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第44話 「ナデシコのパートナーになってくれたという子ね」


「参加する・・・種目?」

「そう、登録は出来るだけ早い方が良いわ」


その日のお昼休みは私とローゼリア様、アクアちゃん、フィーラの4人で集まっていた。

アクアちゃんは相変わらずの食事量でモリモリと、フィーラも午後の体育に向けて多めに食べるみたい。

私とローゼリア様はいつも通り・・・私もしっかり食べた方が良いのかな。


時期が時期なので、もっぱら話題は体育祭が中心になる。

ご自身は参加出来ないローゼリア様も興味はあるみたいで、会話にも積極的に入って来ていた。

そんな会話の中で持ち上がったのが、参加する種目についてだった。


「ナデシコは何に出たいとかあるの?」

「いえ、私はまだ・・・」


もちろん私はまだ決まっていない・・・どんな種目があるのかについてすら把握しきれていない有様だ。

こちらの体育祭は基本的にペアでやるので、メイドリーと話し合う必要もある。

というか私自身はどんな運動をやってもダメダメだから、メイドリーに任せてしまった方が良いとさえ思っていた。


「専用の練習場が必要になる種目もあるから、登録は早ければ早い程有利なのよ」

「へ、へぇ~・・・そう、なんだ・・・」


詳しそうに語るアクアちゃん達のペアは、もう登録を済ませているらしい。

『ペンタアスロン』・・・五種複合の大掛かりな種目で、まさしく専用の練習場が必要になるらしい。

それらは予約制になっていて・・・アクアちゃんは登録と同時に予約に走ったのだとか。


今回は勝ちに行く・・・なんて言ってただけあって、アクアちゃんは勝つための努力に抜かりがないみたい。

私も今回はがんばろうと意気込んではいるけど、さすがにそこまでのがんばりは無理だ、なんか次元が違う。

・・・きっと参加する種目も、地味でこじんまりしたやつになるんじゃないかな。


「それでなくても登録は早い者勝ちだから、あまりモタモタしてると嫌な種目しか残ってない・・・なんて事に」

「ふぇっ?!」


それは困る。

種目の中には剣術や拳闘といった、あからさまに物騒なやつもあったのだ。

のんきに構えていたら、そういうのしか残ってない、なんて事に・・・私なんかがそんなのやったら、死んでしまう。


「・・・い、急いで、メイドリーに相談しないと・・・!」

「メイドリー・・・ナデシコのパートナーになってくれたという子ね・・・何かご用かしら?」

「はい、すごく良・・・え?」


ローゼリア様がメイドリーの話題に食いついたのかと思ったんだけど・・・何か会話がおかしい。

その視線は確かに私の方を見ているように思うんだけど・・・妙によそよそしいと言うか・・・あ、これはもしや。

席に座ったまま首だけ動かして、私はゆっくりと後ろを振り返る・・・すると。


「め、メイドリー?!」


噂をすればなんとやら。

私の真後ろにメイドリーが立っていた。

すごく硬い表情で・・・ああ、今ローゼリア様が話しかけてきたから緊張してるんだ。


「ご、ごめんなさい、決して皆様のお邪魔をするつもりはなく・・・」

「私は、何の用かを尋ねているのですけど?」


大好きなローゼリア様を前にして、メイドリーはすっかり固まってしまって、声を出すのも大変そうだ。

それに対してローゼリア様はというと・・・なんだか、妙に厳しいような。

きりっとした瞳が鋭さを増して・・・これはまるで私と最初に出会った時みたいな・・・メイドリーを警戒してる?!


