表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/101

第60話 「緑葉の儀って・・・何?」


「それで、シィリオの事だけど・・・何か良い案はあるの?」


エルフ達を見送った後・・・私達3人は学生寮の部屋で、作戦会議を行う事になった。

ローゼリア様が淹れてくれた紅茶を頂きつつ一息つくと、今更ながら帰ってきた実感が湧いてきた。

お茶請けはもちろん『キノコの山』だ、口の中でとろけるチョコの甘みが紅茶とよくマッチしている。


「ナデシコ、貴女に聞いてるんだけど?」

「ふぇ・・・?」

「えっ・・・何か勝算があるからエルフ達と約束したのではないの?」


いや・・・その・・・何も考えてないです、ごめんなさい。

気まずくなった私は、口に入れようとしたキノコを手元に戻して弄ぶ・・・今考えても、何も思い浮かばない。

これは・・・暢気にキノコを食べてる場合じゃなかったかも。


「まさか・・・私の時みたいに『キノコの山』で釣ろうとか思ってないでしょうね」


ああ・・・そういう手があるか。

フィーラの妹なら食べ物の好みも近いかも知れない・・・『キノコの山』で気を惹く、というのは悪くな・・・


「言っとくけど、あの子・・・キノコが苦手なのよ」

「え・・・」

「少なくとも私の知ってる頃のシィリオはね・・・キノコは見るのも嫌だって言ってたわ」


見るのも嫌って・・・よっぽどキノコが嫌いなのか。

たしかにそれだと『キノコの山』の魅力は半減・・・シィリオには通じないかも知れない。

となると、やっぱりここは・・・


「フィーラ、森に・・・」

「それは無理」


最後まで言う前に拒絶されてしまった。

いや、フィーラ・・・気が向いたら帰るって、さっきエルフ達に・・・

私が非難がましい視線を向けるも、フィーラは呆れたような顔をして。


「あれはもっと先の・・・学園を卒業した後なんかのつもりで・・・私にも心の準備ってものが・・・」

「・・・」

「そんな顔をしてもダメなものはダメよ・・・ちゃんと授業も受けたいし」


フィーラを連れ帰るのがシィリオの望みだから、それを叶えるのが手っ取り早いんだけど。

残念ながら、フィーラに行ってもらう事は出来そうになかった。


「だいたい私がシィリオを森に連れ帰ったとして・・・あの様子だと、私が学園に戻るのを止めて来るわよ」

「・・・たしかに」


シィリオからしたら、フィーラを次期族長にしたいんだものね。

フィーラを一緒に帰らせたら、意地でも森から出さないに違いない。

あれ・・・そういえば何か・・・忘れているような・・・


「やっぱり、シィリオに帰ってもらうように説得するしかないのではないかしら」

「それは・・・そうなんですけど・・・」


それが上手くいっていないから、何日も立て籠られているわけで・・・

シィリオは次期族長になりたくない、そのための勉強も嫌、フィーラの方が相応しいと思ってる。

この辺りはローゼリア様の立場に近いんじゃ・・・そう思ってローゼリア様に聞いてみると・・・


「私が・・・王位に?」

「はい、その為に・・・厳しい勉強とか、強いられたら・・・」

「うーん・・・」


顎に片手を添えて考え込むローゼリア様・・・これはこれで絵画にありそうな姿だ。

そのままローゼリア様はしばらく考えた後、首を振った。


「・・・それが辛いだけでは逃げ出さない、と思うわ」


実にローゼリア様らしい、責任感溢れる回答・・・そう思ったけれど。

・・・ローゼリア様の言葉には続きがあった。


「むしろそれが大切な誰かの為なら、辛い試練でもがんばれる・・・そう思うの」


そう語るローゼリア様の表情は、大切な誰かを思う優しさに溢れていて・・・きっとお兄さんの事を想像しているんだろう。

もし第一王子に何かあって、自分が王位を継ぐとなったら・・・ローゼリア様ならきっとやり遂げるに違いない。

ただ、これがシィリオの場合となると・・・ちょっと状況を考えてみる・・・うーん・・・


「フィーラが・・・病気になる、とか?」

「なんで私が病気に・・・」

「ほら・・・死ぬ前の、最後の頼みで・・・」


息も絶え絶えになりながら、エルフ族の未来を妹に託す・・・シィリオ、私の最後の願いを叶えて・・・ガクッ

姉の遺志を引き継いで、シィリオは立派な族長へと成長を・・・うん、わるくな


「ナデシコ、勝手に私を殺さないで」

「う・・・ごめんなさい」

「それで騙すのは難しいと思うわ・・・治癒の魔法もあるし」


良い方法だと思ったんだけどな・・・フィーラの想いを託すって感じで。


「はぁ・・・うちの族長にも困ったものだわ、シィリオを後継に指名するなんて」


それは・・・シィリオが近くの街の人間達に人気があるからで・・・あ、この話まだ言ってなかった。


「ごめんなさい・・・ちょっと、言い忘れてたんだけど・・・」

「「??」」


ここでようやく私は、エルフ3人組から聞いた話を伝えた。

森でなにかのお祭りがある事、お祭りに人間をたくさん呼び込んでいる事、そしてそのメインが・・・


「シィリオの・・・緑葉の儀?」

「うん・・・そう言ってたんだけど・・・」


ここで私も、ずっとフィーラに聞きたかった事があったのを思い出した。

エルフ族の文化とか風習とか・・・私は全く知らないから・・・


「フィーラ・・・緑葉の儀って・・・何?」

「ああ、緑葉の儀っていうのはね・・・」

「・・・」


そこはエルフ族の古い文化に精通したフィーラ、懇切丁寧に教えてくれた。

例のエルフ3人組は単に成人の儀式みたいなやつって言ってたけれど・・・正式にはもっと重要な意味があって・・・

エルフ族の祖先・・・と言うから、相当な昔だ・・・そこから今に至るまでの繋がり・・・そして・・・


「最近は略式で済ませる事が多いけれど・・・私が緑葉の儀を受けた時はね、正式な作法に則って緑葉の衣を使って」

「緑葉の衣?」

「うん、森の草木を材料に造られた特別な衣装で緑色から・・・ああ、そう言えばシィリオが着てたわね」

「シィリオが・・・着てた?」

「ええ、祭りの為に用意された物じゃないかしら・・・けど、緑葉の儀の当日以外に着て歩くのは浮かれ過ぎね、感心しないわ」


そう言われてみれば・・・なんか緑色してた気がする。

じゃあ・・・シィリオはそんな大事な衣装を着たまま、森を出てきた?

何のためにそんな・・・フィーラを連れて帰るのが目的なら、そんな服装でなくても・・・

そういえば、シィリオがフィーラと出会った時に・・・あっ。


「ほ、ほやっ!」

「「・・・ナデシコ?!」」


稲光のように浮かんだその思いつきに、私はつい変な声を出してしまった。

・・・もう考えれば考える程そうとしか思えない・・・私、わかっちゃった・・・たぶん。

だとしたら・・・私達のやるべき事は・・・


「フィーラ・・・お願いが・・・」


私にしては珍しく、そこそこの自信を持って・・・

フィーラに向かって、私はその提案を口にしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