第41話 「私で良ければ組みますけど」
日本の学校には体育祭というものがある。
青少年の健全な肉体を育む、という体育の成果を発表する場、スポーツの祭典。
開催時期としては、暑さが本格的になる夏を避けて春か秋が定番だ。
そしてそれは、日本の影響を強く受けるフレスルージュ王立学園においても開催される。
日本とは異なる文化を持つこの国では、種目の方もなかなか個性的で・・・所謂個人競技というものがなく。
種目の殆どはダブルス・・・ペアを組んで行われるものだった。
「というわけで・・・2人1組になってもらいます」
またしても私の前に立ち塞がるか・・・2人組。
私はこれまで、この言葉にどれ程苦しめられてきた事か。
だがしかし、だがしかしっ!
今の私は一味も二味も違う・・・お友達がいるんだもんね。
それも複数だ、もう2人組なんて怖くないよ!怖くない!
・・・そう思っていた時期が私にもありました。
「ナデシコ、ごめんなさい・・・私は選手にはなれないの」
「え・・・」
真っ先に声を掛けたローゼリア様は、とても申し訳なさそうに頭を下げた。
それもそのはず『王立学園』の体育祭・・・王女である彼女は、主賓として観戦する立場なのだ。
なので、ローゼリア様はあらゆる種目に不参加となる・・・ペアの対象外だ。
な、ならば他のお友達・・・私にはまだアクアちゃんとフィーラがいるもんね。
そう思って声を掛けようとした私の目の前で・・・2人はがっちりと手を握り合った。
「フィーラ、私の足を引っ張らないでね」
「ふ・・・ハイエルフの実力・・・見せてあげるわ」
「そ・・・そんな・・・」
ショックを受けてふらつく私に気付いたアクアちゃん達は、ばつが悪そうに苦笑いを浮かべた。
「「あ・・・ナデシコ・・・ごめん」」
「あ、アクアちゃん・・・」
「悪いんだけど・・・ここは勝ちにいきたいのよ」
「・・・」
そう言われてしまうと返す言葉がない。
運動音痴の私が組んでも、アクアちゃんの足手纏いになるだけだ。
フィーラの運動神経については未知数だけど、森の中で育ったような種族だ、出来ないわけがない。
せっかくの体育祭だもんね・・・実力があるなら、普通に勝ちたいよね。
「あ・・・ああ・・・」
・・・あぶれてしまった。
私には友達がいるからと、すっかり調子に乗った結果がコレだよ。
他のクラスメイト達とは、碌に会話もした事もない。
救いを求めるように周囲を見回すけれど・・・皆、視線を逸らして・・・
そうだよね・・・もう皆お友達とペアになってるよね。
こうなったら後の展開はわかり切っている・・・「1人残ってます」って誰かが指摘して、タチアナ先生が組んでくれるんだ。
ならもう、今のうちに先生の近くに移動しておこうか。
そう思って踵を返した瞬間・・・私の目の前に腕が差し伸べられて・・・え?
幻覚かな・・・私、目が悪くなった?・・・とりあえず目をゴシゴシと拭って・・・?!
幻覚でも何でもなく、私に向かって手が差し伸べられていた。
「あの・・・私で良ければ組みますけど」
「えっ・・・」
それは1人の女生徒・・・同じクラスの・・・あっ、この間ローゼリア様のついでで私にも挨拶してきた子だ。
ええと名前は・・・なんかメイドさんみたいな感じだった気がするんだけど・・・
メイリッシ・・・じゃなくて、メイ・・・とにかく、この子を逃がしちゃいけない。
彼女の気が変わってしまう前に、私は差し伸べられた手をがしっと握り締めた。
「私はメイドリー・・・よろしくし」
私ががっついたせいで驚かせてしまったのか。
その女の子・・・メイドリーは表情を硬くしながらも、よろしくと私に微笑みかけてくれた。
なんて良い子なんだ、神か。
「おおお、おねがしますっ!」
どう考えても運動の苦手な私は足手纏いにしかならないと思うけど。
彼女が差し伸べてくれたこの手には一生懸命応えよう。
こうして私とメイドリーは、共に体育祭を戦うパートナーとなった。
が、がんばるぞ・・・おー。




