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ねこや、放課後。  作者:
第一章
16/41

番外編4 君の知らない“ねこや”へ

ふと検索してみたくなることって、ありませんか?

どこかに記録があるはず、そんな気がして──でも、見つからない。

この物語は、「ねこや」に通うようになった奏が、初めて“この場所の秘密”に少しだけ触れる、小さな番外編です。


静かな放課後、ふと気づいた違和感。

カウンターの奥、鍵のかかった扉。

そして白いぬいぐるみの“お守り”。


いつもの優しさの中にある、少しだけ不思議な気配。

“ねこや”は、もしかすると──

放課後の帰り道、ふとしたきっかけでスマホを取り出し、「ねこや」と検索してみた。

なのに、出てこない。

いや、“出てこなすぎる”のだ。


「ねこや カフェ」

「猫 喋る カフェ」

「白い猫 カフェ ぬいぐるみ」


どれも検索結果は、別の似たような名前の店ばかり。

わたしの知ってる「ねこや」は、どこにも見当たらない。


──変だな。


確かにここに通ってるし、場所だってわかってる。地図アプリには一応、建物のピンは立ってる。でも、そこにカフェの名前は載っていない。

SNSにもほとんど投稿がない。タグも見当たらない。

口コミに載っていたとしても、

「なんだか不思議な雰囲気だった」

「また行けるかな、あの場所」

そんな曖昧な言葉ばかり。


(まるで、誰かがわざとぼかしてるみたい)


思わず背筋がひやりとする。

だけど、それと同時に、ちょっとだけワクワクしている自分もいた。


「ねこやって、もしかして…」


──何か、ふつうじゃない場所なのかもしれない。



翌日。


放課後のねこやは、いつも通りだった。

ミルキーが店内をすり抜けて歩いている。雪さんは棚を整えていて、クロエは窓際の椅子で丸くなっている。

でも、どこかに“違和感”が残っていて、わたしはそれをたどるように、奥の方へ歩いていった。


目当ては、前にふと見かけた「バックオフィスの写真」。

たしか古い棚の脇、鍵のかかった小さな扉のそばに──あった。


今日は誰もいないのを確認して、そっと近づいてみる。


アンティークの木製フレームにおさまった一枚の写真。

そこに写っているのは、雪さんと、前に店内で見かけた数人と知らない人たち。

その中には、クロエと、他の猫たちの姿もある。


──でも、服装も背景も、今の「ねこや」とは少し違っていた。


どこか別の店。あるいは、もう過去の風景?

それとも……ここではない、“どこか”?


「……これって」


言葉にした瞬間、クロエが足元をスルリと通り抜けた。

そのまま、奥にあるアンティークな扉へ向かい、何事もなかったようにすっと消える。

扉には小さな錠前がかかっていた。


わたしが思わずその前に立つと、消えたはずのクロエの声が後ろから響いた。


「気になるなら、確かめてみるにゃ。でも……いまは、まだ開かないにゃ」


その声に振り返ると、クロエの姿はなかった。


──なにこれ、本当に普通のカフェなの?


ドキドキしながら扉に手を伸ばしかけたその時。


「奏ちゃん、ちょっと手伝ってくれる?」


ふいにかかった雪さんの声に、我に返る。

慌てて「はーい」と返事をして、わたしは扉から一歩離れる。


その背後で、小さく「カチ」と鍵が回ったような音がした気がしたけど、たぶん気のせい。



その夜、家に帰ってから、もう一度だけ検索してみた。

「ねこや」じゃなくて、少し違う言葉にして。


ふと思い出したのは──創さんが残した白いぬいぐるみのキーホルダー。


“君だけのお守り”


タグについていた紙片に、うっすらと「KOMORI」の文字があった気がする。

「KOMORI カフェ」で検索。

すると、ひとつだけヒットした古いサイトがあった。

レトロなデザインのホームページ。開いてみても、ほとんどのリンクは無効。

けれど、トップに書かれていた小さな一文が、目に飛び込んできた。


“この扉の先に、きっとまだ知らない何かがある。”


わたしは、そっとスマホを閉じる。

胸の奥が、少しだけ熱くなっていた。


この番外編では、「ねこや」がただの癒しの場所ではなく、“もうひとつの世界”の入り口であるような雰囲気を描いてみました。

奏が少しずつ知っていく“ねこや”の謎と、自分の居場所としての繋がり。

次第に深まっていくこの世界を、どうぞこれからもお楽しみください。

第2章はこれからです

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