第一章4 『白銀の世界』
「ここから先が『バルトローム』だ!気引き締めろよぉ坊主」
ニックとレオルは馬を三週間走らせ目的地であるバルトロームの鉱山地帯の一部が見渡せる高台にいた。バルトロームは溶岩地帯と鉱山地帯と森林地帯の三つに大きく分かれている。鉱山地帯は、見渡す限りが灰色一色で大から小の山々が無数に広がっている。そしてその山の中に雲を突き抜けるほどに大きな白い山があり、遠くからでもその雄大さが伝わってくる。
「すげぇ」
ニックは思わず感嘆の声がでる。
「半端じゃねぇな。あのドデケェ山が『リュウソウザン』か」
「あれがリュウソウザン」
「別名『龍の墓標』。元々は原初の龍の墓場があったとされている。何でか知らねぇが死期を悟った龍や魔獣がその墓場で最後を迎える。あの山はその龍と魔獣の骨が幾重にも積み重なってできてる」
「あれ全部が骨。信じられない」
「だが現実だ、一体何万年かかったんだろうな」
想像もできない長い年月が作り出したリュウソウザンの壮厳さに二人は息を呑む。
「ちなみにプリメラさんの探索と霊器の探索はどっちを優先するんですか?」
「どっちも同時に行う!そのために鉱山地帯から攻める、理由は三つだ」
レオルは指を三本ニックの方に向け立てる。
「まず一つ目は、霊器が一番見つかる可能性が高いからだ。霊器はそこら辺に落ちてたりしない、基本的に洞窟の最深部やドデケェ大樹の中や山の頂上とかにある。理由は不明だからつっかかってくんなよ?この鉱山地帯には山がかなりある。そしてここから見えてるあのリュウソウザンが一つ目の理由。そして、二つ目の理由はほぼ百パーセントの確率でプリメラが鉱山地帯から攻略してるはずだからだ」
「なんで言いきれるんですか?」
「あいつは頭がおかしいからだ」
「頭がおかしい?」
頭がおかしいと鉱山地帯から攻略するのをイコールで結びつけられないニックは困惑する。
「鉱山地帯はな、他の溶岩地帯と森林地帯に比べて魔獣と龍のレベルが違う。それも含めて霊器がある可能性が高いんだが、プリメラの場合は霊器は後回しで、その化物級の魔獣と龍と遊ぶために鉱山地帯から入る。これは間違いない!言い切れる!なぜならあいつは頭がおかしいからだ!」
レオルはため息をこぼして、タバコに火をつけ始めた。対するニックは化物級の魔獣と龍と聞いて、ハジテッド村での魔獣を思い出す。あのクラスもしくはあれ以上の化物を想像して絶望する。しかもそれと遊ぶためにわざわざ鉱山地帯に入るプリメラの人間性にも絶望する。
「まぁどちらにしろ、霊器がある可能性が一番高いからいいんだけどよ。それも込みでプリメラに今回の任務が任されたからな。そして最後の三つ目の理由だが、それは、、、」
「そ、それは、、?」
「坊主の修行にもってこいだからだ!!」
レオルはタバコを挟んだ人差し指と中指でニックを指差す。
「しゅ、修行、、、」
化物級の魔獣と龍がいても、レオルさんがいるから大丈夫と思っていた。レオルさんも大船に乗った気持ちでいろと言ってたし安心していた、気楽に旅ができると思っていた。油断していた。
「坊主は、そこら辺の兵士とかに比べりゃ強い。俺が割と本気で床に叩きつけてもほぼノーダメだったしな。だがまだまだ弱い!銃に頼りすぎだ!何で自分が目がいいか知らないだろ?」
「は、はい」
「銃撃つときに目凝らすだろ?そのせいだ!坊主から魔力は全然感じねぇが身体能力の方は見込みがある」
たしかに目は凝らすが、それでここまで目が良くなるものなのか。
「身体能力も高いが銃に頼りすぎで、全然力が伸びてねぇ!だから今回は素手で魔獣と龍と戦ってもらう!」
「素手で!!!」
「お前には素質がある。ぶっちゃけそのままだと雑魚過ぎてプリメラに会ったら殺されるかもしんねーし、マスターにも頼まれたしな。俺も手助けしてやるから安心しろ!ほら行くぞ!!まずはあのリュウソウザンだ」
レオルはニックの肩を叩いて馬を歩かせ始めた。屋敷でヒリタスさんが淹れたコーヒーを飲みながら歴史書を読んでた時がいかに幸せだったか実感するニックであった。正直、霊器とかどうでもいいが、ヴェルナドットさんにも恩がある。そして理由は分からないが腕が治るかもしれない。ニックは僅かな希望を胸に、生きて屋敷に帰ると覚悟を決める。
「キャシィ行くぞ!」
「何だお前、キャシィってセンスねぇな!もっとイカした名前つけろ!」
レオルは涙目になりながら呵呵大笑する。
「うっうるせぇーー!そういうレオルさんの馬の名前は何なんですか!!!」
「ふん!俺の馬の名前はデビルフェニックスだ!!」
「うわっ、馬なのにフェニックスって。馬が可哀想」
「なんだとお、かっけぇだろうがよ」
「いいえ、キャシィのが全然センスあります!レオルさんの言ってることなんか気にしちゃダメだからなキャシィ」
「お互い感性が違うみたいだな。デビルフェニックスお前全然可哀想じゃないからな」
馬が人の言葉を理解できなことをいいことに、好き勝手やる二人であった。




