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VAGRANT  作者: じょう
第ニ章 ゴホード砂漠
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第二章5 『王様』


 ―――今朝のプリメラ発火事件の後、ニックとレオルは、黄金宮殿にきていた。


「中も金ピカなんですね」


「いやほんとにどうなってんだよ。頭が痛くなってくるぜ。てか、あいつホントに王様らしいな殺さなくて良かったぜ」


 外装も内装も黄金に染まっている宮殿にニックとレオルは目が点になっていた。宮殿の外は石造りの町が広がっており、宮殿に来る道で通ってきたが人も多く賑わっていた。裕福と呼べる者はいなかったが、どこか皆、穏やかな表情をしていた。


「こちらの扉の奥にカーム王がお待ちしております」


 案内人の女性が大きな扉を開ける。


「きたか、ニック」


「盗賊さん!やっほー」


「だから盗賊じゃねぇって!」


 大きな玉座にカームは座っていた。その隣にも少し小さめの玉座があるが、足が床に届いていないリーナが足をバタバタさせながら座っていた。


「話があるって聞いてきたが、どんな用件だ」


「此度は、君達に大いに助けられた。その礼がしたくてな。改めて自己紹介しよう。私がこのゴホード王国の王カーム・ウネルマ。そして隣にいるのが私の妹の」


「リーナ・ウネルマだよ!よろしくねーー!!」


 兄妹でテンション感が全く違う挨拶にタジタジのレオルが口を開く。


「俺はベムド王国でジェハード領の領主をしているヴェガット家の用心棒、レオル・バーン・デイモンドだ」


 レオルはニックに目を配り、顎をしゃくる。


「俺もヴェガット家で用心棒をしているニック・レガードナーだ」


 ニックの口上は辿々しかったが、どこか誇らしげな表情をしていた。


「レオルにニック、わざわざ足を運んでもらってすまないな。ジークを倒した女傑は見当たらないが来ておらんのか?」


 『ワシは、プリメラ・キーラナイトだ』


 姿形はどこにもないがプリメラの声が宮殿に響き渡る。


「女傑の声が聞こえたのだが、気のせいか?」


「お兄ちゃん!あそこにいるよ!」


 リーナが指を指す方向に目を向けるとニックの影から姿を現していた。太陽の下を歩けなくなったプリメラは、ニックの影に潜り込んでいた。


「そこにいたか、体の具合はどうだ?」


「どうもくそも見たまんまだよ」


 ニックの影から飛び出たプリメラは少女の見た目だが中身は変わっていない。


「そうか、改めて礼を言う。感謝する」


 カームとリーナは、玉座から立ち深く頭を下げた。


「そういうのはいらねぇよ、賊の霊器ももらったしな。話なら影の中で聞いてっから勝手に進めといてくれ」


 そう言って、プリメラはニックの影に潜り込んだ。

 

「そんな訳だ王様。まさか、ありがとうだけって訳じゃねぇよな」


 レオルは、にんまりと下心満載で問い返す。


「そうだな、だが見ての通り我が国には人も物資もあまりない。そして、私の霊器も渡せん、国の宝だからな。ここは一つ同盟を組みたいと思っているのだがどうだろうか」


「同盟か。同盟って言っても、俺らにメリットがあんまりねぇような気がするんだが」


 レオルは顎に手をやり悩む。


「プリメラが永続的な魔法に犯されてしまったようだな」


「あー、術者を殺さねぇとたぶん解けないな」


「リーナはその術者の転移先が分かっている。その術者を殺す一助をすると言うのはどうだ?そして、霊器を見つけた際は、そちらに譲渡する」


「なるほどな、確かに嬢ちゃんの能力は半端じゃねぇし、霊器もくれるってんなら組まない理由はない。んでこっちからは、何を求めるんだ」


 同盟は、お互いに利がなければ成立しない。片方だけにしか得がなければそれは最早属国だ。そして、これだけの好条件の見返りに王は何を求めるのか。


「窮地に陥った時に力を貸してほしい。今回は私達だけでどうにかなる相手ではなかった。五体満足で無事でいることが奇跡に近い。そしてこちらからは、リーナと私が君達の力になろう」


 レオルは思案して結論を出す。


「それなら大いにありだ。だが俺だけじゃ決めかねる、ボスに聞かねえとな。一緒に会ってくれ」


「前向きな検討感謝する。私は、ここから離れる事はできん。リーナ頼めるか」


「私は全然大丈夫だよーー」


「苦労ばかりかけてすまないな。レオル、我が妹が同行する。彼女は私の代理人だ、よろしく頼む」


「りょーかいだ王様。姉さんどうですか?」


 『問題ねぇー』


「坊主はどうだ?」


「俺も全然大丈夫です」


 カームとレオルの話を静かに聞いていたニックとプリメラが了承する。カームとリーナが仲間になるかもという期待がニックを少し浮かれ顔にさせている。


「てな、感じだ。いつ出発する王様?」


「リーナ、どれくらいで準備できる?」


「一時間もあれば行けるよー」 


「では、正午に出発だ」


 カームはそう言い、宮殿での話し合いが終わった。


                  △▼△▼△▼△

  


 ――――――宮殿の外の大広場で地図を見ながらリーナが呟く。


「ベムド王国結構遠いねー!大体の場所までしか行けないから、そこら辺はよろしく。じゃあ、お兄ちゃん行ってくるねーー!!」


 リーナはカームに手を振りながら、大きな手下げ袋三つ程持って、魔法陣を展開する。


「気をつけて行くんだぞ、リーナ。何かあれば知らせる」


「りょーかいだよー!!同盟正式に組めたら一旦戻るね」


「んじゃ、またな王様!たぶん同盟は問題なく組めると思うぜ」


 レオルは薄れいく体でサムズアップをする。


「吉報を待っている。ニック!リーナを頼んでもいいか」


「任してください!王様!!」


「頼りにしている。これを持っていけ」


 カームはニックに金の指輪を渡した。


「こんな高そうなもん貰っていいんですか?」


「構わん持っていけ。もしもの時、力になる」


「なに高そうなもん貰ってんだ坊主!王様!俺にはないのか!」


 横目でやり取りを見ていたレオルが喚き立てる。


「レオルさん、ちょっとがめついですよ?」


「なにー、じゃあそれ俺によこせ!!」


「無理でーす」


「ちょっと二人とも集中してるから、静かにしてよっ!!!」


 三人のやり取りを微笑みながらカームは見守る。そして、慌ただしくしながら三人と影にいるプリメラはベムド王国へ、転移して行く。

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