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第12話 「授業は、しっかり受けてください」


「隣の席の子に・・・無視された?」


結局、今日1日アクアちゃんに無視され続けた私は・・・夕食の時にローゼリア様に相談する事にした。

私と違って、社交界の経験も豊富そうな王女のローゼリア様なら、何かいい知恵があるに違いない。

そう期待しての事だったんだけど・・・


「きっと、私がしつこく、話しかけたから・・・嫌われた・・・どど、どうしよう」

「落ち着いてナデシコ、そんな事で人を嫌うわけがないわ・・・きっと何か理由があるのよ」

「そ、そうかな・・・」

「そうよ、焦らないで・・・今は様子を見ましょう?」


これまでの経験が経験だけに、不安で仕方ないんだけど。

ローゼリア様がそう言ってくれるだけで、なんとかなりそうな気がしてくるから不思議だ。

これが王家のカリスマというやつなんだろうか。


「大丈夫、ナデシコがこんなに気にしているんですもの・・・きっとその子とも仲良くなれるわ」

「はい・・・そうです、よね」


やっぱりローゼリア様に相談して良かった。

後ろに向きがちな私の気持ちが、ちょっとだけ前に向いたと言うか。


夕食を終えた私達が席を立つと、食堂にいた生徒の多くの視線が私達を追ってくるのを感じた。

それはもうわかりやすく・・・見られてるのがローゼリア様なのはわかっているんだけど・・・なかなか慣れる事が出来ない。

だから、その時の私は気付かなかった。


「あれが例のニホンの姫・・・大和・・・撫子、でしたか?」

「ええ、ローゼリア様とあんなに仲睦まじく・・・憧れてしまいますわ」


遠巻きに私達の様子を伺ってくる生徒達の視線・・・その中に・・・


「・・・フン」


・・・アクアちゃんの冷たい視線が混ざっていた事に。



そして翌日。


「お、おは・・・よ・・・」

「・・・」


プイ…


アクアちゃんは相変わらずの塩対応。

やっぱり嫌わてるんじゃ・・・いやいや、気をしっかり持たないと。

ローゼリア様のアドバイスの通り、私は無理に話しかけたりはせずに様子を見ることにした。


「・・・」


綺麗な水色の髪・・・コスプレしてる人の画像とかで見た事はあるんだけど、そういうのとは違う印象を受ける。

しっとり感というか・・・保湿力?が違うのかな・・・染めるのは髪痛んでそうだし。

ちなみに私の髪は日本人らしく真っ黒で・・・でも、こっちにも黒髪の子は何人か見かけたから、そんなに珍しくもないのかな。


「・・・」


アクアちゃんの瞳の色は髪の水色よりも濃い青色をしていて・・・こうして見ていると吸い込まれそう。

なんというか、湖と言うよりも・・・こうもっと深い・・・ブルーホールだっけ?

そこだけ深くなってる海底が空の上から丸く見えるやつが思い出され・・・って、今思いっ切り目が合ってる?!


「・・・何よ」

「え・・・その・・・あく、あちゃんの目・・・綺麗だなって」


な、なにを言ってるんだ私・・・

せっかくお話しするチャンスが向こうからやってきたというのに、ナンパみたいな事を・・・いやナンパでもそんな事言わないんじゃないかな。

・・・とにかく、こうなった以上は何か話を・・・しかし私の頭は真っ白になっていて、碌に会話に繋げられず・・・


「・・・」


プイ…


案の定、アクアちゃんにはそっぽを向かれてしまった。

ああ・・・



授業が始まった後も、私はめげずにアクアちゃんの様子を観察し続けた。

アクアちゃんの授業態度は模範的、ノートもしっかりとるタイプだ。

細かい字でびっしりと・・・隣の席からだと、ちょっと読むのが難し・・・


「・・・ナデシコさん」

「!!」


不意に正面から声をかけられて、私の体が硬直した。

もちろん声の主は隣の席のアクアちゃんではなく・・・


「授業は、しっかり受けてください・・・ね?」

「ひ・・・」


担任の先生だ・・・言葉は柔らかいけれど目が笑ってない。

一番前の席だもんね・・・すぐにわかるよね。


「ひょっとしたら、授業の内容がニホン国のものよりも遅れているのかも知れませんが・・・先生、復習も大切だと思うの」

「は、はい・・・ごめんなさい」


いやいや、授業内容的にはそんなに簡単でもなかった。

私の頭の出来の問題かもしれないけれど、普通に高校レベルの内容・・・なんじゃないかなぁ。

ええと、水素が水で水が水素で・・・どういう事かさっぱりだ。


うん、まぁ、留学生受け入れるくらいだもんね・・・ある程度レベルを合わせてくるよね。

更に私はこっち側の世界の事は何も知らない0の状態なので・・・地理とか歴史とか言われると、もう完全に無理。

アクアちゃんの事を気にしてる場合じゃなかったかも知れない・・・ふぇぇ。


「・・・ふっ」



今、隣で・・・笑った?

チラリとアクアちゃんを見ると・・・


プイ…


そっぽを向かれてしまった、けど・・・今のは、たしかに・・・


「・・・」


それきりアクアちゃんは、こっちを見る事はなく、真面目にノートに向かっていた。

・・・いや、私もここからは真面目に授業を受けるよ。


アクアちゃんの事は焦らなくていい。


もう少しだけ・・・このままもう少し様子を見ていよう。

きっと仲良くなれる・・・これといった根拠もないけれど、今はそんな気がした。


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