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VAGRANT  作者: じょう
第一章 バルトローム
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第一章11 『帰還』


「ただいまーーー」


 ニックとレオルは、三週間の帰路を経て、ヴェガット家の屋敷の扉を開け帰還を知らせる。すると奥からヒリタスが出迎えにきた。


「ほっほっほっ、お二人ともご無事で。おかえりなさいませ、レオル様、ニックおぼっちゃん」


「ヒリタスさん!!ただいま!ヒリタスさんがくれた銃めっちゃ凄かったです!!!俺、滅茶苦茶デカい龍と戦ったんですよ!!英雄騎士も三人いて!!それでレオルさんが俺のこと空までぶん投げて銃撃って、それでそれで」


 ニックの癒しであるヒリタスとの感動の再会でニックは旅でおきた出来事を興奮気味に捲し立てる。


「ほっほっほっ、お話しは後でゆっくりとお聞きしますね。すでに、お嬢様とプリメラ様はご帰還なされておりますので」


「えっ!!もう帰ってきてるんですか!!」


「まっ、マスターとプリメラの姉さんなら全然有り得る話だ。まったくどうなってやがんだか」


 ニックとは対照的に冷静なレオルは続ける。


「ヒリタスさん、もう会議室に向かった方がいいか?」


「わたくしの方からお声がけしておきますので、お二人はまず湯船にお浸かりなさいませ、少し匂いますゆえ」


「そ、それもそうだなヒリタスさん。坊主!一緒にひとっ風呂浴びるか??」


 相変わらずのヒリタスの容赦のなさにタジタジになるレオルだが、少し無神経に見える中にある優しさがヒリタスの良さであるとしっかりと理解していた。


「俺は、キャシィとデビルフェニックスにブラッシングしてから入ります」


「おっ、気が利くじゃねぇか!ヒリタスさん、風呂上がったらキンキンに冷えたビーラを頼むよ!」


「かしこまりました。ではまた後ほど」


「ヒリタスさん、ブラシってどこにありましたっけ」


「あちらの小屋にありますよ。お嬢様とプリメラ様に声がけしましたら私も手伝いに行きますね」


「ありがとうございますヒリタスさん」


                              △▼△▼△▼


「久々の湯船はやっぱり最高だあ」


 風呂から上がり、のぼせ気味のニックは旅の疲れも相まって大広間のソファでグッタリしていた。


「おう坊主!上がったか!!お前もビーラ呑むか?」


 先に入浴を済ませていたレオルが片手にビーラの入ったグラスを持ちながら機嫌良さげに大広間に入ってきた。


「レオルさん、お疲れ様です。後少ししたら会議があるっぽいんで今は辞めときます。ヴェルナドットさんとプリメラ先輩に殺されそうなんで」


「ガハハ!!違ぇねー!!俺もこれくらいにしとくか」


「ほっほっほっ、そうですよレオル様。すでにお嬢様の部屋にて、お嬢様とプリメラ様がお待ちしております。お向い下さいませ」


 遅れて入ってきたヒリタスが部屋に向かうよう促してきた。


「ありがとうヒリタスさん。坊主行くぞ」


「はい!」

 

 ――――――コンコンコン。


「お嬢様、プリメラ様失礼致します」


「だいぶ遅かったなレオルにニック」


「どんだけ待たせんだよ、ウスノロども」


 そこにはいつもと変わらない軍服姿のヴェルナドットと胸元の大きく空いた赤いスレットロングドレスで脚を組み、目のやり場に困る装いをしているプリメラがいた。


「いやぁ申し訳ないです。精進します。坊主どうした?横座れ」


「は、はい」

(レオルさん、プリメラ先輩を見て全くの無反応!!くそっ上級者か!!!)


