ダンジョン進んでたら叱られた
超絶!お久しぶりです。
書きたくなったら書く!
それが自分が楽しくやるための秘訣ですよね。
それから俺たちはダンジョンの奥へと進んでいった。時折グラスホッパーや、セミのデカいの、二足歩行のカブトムシみたいな魔物などと出会ったが、連携で速やかに撃破していく。
「カイン、だいぶ動きが良くなったじゃない。」
「うるさいな。こっちはもう朝からへとへとなんだよ。無駄な体力使わせんな。」
ニーナとカインが言い合いをしながらも魔物を撃破していく。どうやらこのチームの中で俺が入るまではカインが最年少だったらしい。腕を買われて入ったはいいものの、皆が規格外すぎてついていくので精一杯のようだ。
「ほら、カインそっち行ったわよ。」
「あ、こら! そいつは絶対お前の獲物だろ!」
「うるっさいわねえ。あんまり頑張るとマナ切れ起こしちゃうでしょ。肝心な時に回復してあげられなくなっちゃうじゃない。」
お互いにうるさいうるさいと言い合いながら進んでいくと、地下へ続くような階段を見つけた。
「よし、ここで下の階に降りるぞ。地下に行くほど敵は強くなるからな。心しておけよ。」
そして地下2階に降りる。次も密林の階で、ここでも空が見える。地下に降りているはずなのに上に天井がないというのが違和感がありすぎて気持ち悪い。
地下2階で出てくる魔物も1階と変わらずであった。このチームの前では相手にならず、次々と蹴散らされる。
「氷槍!」
「魔法矢~」
ニーナやケビンの攻撃も的確で、一撃で敵を屠っていく。そんな調子で奥まで進んでいき、どんどん下へと降りていく。そして俺たちは地下5階までたどり着いた。そこまでずっと密林型のダンジョンであり、結構広かったため、もう日が暮れ始めていた。っていうかダンジョンの中も日が暮れたりするんだな・・・。
「よし、今日はここで一旦休もう。明日は6階に行くことになるしな。」
隊長の掛け声で俺たちはキャンプの準備を始めた。テントを建てたり、ご飯の準備をしたりする。水は近くを流れていた湧き水から拝借した。ダンジョンの中にも水ってあるんだな・・・。なんか俺の思っているダンジョンからかなりかけ離れている気がする。
「いやー、やっぱり進むにつれて少しずつ敵も強くなってきますねー。」
ニーナが言いながらパンを頬張る。とか言いつつも、俺の目には地下1階と同じように一撃で倒しているようにしか見えなかったが・・・。
俺が不思議そうな顔をしていると、隊長が苦笑いしながら俺に話しかける。
「これでも結構苦戦し始めてるんだよ。自分で言うのもなんだが、俺たちのチームはこの国でも屈指のチームだ。通常の冒険者だったら地下3階が関の山だろうな。同じ魔物でもやはり個体差があって、奥に進めば進むほど強くなってくる。これは前にも言ったが、ダンジョンの奥に進めば進むほどマナが濃くなっていくためだと言われている。弱い魔物はあまりに濃いマナに耐えられないそうだ。」
隊長が優しい目で俺に教えてくれた。やっぱり隊長はなんだかんだめちゃくちゃ面倒見のいい性格のようだ。その向こうからニーナが顔をひょっこりと出して俺に話しかける。
「でも実は、その説もまだはっきりとしてなくて、確かにマナが濃いことはわかってるんだけど、もしそうだとしたら、私たちもマナを周りから吸収してるわけだし、濃いマナに耐えられないはずなんだけどね。今一番奥まで行った人で地下30階と言われているわ。そこまで人間は耐えられるって言われたらおしまいなんだけど・・・。」
なるほど、やはりまだまだ分かっていないことが多いんだな。なんかそれってすごい危険な感じがするんだけど。やはり財宝の誘惑には勝てないってことか。と言ってもここまで一個も財宝なんて見つかってない。なんでもそういうのは浅い層だと狩りつくされてて深層に行かないと見つからないらしい。
その日は交代で見張り番をしながら寝ることになり、俺はニーナと一緒に番をすることになった。順番は一番最初になり、二人で焚火を囲んで見張りをする。火の明かりに照らされてニーナの顔が仄かに赤くなり、程よく色気を醸し出す。ニーナはしゃべるとあれだけど、静かにしていればすごい美人である。少しドキドキしながら周囲に意識を向ける。良くわからない索敵というスキルが使えるため、見張りとして俺は有能だと隊長から言われたが、今のところ特に何も見つからない。
「ナツキちゃんさ、最初結構あっさり私たちについてきたけど、怪しい集団とか思わなかったの?」
ふと、ニーナが火を見つめながら話しかけてきた。突然の質問に俺が困惑していると、ニーナは言葉をつなげた。
「いや、確かにカインがナツキちゃんを助けたのは確かだけど、言ってしまえば私たちは山の中を集団で移動していた武装集団なわけで、もしかしたら野盗とかだったかもしれないよね?でも私たちの言葉を信じてあっさりとついてきた・・・。記憶がないからとは言え、少し不用心すぎると思うわ。」
ニーナが真剣な表情で俺を見据える。怒られているような気がして少し委縮してしまう。恐る恐るニーナの顔をもう一度見ると、さっきと同じ眼で俺を見つめていた。それは怒っているのではなく、心配しているときの目だった。
「ニーナ・・・・。」
「ナツキちゃん。あなたの元いた世界がどんな世界かは分からないけど、ここでは人の命が、人としての権利が、尊厳が、ものすごく軽いの。比較したわけじゃないから主観だけど…。まだナツキちゃんは自分を自分で守れるほど強くない。強くなれるかは人それぞれだから、せめて身を守る術だけは身につけてほしいの。」
ニーナはまっすぐ俺のことを見つめる。本当に心配されていることが分かった。だけど、なぜだろう?俺はつい最近このチームに入ったばかりで、皆のために何かできた訳じゃないどころか、皆に頼りっぱないしでただのお荷物でしかないのに。
不安げな目でニーナを見ると、優しく微笑んで言った。
「このチームはね、入ったら皆家族なの。だからね、皆が皆のことが大事で、皆のために頑張るの。ダメな子を叱るのも家族の仕事でしょ?」
ウィンク付きのニーナの言葉。俺やっぱりダメな子なのね…。でも、家族か…。もう元の世界では俺のことは忘れられてしまってるし、親も俺のことは覚えてないはず。でも、俺は何もしてあげられてない。向こうでは上手に家族ができなかった。ここでもまだまだ何もできてないけど、もう一度家族をできるように頑張ってみようかな。
俺の静かな決意と共に、夜風が二人の間を通りすぎた。




