プロローグ
初めて書いた作品です。シリーズものです。
昔書いたものを改訂したものですが楽しんでいただけたら光栄です。
暗闇に包まれた研究所。外界から完全に接触を断たれた空間で一人の男が椅子に座りパソコンを眺めていた。
モニターには顔写真がリストアップされている。百枚ほどの写真の上には名前、それと何かが書いてある。
「こんなものか……」
一頻り顔写真を確認したのか、男がパソコンから手を放す。その時、革靴が廊下を蹴る音が聞こえる。その音を聞き、男は暗い研究室で唯一のドアがある方向を見つめた。
「まだ、ここにいたのですか……?」
ドアの開く音とともに室内に響く無感動な声。若干高いその声の主は男か女かはわからない。
「何だ君か……」
男は初めから来るのがわかっていたように軽い口調で言った。
「何だとは何ですか……」
その人物無駄のない動きで椅子に座る男の前に立ち、腕を組んだままで男を睨んだ。
「もう選抜は終わったはずですが」
「確かに終わった。だが選抜したのは私ではない、部下たちだ」
「『かつての』が抜けてますよ博士」
そう言われて博士と呼ばれた男は声高に笑う。
「そういえばそうだな」
「あなたがいなくても研究所は機能します。それにそれほど時期を置かずに計画は始動します」
「おやおや、厳しいことを言ってくれるじゃないか」
男は立ち上がりドアに向けて歩き出す。
「あなたは第一次の計画が終わった後に死んだことになっています。あまり動かれると後々面倒です」
「そう心配せずとも今はまだ動かないさ。BOX計画は私が直接関わらずとも勝手に進むさ。私の望むとおりにね…」
「………あなたは神のつもりなのですか?」
その言葉に男はドアの前で立ち止まる。
「神を信じているかい、リリエス?」
「信じてはいませんよ。しかし一概には否定しません。私がいるように神もいるでしょう」
「く、くく、はははは……」
リリエスの言葉に男は笑う。楽しそうに、滑稽そうに、バカにしたように。
「神などいないさリリエス。いるのは神のような存在だけさ、人間にしろその他のナニカにしろね」
「一次計画の時もそう言ってましたよね。結局あなたは何がしたいのですか…?」
男はその声を聞かずにドアを開け外に出てしまう。その姿を見てリリエスはため息をつく。
ついたままのパソコンのモニターに映るのはBOX計画の被験者、被害者と言った方が良いかもしれない。リリエス軽く目を通しパソコンを閉じ呟く。
「さて、どうなるのでしょうね……」
「私は神になりたいわけじゃない」
男は暗闇を歩きながら誰に言うでもなく言い放った。
「この世に必要なのは神でも天使でも悪魔でもない………」
完璧な人間だ
それ言葉を最後にもう声は聞こえなくなった。