「今回の任務ご苦労だった。早速だが、端的に言うと私とプリメラでリュウソウザンに行ったが霊器はなかった。あったのは、真新しい魔獣と龍と人の死体だけだ」


「人の死体ですか。確かにリュウソウザンは、霊器を探す上で候補にあがりやすいですからね。まぁマスターと姉さんで見つけられなかったなら元々なかったか、誰かがすでにとっていたか。しかし、体長二百メートルの龍がいるって噂だがそいつはいたんですか?」


 (二百メートル!!!鉱山地帯で会った龍の何倍もデカい!!)


ニックの驚愕の顔をよそにレオルの質問にヴェルナドットは葉巻を吸いながら答える。 


「いたが、殺されていた」


「まじかよ、、、」


「大マジだよ!!こちとら雑魚魔獣ばっか相手でストレス溜まってんだよ。しかもそのクソデケェ龍から霊器の魔力の残滓があった。十中八九誰かに殺されて持ってかれてる!人が動けねぇ間に舐めたことしやがって」


 元々はプリメラ一人に任された任務。己の不甲斐なさに声を荒げる。


「だがそうなってくると二百メートル級の龍をぶっ殺した奴は相当な実力者だ。そもそもリュウソウザンのてっぺんに着くのだって容易じゃねぇしな。それでマスター何か手がかりとかありましたか?」」

 

「霊器を持っていった奴らも余裕がなかったんだろう、死体の手袋にこの紋章が印されていた」


 ヴェルナドットは机の上にあった死体から剥ぎ取った手袋をレオルとニックに見せた。


「この紋章は空賊か!!!」


「くうぞく!?」


「山賊の空バージョンだ坊主。ってことはその巨龍をぶっ殺したのは、ジーク・キアンか」


 (ジーク・キアン。誰だ?)


 レオルはサクッとニックの頭の上の疑問符を解決したが追加で新しい疑問符も追加した。紋章には獅子の顔が描かれていた。


「あぁ、ジークで間違いないだろう。すでにヒリタスに空賊の情報を集めて貰った」


 ヴェルナドットはヒリタスに視線を向ける。


「ほっほっ、空賊の方々は今現在『ゴホード砂漠』の遺跡を根城にしております」


「ゴホード砂漠、広い上に昼は激アツ、夜は激サムで坊主の大好きな魔獣がうじゃうじゃいる最高な場所だ」

 

「俺は魔獣好きじゃないですよレオルさん」

 (またとんでもない場所に行かなきゃ行けないのか)


「そこにはワシが行く」


 プリメラは、自分の失態を挽回するため自ら名乗り出た。


 (姉さんが行ってくれるなら、俺はしばらく休暇でも取ってバカンスだ!!)


 (プリメラさんが行くなら、俺はヒリタスさんとのんびり掃除してようっと)

 

 ニックとレオルは、他人事のようにオフモードに入っていた。


「勿論プリメラには行ってもらう。そしてレオル、ニック貴様らにも行ってもらう」


「ゴホゴホッ、まじかよマスター!!!」


「ブフ、レオルとガキもだと!!!」


「グハッ」


 レオルは驚きのあまり吸ってたタバコの煙をむせ返し、プリメラは口に含んだ赤ビーラを吹き出した。ニックは、心臓を矢にでも貫かれたような苦鳴をだした。


「何を驚いている、恐らく奴らは追手の可能性も考えている。賊の規模や正体は未知数。そして何より霊器を確実に持っている。失敗は許されない任務だ、万全を期す。オーダーは霊器を必ず奪取し全員無事に帰還することだ。相手は賊だ邪魔立てするようなら容赦なく捻り潰せ」


「イエッサー、マイマスター」


「足引っ張るなよウスノロ共」


「了解です。ヴェルナドットさん」


 三者三様の返答で次の任務のオーダーを了承した。


「ヒリタス、“あれ“を持ってこい」


「承知致しました。お嬢様」


「あれ??」


 ニックは、ヴェルナドットが言う“あれ“が何のことかと思案しているとヒリタスが大きな黒い箱が乗った台車を部屋に運んできた。

 

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