それと入れ替わりにカインが俺のとなりへ戻ってくる。
これはとりあえず謝っといた方がいいかな。
「カイン、ごめん。」
「あーいや、こっちこそ悪かったよ。」
そう言って頬を掻くカイン。どうやら気まずくなると頬を掻くのが彼の癖なようだ。
その時、前方に怪しげな気配を感じた。非常に微弱で神経を研ぎ澄まさないとわからない程度であるが、何かいる。
隣にいるカインの袖を引っ張り、言う。
「カイン、何か、いる。」
「何かって?」
「わからない。けど、凶暴ななにか。そんな気配がする。」
「・・・わかった。」
カインはすぐに隊長のアルフォンスのところへ走って行き、そのことを伝えた。すると、アルフォンスは隊の進行を止め、俺のもとへ歩いてきて、俺に言う。
「ナツキ、お前もしかして、魔物の気配がわかるのか?」
「わかりません。けど、何かを感じるんです。ちょっと遠くに、弱くですけど、何かの気配を。」
「なるほどな・・・。もしかしたらお前はスキル持ちかもしれないな。」
スキル!またファンタジー!すごいなこの世界は。
「たまにいるんだ。スキルと呼ばれる特殊能力を持ってる奴が。本当に稀だがな。でだ、おそらくナツキが持ってるのは『索敵』っていうスキルだと思う。」
「それってどうやって使うんですか?」
「そんなもの知らん。もってるやつに聞いてくれ。俺の知り合いにそのスキルを持ってる奴はいない。だからよくわからない。だが、基本的にスキルは意識することで使うことができるらしいぞ。ただ、何もしてない状態で気配を察知したっていうことはおそらくパッシブスキルだろうな。」
「んー、じゃあちょっとわからないなりにやってみます・・・。」
俺は目を閉じてその気配のする方へ意識を向ける。その場所へ自分の意識を飛ばすように。すると、目をとじているにも関わらず、気配を感じる場所の景色が浮かび上がってくる。そこにいたのは30匹ほどのゴブリンの群れであった。
「ひっ!」
咄嗟に目を開いてそこにへたり込んでしまう。
「ナツキ!どうした!?」
心配してカインが俺の背中を支えてくれる。俺は深呼吸して気持ちを落ち着かせる。しかし、俺の見たゴブリンだと思われる生物は人間と同じくらいの身長に緑色の肌。厚い皮下脂肪と牙をのぞかせた口から滴るよだれによって、最早気持ち悪いという感情以外に湧き上がるものはない。
気分が落ち着いたところでアルフォンスに見た情報を伝える。
「前方約200m・・・。ゴブリンの群れ。30匹程度。」
「了解。全員配置に付け!只今より突撃を開始する!ポジションは昨日話した通りだが、カインのみはナツキの護衛だ!行くぞ!」
***
ゴブリンの駆除はあっけなく終わった。相手にばれずに攻撃することで、最初に魔法使いが範囲魔法で攻撃し、残りを全員で突撃するだけであっけなくゴブリンは全滅。俺はカインに守られたままそれをただ呆然と見ているだけだった。
そして今、俺は隊に連れられて街へとやってきた。
町の名前はビレジアン。この世界では相当栄えた街らしい。関所では俺の身分証明ができずひと悶着あったが、アルフォンスのおかげで街に入ることができた。そしてそのままある建物の前まで連れて行かれた。
「ここは・・・・?」
俺のつぶやきにカインが答えてくれる。
「ここは傭兵ギルドだ。他にも冒険者ギルド、商人ギルドなどがある。複数のギルドに登録することができて、俺たちのほとんどが傭兵ギルドと冒険者ギルドを掛け持ちしてる。それで今回は傭兵ギルドに来た依頼を俺たちが担当したんだ。それで今から結果報告しに行くんだ。」
中に入るとちょっとやさぐれたような、気だるい雰囲気のバーみたいな感じの所だった。
アルフォンスが受け付けのような所に行ってそこにいた人と話し、証拠であるゴブリンの耳を渡して戻ってきた。
「依頼完了だ。これが報酬。ニーナ、これを全員分に分けてくれ。」
そう言ってアルフォンスはニーナに金貨の入った袋を渡した。ニーナは袋から金貨を机の上に出し、手際よく分けていく。その間にアルフォンスは俺の方を向いて言った。
「さて、ナツキお前これからどうする?」
そう。ここまでは隊の皆におんぶにだっこでやってこれたが、ここまで来たらもうこの人達にそんな義理はない。ここから先は自分で進まなくてはならない。しかし、
「・・・どうしましょう?」
まだこの世界のことも全然分からない、こんな状態じゃあ絶対その辺で死んでしまう。
「どうしましょうって・・・まあそうだわな。よし、俺に考えがある。」
ニヤリと笑うアルフォンス。少し嫌な予感がするが、俺はもう、彼らに頼ることしかできないため、アルフォンスを信じることにした。
戦闘シーンを飛ばしたのはナツキちゃんが戦わなかったから。
早く頑張って欲しいものです。
っていうかストーリーの進行速度おせえ。