7月7日
7月7日、七夕当日。やはり俺はバイトに来ていた。詩織を気にしながら、しかし、サークルのパーティーに行くことに少し妬いていたので、気にしないフリをした。バイト先のコンビニに来る人々の中で、やたらとカップルが気になった。どのカップルも楽しそうに笑っている。俺は営業スマイルを作るものの、内心では悪態を付いていた。
「そういえば今日は七夕やな」
バイト仲間が何気なく口にした。
「星野君は彼女と会わんの?」
「バイトやもん、会えへんやろ」
「そらそやな」
自分自身に言っている気がして、何となく落ち込んで来た。
「じゃ、かんぱーい!!」
サークルのメンバーが20人くらい集まって、パーティーが始まった。つまりは飲み会なのだが。
「詩織、今年は来たんやね!毎年七夕はNGやったのに」
「うん、折角やから来たんよ」
「あ!もしかして彼氏とケンカしたんとちゃう?」
お酒を数杯飲んで酔いかけている友人が、やたらと絡んで来た。顔が赤い。
「ちょっと……な」
私は力なく笑いながら言った。
「男性諸君、よぉく聞きぃ!!詩織、彼氏とケンカ中らしいねん!今がチャンスやでぇ!!」
「ちょ……何ゆうてんねん!」
「いいやん、いいやん。たまには彼氏以外にも目を向けんとな」
酔っ払った友人はフラフラと座った。それを介抱しながら、私はブツブツと文句を言った。少し図星だと思ったのだ。それから後、数人の男子と話したが、やっぱり達彦が気になって仕方がなかった。
「星野君、ちょっと早いけど今日はもう上がってええよ。予定があったんやろ?」
店長がポンッと背中を叩いた。俺ははぁ、と頷いて、有り難く先に帰らせて貰った。携帯を見ながら、詩織に電話を掛けようかどうかを迷っていた。ふと空を見ると、今日は雲もなく、星がよく見えた。
「皮肉やなぁ」
溜め息混じりに呟いてみる。誰も聞いている訳ではないのに。
「何が?」
「え!?」
驚いて振り返ってみると、そこには詩織がいた。走って来たのか、それとも酔ったのか、顔が少し赤い。
「なんでおるん」
「達彦こそ」
「俺はただ家に帰っとるだけや」
「アンタの家は反対やで」
「はぁ?」
よく考えてみると、確かに俺の家は反対だった。無意識のうちに詩織の家の方向へ向かっていた。
「達彦、ウチに会いたかったんと違う?」
ニヒヒと笑う詩織にでこピンをした。
「お前こそ、何でここにおるん」
「達彦、どうしてるかなぁって。コンビニ行こうと思ってな」
ブラブラとあちこちを歩き回る詩織は、スッと空を見上げた。そしてニコッと笑う。
「うわぁ、天の川がよぉ見えるわぁ。ホラ、達彦も見てみぃ」
「知っとる」
「ええやん。ホラ来て!」
俺は渋々詩織に近付いて行った。そして並んで夜空に浮かぶ天の川を見た。
「キレイやなぁ」
「まぁな」
「……達彦」
「なんや」
「一緒に天の川見れて良かった」
詩織はそれだけ言って、クルリと向き直って歩く始めた。少し笑っているように見えた。俺はそれにユックリと付いて行く。
「詩織」
「……」
俺はそっと詩織の手を握った。詩織はチラリと俺の顔を見た。多分顔は真っ赤だったので、俺は顔を背けた。
「達彦」
「なんや」
「大好きやで」
「……アホちゃうか」
俺達は空を見上げながら、のんびりと帰って行った。
「彦星と織姫は無事会えたんかなぁ」
玉木は眞美の部屋でテレビを見ながら言った。眞美は雑誌を読みながら、フッと笑った。
「会えたんちゃう?」
「アイツら、ホンマにアホやなぁ」
玉木はおもしろおかしそうに言った。顔が笑っている。
「それがあの二人や」
玉木と眞美はお互いに顔を見合わせて笑った。




