第一章7 『解凍』
「コォノォ、、クソアマァアアアア!!!」
長い拘束から解かれた金髪の美女プリメラは鼓膜を突き破かんほどの声を放ち、体から溢れ出る魔力は地響きすら起こしていた。その怒りは氷漬けにされ冷えていた体が瞬間に沸騰し熱を帯び、己を行動不能にした相手を抹殺するべく動き出した。
同じく解凍された白髪の英雄騎士は、自分の命と同行した兵の命も厭わず放った封印魔法の反動で動けずにいた。プリメラが音速にも迫る速さで白髪の英雄騎士の首をへし折らんと今に首に手をかける直前、腹部に衝撃が走った。英雄光帝ガウルの右足が腹にめり込んでいた。ガウルは、そのまま右脚を振り抜き、プリメラを彼方に吹き飛ばした。
「動けますか、ウィノさん?」
瞬間の出来事で驚き、その大きな薄水色の眼をぱちくりさせていたが、瞬時に状況を把握し魔力の回復に専念したのが、第五英雄騎士の氷女帝ウィノ・シトラス。
「助かりましたガウルさん。少し時間を頂ければ」
吹き飛ばされたプリメラはしばらく浮遊し、鉱山地帯の山に大きな音を立て衝突し、砕けた岩の下敷きになった。すぐさま体制を立て直し吹き飛んできた方向に先ほどと同じ速度で、いや、それよりも速く、己を氷漬けにしたもの、己を足蹴にしたものを殺さんと躍動した。
「おいっ!!アネさんっ!!落ち着けっ!!」
音速でガウルに飛びつこうとするプリメラの動きがピタッと止まった。
「あ゙ぁん?てめぇレオルか、さっさとこれどけろ。じゃねぇとこいつらを殺したあとお前を殺す」
「封印解除の恩人に何て言い草だ。少し動けてるしよ。相手は英雄光帝さんだ!少し冷静になれ!!」
額に青筋を浮かばせながらレオルは、プリメラに冷静になる時間を作った。
「さすがは、ヴェガットの用心棒だな。プリメラだけでなく俺達の動きも止めるとは」
「お褒めに預かれて光栄だ竜帝さん。感心してくれたところ悪いんだけど、あそこの怒り狂ってるドラゴンまでは届かねぇんだわ」
「知ったことか」
上空に昇って行った龍は、その巨大な顎を開け膨大な魔力を溜めていた。敵味方が入り混じり全員が動けないでいる状況であの光弾を誰が防ぐかなど話し合いができる訳でもなく。防ごうと動き出したものの隙を見て背後から殺されるかも知れない、しかし防がなければ何名か除いては全員塵となるだろう。時間が惜しい中で遠くから声が聞こえてきた。
「レオルさん!!手貸してください!!少しでもあいつに近づけてください!!」
ニックが馬達を避難させてから全力疾走で戻ってきていた。
「よっしゃあ!!飛び乗れ坊主!!」
両手を前に組み足場を作ったレオルの手に足をかけたニック。ニックを乗せたレオルは龍目掛け思い切りニックを放りだした。
「おっらぁあ!!!あいつは任したぞ!!」
「はいッ!!!」
額に手をかざし、ぐんぐんと距離を伸ばしていくニックを見届けながらレオルは呟く。
「良く飛んだなぁ。続きを押っ始めるか竜帝さん」
(えげつねぇくらい魔力消費しちまったな、ちきしょう)
「なんだ、もうスタミナ切れか?リヒフェルスト王国が第三英雄騎士、ライオス・アレキサンダー参る」
「そんなこたぁねぇよ。ヴェガットの始末屋、レオル・バーン・デイモンドだ」
口上にレオルも乗っかり両者は構える。




