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第31話 「この耳でたしかに聞いたわ」


「まさか、ナデシコがそちら側に付くなんて・・・」


放課後にローゼリア様を誘って向かったのは、この間の日本人向けのカフェだ。

始めは日本の料理に興味を示していたローゼリア様もテラス席に案内された瞬間、表情を硬くした。

無理もない・・・そこに座るジルノとバイオラの姿を見ては、私も2人とグルだと判断するのは当然の成り行きだろう。


「そっちに、付くって・・・わけでも、ないんですけど・・・」


私としては、別にジルノ達に味方してるつもりじゃないんだけど。

ローゼリア様からしたら、そんな風に見えるに違いない・・・実質そっち側かも知れない。

彼女が生徒会に入るのを嫌がっているのをわかっていて、これから説得しようというのだから。


「安心しろローゼリア・・・今回はナデシコからの話だ」

「・・・ナデシコが?」

「そ、そうなんです・・・わ、私の話を・・・」


驚きと共に、ローゼリア様の視線が・・・もちろんジルノ達の視線も、私に集まって来る。

多少は見知っている人達ではあるけれど・・・こう注目されると、緊張感が凄い。


「私から、て・・・提案があるんです、ローゼリア様・・・あの、ですね・・・」

「ええ、続けて頂戴」


ローゼリア様はすごく真剣な顔で・・・キリッとした表情が相変わらずよく似合っている。

思わず見惚れてしまいそうになりながらも、私は話すべき内容を頭の中から引っ張り出した。


「一時的な、助っ人?・・・という形で・・・生徒会に、籍を、置く・・・と、いうのはダメですか?」

「・・・一時的な助っ人」

「い、忙しい時とかっ・・・助けが、必要な時に、だけ・・・参加する・・・みたいな・・・」


そうは言ってもジルノ達だけで充分という話が本当なら、助けが必要になるような事態にはならないはずで・・・実際は名前を貸すだけに近い。

言わば幽霊部員みたいなものだけど・・・何か特別感のある役職名を生徒会に用意してもらうつもりだ。

名前だけでも王女がバックについてる感じや、いざとなれば本人を頼れるという点が生徒会側のメリットになる。


ローゼリア様だって年に1回あるかないかの話なら・・・と思ったんだけど。


「助けが必要な時にだけ・・・生徒会の方は、そんな内容で構わないの?」

「ああ、問題ない・・・『助けが必要かどうか』は俺が判断する・・・という条件付きだが」

「・・・」


彼の気分次第で、いつでも助けを求めてくる・・・そういう風にも受け取れる条件だ。

さすがにその言葉を聞くと、ローゼリア様は考え込んでしまった。


「もっと具体的に基準を用意してもらうというわけには・・・」

「いや、この条件は譲れない・・・済まないが、信じてもらうしかないな」

「・・・」


元々は副会長としてローゼリア様を迎えたがっていたジルノだけに・・・この条件でもかなりの譲歩なんだろう。

これ以上の妥協は引き出せなそうだ。

この分では交渉決裂・・・私なりに双方の折り合いがつく案だと思ったんだけど。


「・・・はぁ」


ローゼリア様が小さくため息を吐いた・・・やっぱりダメか。

それはそれで仕方ない・・・バイオラさんの話を聞いて、3人がまた仲良く出来れば良いな・・・とは思ったけど、無理させて拗れるのは一番良くないと思うし。

などと思っていたら、ローゼリア様がなぜかこっちを見てきて・・・一瞬目が合った。


「?」


なんだろう?・・・ローゼリア様は一瞬何かに気付いたような反応をして・・・

その次の瞬間には微笑みまで見せて・・・何か楽しい事でもあったかのように・・・


そして口を開いたローゼリア様は、とんでもない事を言ってきたのだった。


「その条件を呑む代わりに、私からも条件があるわ・・・それは・・・」

「?!」

「面白い、交渉成立だ」


思いもよらなかったその条件を・・・ジルノは即答で受け入れたのだった。

え・・・いや、待って・・・その条件だと・・・困・・・




「生徒会の諸君、今日は我々の新しい仲間を紹介する」


生徒会長ジルノの号令の下・・・

円卓を囲む生徒会の生徒達は、統制の取れた動きで私達を迎え入れた。

そう、私達・・・ローゼリア様と、私を、だ。


あの時、ローゼリア様の出した条件とは・・・


『ここにいるナデシコを私と同じ条件で生徒会に入れる事・・・そして助けが必要になった時は、私よりも先に彼女を呼ぶ事・・・彼女の手に余るようなら私、という順番で・・・それが条件よ』


・・・というもの。

きっと私が呼ばれた時点で、もう手に余る事態だと思うんだけど・・・

ローゼリア様にその事を相談したら、彼女は顔色一つ変える事無く。


「それならそれで良いのよ、軽々しく呼び付けられない為の保険だもの・・・それに・・・」

「そ、それに・・・?」

「それにナデシコ、この間言ったわよね?・・・一緒にがんばりましょう、って」

「へ・・・?」


私・・・そんなこと言った?


「・・・たしか休日明けの日の朝よ、この耳でたしかに聞いたわ・・・手も握ってくれたし」


休日明け・・・ええと・・・それって・・・あ。



~~~~~~~~~~~~



うんうん、昨日は楽しかった、だからこそ今日がつらい・・・ローゼリア様も同じ気持ちなんだ。

・・・そう思うと、気持ちが少し楽になった。


「ローゼリア様・・・が、がんばりましょう!」

「・・・ナデシコ?」

「わ、私も・・・い、一緒ですし!」


学校に行きたくない気持ちを込めて、ぎゅっとローゼリア様の手を握る。



~~~~~~~~~~~~



ああああああああああ!!

言ってた! 私、言ってた!


そんなつもりじゃないけど・・・あ、今思えばローゼリア様はこの時も生徒会の事で悩んでいたのか。




「・・・というわけで、生徒会に危急の事態が起きた時は、このニホン国のナデシコ、そしてローゼリア王女が生徒会特別緊急対応員として協力してくれる事となった」

「・・・宜しくお願い致します」

「よよ、よろ・・・しく・・・おねが・・・」


たどたどしい私の挨拶の言葉が、満場の拍手をもって受け入れられる。

こうして、生徒会特別緊急対応員・・・後に特急の略称で呼ばれる役職の最初の一人目として。

よりにもよって王女であるローゼリア様の名前の上に、私の名前が生徒会の目録に刻まれたのだった。



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