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第36話 「これは・・・ら、らぶ・・・」


国が違えば文化も違うと言うけれど・・・世界が違えばもっと違うわけで。

先日の音楽の授業で、まさにその違いを目の当たりにしたわけだけど。


想いを寄せる異性に手紙を送る・・・所謂恋文、ラブレターという習慣は、この異世界にも存在しているらしい。


どうしてそんな話になるのかと言えば、私の机の上に、一通の手紙が置かれていたからだ。


「?!・・・これは・・・ら、らぶ・・・」


白いシンプルな封筒に赤い蝋で封がされている。

封筒には何も書かれていないので、差出人が誰かはわからない。

けど、こんな改まった方法で手紙を寄こすなんて、どう考えても、らぶ・・・お、おちつけ私。


すー、はー・・・


その場で軽く深呼吸をして、私は手紙に手を伸ば・・・


「おはようナデシコ・・・何その手紙?」

「ふぇっ?! あ、アクアちゃん・・・こ、これは・・・」


私が説明するよりも早く、アクアちゃんは横から手紙をかっさらうと、裏返したり、太陽に透かしてみたり・・・


「うーん、さすがに開封しないとわからないわね・・・開けてみていい?」

「あ、アクアちゃん?!」

「・・・冗談よ、はい」


どこまで本気なのかわからない事を言いながら、アクアちゃんが手紙を返してくる。

これ・・・本当にラブレターなのかな。

まずは中身を見てみない事には始まらない・・・か。


封蝋の所をぺりっと剥がすと、封筒は簡単に開いた。

中身もシンプルに紙が一枚。

そこに書かれている内容まで、シンプルに一行だけだった。



『放課後、校舎裏にて・・・大事な話があります』



・・・それきりだ。

差出人の名前も書いていない。

やっぱりこれって・・・悪戯なのでは?


ラブレターを装った悪戯なら、私も何度か経験がある。

手紙を見た私の反応を見て、皆で笑ったり・・・あるいは呼び出した場所に誰もいなくて待ちぼうけする私を笑い者に・・・


「ナデシコ?・・・顔色悪いわよ、大丈夫?」

「え・・・あ、大丈夫・・・」

「手紙に何か変な事でも書いてあった?脅迫とか?」


嫌な事を思い出したせいで、アクアちゃんに余計な心配をかけてしまった。

別に見せて困るような内容でもないので、アクアちゃんにも手紙を見てもらうと・・・


「え・・・これだけ?」

「うん・・・」

「・・・悪戯、かも知れないわね」

「あ、やっぱり・・・」


そうだよね・・・私にラブレターなんて来るわけないし。

でももし・・・本当にラブレターだったら・・・誰も来ないのに待っているんだろうか。

諦めて帰った直後に来たらどうしよう・・・とか、相手に何かあったんじゃないかって不安になったり・・・なんかそれは、とても申し訳ないというか。


「・・・アクアちゃん」

「ナデシコ・・・アンタまさか、行くつもり?」


信じられない・・・アクアちゃんがそう思ってるのが伝わってくる。

けど・・・誰かに待ちぼうけにあうくらいなら、まだ私が・・・もうこの手の悪戯には慣れてるし。


「も、もし悪戯・・・じゃ、なかったら・・・悪い、から・・・」

「はぁ・・・まったく、しょうがないわね・・・」


私がそう伝えると・・・アクアちゃんは大きくため息を吐いた。




___そして迎えた放課後。


手紙で指定された校舎裏に向かう事にした私の後方・・・15mくらいの距離を開けてアクアちゃんがついて来ていた。

もし悪戯だった時に助けてくれるつもりらしい、おかげで私も安心して・・・いや、さすがに緊張してきたよ。

相手はどんな人なんだろう・・・ここの生徒だよね? 先輩だったりする可能性も?


お城のような校舎は結構入り組んでいるので、裏側に回ろうとすると道が細くなって・・・ちょっとした迷路みたいな雰囲気だ。

さすがに道に迷うような事はないんだけど・・・うん、アクアちゃんもちゃんとついて来ている。

最後の曲がり角・・・ここを曲がれば校舎裏だけど・・・ここまで来たら、もう行くしかっ!


・・・なけなしの勇気を絞り出して、私は足を進めた。


「・・・あっ」

「・・・あっ」


校舎裏には・・・既に人がいた。

こちらが気付くのと同時に、向こうも私が来たのに気付いたようで。

ゆっくりと私の方に歩いて来る・・・緊張しているのか、その動きが硬い・・・私も他人の事が言えないくらいには緊張でガチガチなんだけど。


互いに声がしっかり聞こえるくらいの距離まで歩み寄ると・・・彼は視線を泳がせながら口を開いた。


「来て・・・くれたんだ」

「じゃ、じゃあ・・・あの手紙は・・・ペイター君が」


ペイター君が無言で頷いた。

・・・あのラブレターの差出人はペイター君だったのだ。


じゃ、じゃあ、ペイター君が私の事を・・・えっ、えええええ?!

木琴運ぶの手伝ったから? それともあの後、授業で一緒に木琴弾いたから?

ど、どこに私を好きになるポイントがあったんだろう?


「ごめん・・・どうしても、気になって・・・」


そう言いながら、ペイター君がすごく真剣な眼差しを私に向けてきた。

こ、これは・・・決して悪戯なんかじゃない、本気の目だ。

男子からこんな目で見つめられたのは生まれて初めてだよ・・・ど、どどどうしよう。


「ナデシコ、君の・・・」


うわああああ、きたああああ。

愛の告白だ・・・いや、き、気持ちは嬉しいんだけど、こういう事はもっと・・・もっとこう順序?みたいなのがあるよね?

なんというかっ、なんと言えば良いんだろう・・・彼も勇気を振り絞ってくれているのはすごくわかるし、あんまり傷付けたくはないんだけど・・・や、やっぱり私っ・・・


「君の・・・楽器を見せて欲しいんだ!」

「ご、ごめ・・・あれ?・・・い、今なんて・・・」


私が間抜けな顔で聞き返したのと、ほぼ同時に・・・

私の後ろの方で・・・アクアちゃんがずっこけるような音が聞こえた。

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