設定サボってたら考えるのに時間がかかった
タイトルは個人的なお話です。
この後、俺を助けてくれた男の仲間らしき人達が来て、俺たちを抱えて自分たちのテントまで運んでくれた。
「そんで、嬢ちゃん。あんた、どこから来た?ってかなんでこんな所にいたんだ?」
俺の目の前でそう問うのは、見た目30歳後半位の男性で、他の人から隊長と呼ばれていた人だ。無精髭と強面のせいで正直ヤのつく人にしか見えず緊張してしまう。
というか、ここでどう答えたら良いのだろうか。素直に、異世界から来たんですよー、なんて言って信じてもらえるわけがないし、かと言って嘘ついた所で恐らくボロが出て怪しまれるのがオチだろう。こういうときの安全策は・・・
「すいません、私もよく分からないんです。気付いたらこの森にいて、あてもなく歩いていたところをあのうさぎに襲われまして、そこを助けて頂いたという具合です。」
いま気付いたけど、自分がしゃべってるとは思えない程声高いな。と言っても前の世界じゃほとんどしゃべってないけどな。まあそんなことはどうでもよくて、嘘はついてないし、大丈夫だろう。
「なるほどなあ。嘘ついてる感じでもねえし。って、どこから来たのかも分かんねえのか?」
「はい、すいません・・・。」
ごめんよおっちゃん。これは嘘だ。でも俺だって死活問題なんだよ!
「そっか。もしかしたら嬢ちゃん、記憶喪失かもな。」
まあそうくるでしょう。
「記憶喪失・・・ですか?」
「ああ。なんかのショックで今までの記憶がなくなっちまうってことがあるらしいんだ。ってことは自分の名前も覚えてなかったりするか?」
「あ、いえ。名前は・・・。」
ここで気づいたが、ここでの名前ってどんな感じにすれば自然なんだろうか?目の前の隊長さんは黒髪だけど、顔の作りは日本人っぽくはなく、ヨーロッパのどっかにいそうな感じの顔。普通に日本語の順番で俺の名前を出してしまうと名前と苗字逆で認識されたりするんじゃないだろうか?だからまず、隊長さんの名前を知りたいな・・・。
考えた俺は苦し紛れにこう言った。
「えと、その、な、名前を人に尋ねるときはまず自分から名乗るのがす、筋ってもんだろー!」
多分今俺の顔真っ赤なんだろうな・・・。隊長さんを指差してそう言うと、隊長さんはぽかんとした顔をしてすぐに表情を崩して言った。
「そうだな。そういやあまだ俺の名前を言ってなかったな。俺の名前はアル。アルフォンス=ギランだ。よろしくな。」
「あ、はい。よろしくお願いします。私は、ナツキ=ミヤカワです。」
「ナツキ=ミヤカワ・・・。変わった名前だな。」
ギク。なんかまずいかな・・・。
「自分の名前は覚えてる・・・と。ほかに覚えてることは?なんでもいいから言ってみろ。」
「すいません・・・。」
「そうか・・・。こりゃ本格的に記憶喪失かもな。どうすっかなー・・・。流石に連れて行くわけにはいかねえし、かといってほっぽり出すわけにもいかねえよな・・・。」
腕を組み、椅子にもたれかかって、何やらぶつぶつと悩んでいる様子のアルさん。
「あの、アルさん達はどうしてこの森に来たんですか?」
「ん?ああ、俺たちはこの森に出たっていう、ゴブリンの駆除をしに来たんだ。」
え、ゴブリン?ちょっとまって。ゴブリンっていろんなファンタジー物でよく出てくる、魔物だよな。まって、この世界、そんなんがいるの?嘘でしょ?
