第一章10 『タネ明かし』
――――「プリメラのやつがあんなアッサリ受け入れるなんてな、良かったな坊主!!さっ帰るぞ、俺のデビルフェニックスちゃんは無事か?」
死地を潜り抜け安堵の表情を浮かべるレオルは、タバコを吸いながら愛馬の安否をニックに尋ねた。
「滅茶苦茶怖かったです。はい!向こうにキャシィと一緒に避難させてます」
「でかした!!さっさっと帰って休もうや。当分働きたくねぇ」
「かなり激闘だったんですね」
来た時にはなかった大きなクレーターを見てニックが呟く。
「ちなみにこれやったのプリメラな」
「えっ!!!あの細い身体でどうやって!!レオルさんも俺のこと滅茶苦茶高いとこまでぶん投げたしヴェルナドットさんもヤバいし一体全体どうなってるんですか!!英雄騎士三人と戦って全員無事だし」
普通の能力者でさえ決してなしえない荒業を次々と見せつけられニックは興奮を押さえきれなかった。
「少しは見直したか?マスターとプリメラのことは本人達に聞きな。俺についてはそうだな、、、そこの岩見てなっ」
レオルは近くにあった十メートル程の岩を見るようニックに促す。レオルとニックが岩を見つめていると、岩が突如粉々に砕け散った。
「うわっ!!レオルさん敵です!!どこからか攻撃してきています!!」
ニックは周りを見渡し敵の位置を確認しようとする。
「クソッ!!見当たらない!!一体どこから!!」
「気を付けろニック!!こんなデケェ岩を一瞬で粉々にする威力!!そして一時も目を離してないのに攻撃が行われた!!ただ者じゃねぇぞ!!気ぃつけろ!!なぁんてなっ」
「レオルさん、なにふざけてるんですか!!」
見えない攻撃を目の当たりにしふざけているレオルにニックは語気を強めた。
「ガハハハハ」
「なに笑ってるんですかレオルさん!いい加減にしてくださいっ!!敵はやり手ですよ!!!」
「いやぁ悪い悪い。まぁ落ち着けよ、そのやり手は俺のことだ」
レオルは笑みの消えないまま親指で自分を指差した。
「はぁ?」
「目にも見えない攻撃でデケェ岩を一瞬で粉々にしたのが俺ってことだ」
「マジっすか!?」
「大マジよ!詫びも込めてもう一回見せてやる!あそこの岩見てな」
また似た大きさの岩を見るようニックに促す。直後、先程と同じように岩が一瞬で砕け散った。
「どうやったんですか今の!!!」
(レオルさんは一ミリも動いてないし、もしかして速すぎて見えなかったとか。いや、この距離で俺の目でも見切れないなんてそんな事があるのか?)
二度の岩の粉砕を目の前で見ていたのに何が起きているかさっぱり分からずニックは困惑していた。
「ホント誰にも言うんじゃねぇぞ。実は今岩を粉砕したのは俺じゃねぇ」
「えっじゃあ一体誰が!!やっぱり何者かが近くに」
「まぁまぁ落ち着けって、俺の能力の『不可視の悪魔の手』だ」
「『不可視の悪魔の手』」
「そうだ、目には見えないが確かにそこにいる悪魔。俺はデーモンの悪魔と契約してんのさ。名付けて『デーモン・ハンド』!!」
「か、かっけぇ!!」
ニックは目を爛々と輝かせその異名に興奮している。
「このかっこよさが分かるか。ならば教えよう!さっきの攻撃名は、『デーモン・パンチ』!さらには『デーモン・キック』『デーモン・タックル』『デーモン・チョップ』もあるぞ!どうだ、かっこいいだろ」
「いや、他はあんまり。デーモン・ハンドだけかっこいいです」
「オッオホン。そうか、まぁまだ若いしそのうち良さに気づくだろう」
意気揚々と舌を捲し立てたレオルは頬を少し赤く染めてニックに責任転嫁した。
「てか悪魔と契約ってどういうことですか」
「基本的に悪魔と契約って言うのは悪魔側から持ちかけるもんだ。悪魔の気まぐれだな」
「急に悪魔が目の前に現れるんですか?」
「タイミングとパターンは人それぞれだ。俺のデイモンド家は代々悪魔崇拝の家系でな。悪魔が寄りやすかったんだろ、俺は物心ついた頃からこの悪魔とお友達って感じだ」
「それで俺のことをあんな上空までかっ飛ばせたんですね。マジ半端ないっす」
「確かに半端ないが、無限に使えるわけじゃねぇ。魔 力ごっそり持ってかれるからな。俺は長い付き合いだから大分エコに使えてるけどな。これ以上もあるが今日はここまでだ、さっさっと帰るぞ」
「えーーー、絶対後で教えてくださいね」
「気が向いたらな、早くデビルフェニックスに会わせろ」
「はーい」
ニックとレオルは、キャシィとデビルフェニックスと共にバルトロームをあとにした。