「その・・・ナデシコと・・・相談したくて・・・体育祭の事で・・・」


どうやらメイドリーも種目について相談したかったみたいだ。

それでわざわざ昼休みに私を探してきてくれたけど、ローゼリア様達と一緒にいたから・・・入っていけなかったんだ、その気持ちはすごくわかる。

けれど、そんなメイドリーの態度はローゼリア様から不審に思われてしまったようで・・・


「本当にそれだけ? 先程からずっとこちらの様子を伺っていたように見えたのですけど」

「そ、それは・・・その・・・」


うわ、完全にローゼリア様に誤解されてる・・・メイドリーは緊張して声を掛けられなかったんだよ。

彼女は何も悪くない、なんとか誤解を解かないと・・・


「ろ、ローゼリア様・・・メイドリーは・・・気を使って、くれてたんです」

「ナデシコ?」

「私達が、楽しそうにしてたから・・・邪魔、しないようにって・・・」

「・・・そ、そうなの?」


コクコク…


緊張と恐怖に苛まれ、メイドリーは壊れた人形のように頷いた。

私も賊かと疑われた時は怖かったけど・・・メイドリーの場合は大好きな人に嫌われてしまう怖さだ、想像もつかない。

だ、大丈夫・・・これはただの誤解なんだから。


救いを求めるようにアクアちゃんの方を見ると、私の視線に気付いた彼女は渋々と言った感じで・・・


「・・・そうね・・・私もそう思うわ」


援護してくれた。

さすがのローゼリア様も、これで誤解だってわかってくれるはず・・・わかってほしい。

しかし、状況を動かしたのはフィーラの放った一言だった。


「・・・私は、どっちかと言うとナデシコみたいって思ったけど」

「あ・・・それわかる!」

「へ?・・・」


アクアちゃんが一瞬で意見を変えて飛びついた。


「あの、こっちを伺いながらおどおどしてる感じ・・・ナデシコに似てるなって」

「メイドリー、さっき2回は声掛けようとして引っ込めたわよね?・・・ナデシコみたいに」

「う・・・」


フィーラとアクアちゃんはすっかり盛り上がってしまって、メイドリーに絡んできた。

そんな、よりによって私に似てるだなんて・・・いくらメイドリーでも気を悪くするよ。

思わぬ飛び火から、おかしな流れに・・・ど、どうすれば・・・


しかし・・・


「・・・ふふっ」


このやり取りの何が面白かったのか、ローゼリア様が笑い出した。


「言われてみれば、そうだわ・・・ふふっ・・・メイドリー、怖がらせてごめんなさい」

「そ、そんな、私如きが・・・滅相もないです」


いったい何がどうなってしまったのか、私にはさっぱりわからないけれど。

ローゼリア様は憑き物が取れたかのように穏やかな顔で・・・メイドリーに優しく微笑みかけて。

メイドリーの方はまだガチガチだけど・・・なんだか嬉しそうだ。


「体育祭の事でナデシコに相談があるのよね? どうぞこちらに座って」

「え・・・ええっ!!」


ローゼリア様は席を詰めて・・・私との間に空間を作った。

メイドリーには、そこに座るようにと言っているのだ。


「ほら、早くしないと昼休みが終わってしまうわ」

「は、はひ・・・失礼しますし・・・いえ、失礼しますっ!」


すっかり顔を真っ赤にしたメイドリーは、ぎこちない動きで席に着いた。


「はぁ、はぁ・・・」


呼吸が荒くなってるのが隣から聞こえる・・・だ、大丈夫かな。

私がメイドリーなら頭が真っ白になっている所だ・・・こんな状態で体育祭の相談とか出来るの?


「メイドリー・・・大丈夫?どこか具合が悪いの?」

「は、はぅう!」


ローゼリア様・・・これ以上メイドリーを刺激しないであげてください。

あ、でもメイドリーとしてはその方が良いのか・・・いやいや体育祭も大事なわけで。


「ローゼリア様・・・メイドリーは私が診てるので、何か飲み物を・・・」

「ええ、わかったわ」


原因であるローゼリア様には、いったん離れて貰って。

彼女が飲み物を取りに行っている隙に、私達は参加登録する種目を決めるのだった。


「はぁ・・・ナデシコ・・・私、ろ、ろローゼリア様と、とと」

「うん・・・うん」


良かったね、メイドリー。


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