「おーい嬢ちゃん、どうしたー?顔色が悪いぞー?あ、もしかしてなんか思い出したのか?」
「あ、いえ、そういうわけではなく・・・。えと、ゴブリンって魔物・・・ですか?」
「お、ゴブリンのことは覚えてるのか。そうだ。かなり下級の魔物で基本的には森の中にいるんだが、人里に近いこの森に出たということは、近くの街に降りてきて被害がでるってことで流石に駆除しないとな。ちなみに嬢ちゃんが襲われたのも魔物で、ストーンラビットだ。あいつはゴブリンよりも更にランクは下だな。」
なるほど。つまり、この世界は所謂、ファンタジーの世界ってことか。あのクソ女神がいってたことが若干だがわかってきた。やらなきゃやられるこの世界なら、やるしかねえもんな。
「でだ、嬢ちゃん。俺たちはこれからそのゴブリンを駆除しに行くんだが、嬢ちゃんはどうしたい?このまま西に向かって歩けば6時間くらいで森を抜けて街に出られるだろうが、その前に関所があって多分嬢ちゃんは通してもらえねえだろうし、森の中でまた魔物に会うかもしれなくて危険だ。だから、俺たちと一緒についてくることをおすすめするんだが、魔物と戦うだけあって危険だ。必ずしも俺たちが嬢ちゃんを守れるとは限らねえ。で、最後には嬢ちゃんに自分で決めてもらおうと思う。どうしたい。」
そうだなー。まず、西って言われてもどっちかわかんないし、また襲われるのはちと辛い。そもそも長時間歩ける気がしない。引きこもり舐めんな。もうこれ答えなんて一択しかないようなもんだろ。
「皆さんと一緒に行きたいです。お願いします、連れて行ってください。」
俺と隊長さんを隔てる机に頭をぶつけるくらいまで頭を下げる。
「まあそうだろうな。よし、質問はここまでだ。嬢ちゃん体の調子はどうだい?大丈夫なら今日はもう休みな。」
「ありがとう、ございます。」
お言葉に甘えてそうさせてもらうことにしよう。あ、そういえばまだ助けてくれたやつにお礼言ってない・・・。まあ明日でいいか。
***
次の日の朝。俺が目を覚ますと、テントの中で一人だった。
(そういやなんか変な世界に来ちまったんだったなー・・・。)
テントの外に出ると、女性陣が食事の準備をしていた。
「あ、おはようナツキちゃーん。良く眠れた?」
満面の笑顔でそう聞いてくるのはニーナ。ふわふわの金髪と、大きく柔らかそうなお○ぱいが特徴的な、とにかく柔らかい印象の女性である。
「おはようございます、ニーナさん。はい、ぐっすり眠れました。」
「もーそんなに固くならなくてもいいってー。ニーナで良いよー。あ、体も大丈夫?」
「あーじゃあおいおいということで・・・。体もしっかり治りました!」
「よかったー。アバラ数本折れてたから治すの大変だったよー。」
「え、ニーナさんが治してくれたんですか?でも、骨折がそんな、一日で治るなんて・・・。」
「えー?だって治癒魔法だもの。」
治癒魔法・・・・だと!?まさか魔物だけでなく、魔法もあるとは・・・!さすがファンタジー!ファンタジー万歳!
「魔法があるんですか!?魔法ってどうやって使うんですか!?」
「あ、そういえばナツキちゃん、記憶喪失だったんだっけ?教えて欲しいのー?いいよー。でも朝ごはん食べてからね?」
やったー!魔法!やっぱ魔法といえば男のロマンだよな!今は男じゃないけど!魔法ひゃっほー!
「じゃ、じゃあ朝ごはん作るの手伝います!」
ニーナが作業している机の上に身を乗り出し言う。
「ふふふ、ありがとう。じゃあまずは手と顔を洗ってきてね。あと、着替えて、準備してからね?」
「はい、すぐに行ってきます!」
ニーナに向かって敬礼をし、準備をしに駆け出す俺。いやー、なんだかんだでちょっと楽しくなってきたぞ!
どうしても最初に世界観というか、設定というか、いろいろ説明が必要になってきて、話が進まない・・・。早くナツキちゃん戦わせたいよう。