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わたしのアメリお嬢様(アーニャ視点)

作者: 丸太塔

これは私の大切なアメリ様の物語でございます。


アメリ様は侯爵家の令嬢としてお生まれになり、幼少の頃から非常に聡明でいらっしゃいました。


その利発な性格に加え、儚げな美しさをお持ちで、どこか神秘的な雰囲気を醸し出しておられました。


しかし、その美しさが時としてお嬢様を孤独へと追いやり、運命に翻弄されることもございました。


アメリ様の内面は、幼少期から持ち合わせていた優雅で完璧な外見とは裏腹に、深い葛藤に満ちておりました。


他人とのつながりを求めつつも、周囲の期待に応えることに精一杯で、無意識に自分を偽ることもしばしばでございました。


完璧であらねばならないという強い義務感に縛られ、心の中で感じる孤独と切なさは、誰にも理解されないものでした。


アメリ様は同じ侯爵家のご子息、エドワード様とご婚約されておりました。


最初は心のどこかで、このご婚約が新たな始まりになるのだろうと信じておりました。


しかし、このご婚約が破棄される運命が待ち受けていたことを、誰が予想したでしょうか。



「アメリ・ハローズ。君との婚約を破棄する」



エドワード様の冷徹な言葉が、アメリ様の心を深くえぐり、その瞬間、何も言えず、ただ立ち尽くすしかありませんでした。


アメリ様の胸に響いたのは、冷たく響く言葉と、どこか無機質なエドワード様の目でした。


それはまるで、長い間自分を守るために作り上げた「完璧な淑女」の世界が崩れ去る瞬間のように感じられました。


婚約破棄の理由は、男爵令嬢エリス様への心変わりでした。


エリス様は美貌において圧倒的な存在でしたが、その心根は冷酷で、アメリ様を陰で嘲笑うこともしばしばでした。


さらに、エリス様はエドワード様に、アメリ様からいじめを受けていると涙を流しながら嘘偽りの相談をしておりました。


エドワード様は一度もアメリ様をかばうことなく、次第に二人は良い関係に発展していきました。


結果的に、エドワード様はアメリ様ではなく、エリス様を選ばれることとなったのです。


その瞬間、お嬢様は自分の全てが否定されたかのように感じました。


心の中で、これまで作り上げてきた「完璧な淑女」という姿が無情にも崩れ去り、その破壊が深く突き刺さりました。


涙をこらえながら、アメリ様はその場を後にされましたが、心の中であの一言一言が鋭い刃のように突き刺さり続けておりました。


婚約破棄の報せが広がると、世間は一斉にアメリ様へ同情の声を寄せました。


「あの聡明な侯爵令嬢が捨てられるとは」


という噂が飛び交う中、アメリ様は孤独の中で何度も自問自答を繰り返されました。


自分に何が足りなかったのか、どこが間違っていたのか。


誰もが優しく微笑みかけても、その笑顔の裏に隠された「捨てられた」という感情が胸に深く突き刺さり、孤独感は増していきました。


そのような日々の中で、転機が訪れました。


アメリ様は何かが吹っ切れたように、突如魔法の勉強を始められたのです。


そして、任につくのは難しい王宮魔術師の地位を得ることができたのは、ひとえにお嬢様の才能と努力の賜物でございます。


そうして、同じ王宮魔術師の地位で働く辺境伯のご子息、レオン様がアメリ様にご結婚のお申し出をされたのです。


辺境伯領は魔物が跳梁跋扈する過酷な土地で、レオン様は強力な魔術師として名高い方でした。


初めは王宮魔術師同士、切磋琢磨する間柄でしたが、次第にその誠実さに心が動かされていきました。


レオン様がアメリ様を選ばれた理由は、単にその美しさや地位にとどまらず、内に秘めた力を見抜いておられたからだと知り、アメリ様は心の中で何かが解放されるような感覚を覚えました。



辺境伯領に嫁いだ後、アメリ様はその魔法の才能を存分に発揮されました。


魔物の脅威にさらされていた領地を守るため、次々と魔法を駆使して問題を解決し、その姿にレオン様はさらに惚れ直し、


「やはり、君は素晴らしい女性だ」


と仰ってくださいました。


その言葉に、アメリ様は温かな安心感を覚えました。


傷つき、信じることができなかったアメリ様が、ようやく誰かに評価され、愛されることを実感した瞬間でございました。


レオン様の頼もしさと優しさ、何よりも彼が自分を正しく見てくださることが、アメリ様にとって何よりも大切なものとなりました。


そして、ついに自分を受け入れ、過去の痛みを乗り越え、レオン様と共に辺境伯領を治め、力強く生きることができるようになったのでございます。


これから先のアメリ様とレオン様の幸せを、私アーニャは心よりお祈り申し上げます。


お二人が共に過ごす日々が、喜びに満ち溢れ、素晴らしいものとなりますように。

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