side:織姫
達彦ほどのアホはいないと思う。私が毎年毎年、どれだけアピールして来たかも忘れて、七夕という大切な日にバイトを入れてしまった。
「眞美ぃ〜!!」
「はいはい。どないしたん?また星野君にいじめられたん?」
「慰めてぇえ!」
達彦と何かあったら大抵眞美に相談していた。眞美の彼氏の玉木君は達彦の親友なのだ。
「やっぱりウチら、あかんのかなぁ。ちっとも上手くいかへん」
「誰かてそんなもんやて」
「そうかなぁ」
はぁ、と大きく溜め息を付いたら、眞美に小突かれた。
今年で私達は付き合って三度目の七夕を迎えることになる。一度目の七夕は二人で河川敷に行って、寝転がって天の川を見た。二度目は雨で、達彦の家でパーティーを開いた。雨で彦星と織姫は会えないけど、ウチらは会えるからラッキーだね、なんて言って笑った。それが原因かもしれない。今年は私達が会えない。
「達彦、ウチ七夕の夜、遊びに行く事にしたから」
「ほぉ」
達彦は特に大した反応をせず、足の爪を切り続けている。私はムッとなって続けた。
「サークルの子らと行くねん。かっこええ男子もおるんよ」
チロリと達彦を見るが、全く焦る様子もない。
「アホッ!!」
私は近くにあったクッションを取って、それを達彦に向かって投げた。クッションはきれいに彼に当たった。
「なにすんねん!」
「達彦が冷たいからや!!」
「はぁ?」
「達彦はウチがかっこいい男子と仲良うしてても構わんのやろ!!」
私は涙が出てきそうなのを必死に堪えて、部屋から出て行った。達彦が追いかけて来るかもと思い、暫く立ち止まっていたが、結局彼は来なかった。
「やっぱウチ、嫌やぁ」
「全く、しゃあないなぁ。詩織はいっつもそれや。星野君が気に入らんならさっさと別れてまえばええのに」
「できん。ウチはただ達彦と七夕を過ごしたいだけやのに!バイト休む気ないんやもん、アイツ」
「どっちもアホやわ」
困ったような、そして優しい顔で眞美は背中を撫でてくれた。私は眞美に泣き付いた。そんな私を眞美はいつも優しく受け入れてくれた。
「で?七夕はホンマにサークルに行くん?」
「うん……一応。だって悔しいんやもん」
「そやな。ハメ外すんは止めえよ」
私はうん、と小さく頷いた。




