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第15話 独り遊び

「慶二……」


 僕はバスルームでシャワーを浴びながら、さっきの感触を思い出していた。

 驚いて咄嗟に払いのけたけど、慶二の手が、僕に触った。

 男なんてご免だと思ってたけれど、触られた《自主規制》


「ん・ふっ……慶二」


『俺が出て行った後、風呂で《自主規制》』


 慶二の上品なバリトンが、耳を疑うくらい、いやらしい内容を囁く。

 《自主規制》は勿論したことがあったけど、身近な人を《自主規制》のなんて、初めてだった。


 薄い腹筋につきそうなほど反り返ってる《自主規制》

 慶二の綺麗で長い指を思い描き、仰け反って頭からシャワーを浴びながら、《自主規制》


「あっ・ん・はぁ」


 慶二のシニカルな笑みや、優しい笑い皺や、キスする時の真剣な表情を思い出す。

 

「あんっ・慶二、好きぃっ……!」


 ここからは妄想だ。精悍な頬や凜々しい眉が、快感に歪んで上気するのを想像する。

 そして、バスローブを脱ぎ落とした時に見た、《自主規制》


 男同士のやり方は歴史小説で読んでかろうじて知ってたけれど、経験したことがないから気持ちいいのかどうか分からなくて、《自主規制》


「あ・あ、《自主規制》」


 固く瞑った瞼の裏の慶二が、セクシーに掠れたバリトンで、耳元に囁いた。


『《自主規制》良いぞ、歩』


 軽く嫌悪感さえ覚えていた《自主規制》が、こんなに気持ちいいと思ったのも初めてだった。

 腰を動かし、《自主規制》


「アッ・んぁっ・や・《自主規制》」


 勢いよく《自主規制》。脳裏の慶二も、快感に染まった表情で《自主規制》

 僕はビクビクと身体を跳ねさせながら、僅かに腰を動かして余韻に浸ってた。


「はぁ……」


 だけど男ってのは、《自主規制》

 肩を喘がせて薄らと瞼を開け見下ろすと、《自主規制》

 初めての強い快感に、腰が砕けてバスタブの(へり)にへなへなと坐り込む。


 慶二は、何処にもいない。今頃、空港か飛行機の中だろう。

 創さんに押し倒されたのを思い出して、慶二が居ないことに、ちょっと恐くなる……というより、寂しい、の方が強いかな。


 慶二も僕で《自主規制》って言ってたけど、ホントかな。僕が慶二でしたみたいに、僕の名前を切羽詰まった声で呼んで《自主規制》セクシーな妄想が止まらずに、僕は濡れた髪の毛をぷるぷると振って水滴を飛ばした。


 いけないいけない。また、したくなっちゃう……。

 流石に慶二みたいに《自主規制》とか、冗談でも言えない。

 あれは、冗談? だったのかな? それとも慶二、絶倫?


 また熱がこもってどうにもならなくなる前に、僕はふかふかのバスローブを羽織ってバスルームから出た。

 喉が渇いたな。牛乳でも飲もう。

 長い前髪は頬に貼り付いている。それをバスタオルで拭きながら、キッチンに行って牛乳ビンを出した。


「ふぅん……アンタが、慶二の結婚相手?」


「え!? あっ」


 突然かかった声に驚いて、牛乳ビンを取り落とす。派手な音と共にガラス瓶が砕け、牛乳がぶちまけられた。

 一瞬そっちに気を取られたけど、部屋の中に僕以外の人間が居ることの方が異常な事態だった。


 声のした方を振り返ると、茶色い巻き毛で色の白い綺麗な顔立ちをした小柄な少年が、シルバーがかった上品なグレーのスーツを着て、玄関ドアにもたれかかって腕を組んでいた。

 ネクタイは、宝石の輝くループタイだ。

 バスローブ姿で頭にバスタオルを乗せた僕を、絡み付くような視線で、頭の先から爪先まで値踏む。


「だ、誰っ?」


 慶二の留守は、僕が守らなくちゃ!

 恐かったけど、鋭く誰何(すいか)する。


「どうやって入ったの!?」


 だけど僕のそんな決意を砕くように、少年は胸ポケットから一枚のカードを取り出して、顔立ちとは不似合いに狡猾(こうかつ)に微笑んだ。


霧島(きりしま)(しん)。慶二の、あ・い・じ・ん」


 絶望に、視界が赤く染まる思いだった。

 見せ付けられたカードは、確かにこの部屋のカードキーなのだった。

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