【解】奇跡がおきたところで
タイミングって大事ですよね。それ以前の問題の時はどうしたらいいのかは分からないですけど。
(さんかげつ…かぁ)
日曜、朝、午前7時18分。休日にちょっと早起きしただけの、いつもと変わらない日。
(退会してるわけじゃないのに、連絡無し…)
さんかげつ、3ヶ月。彼と初めて会ってからの期間だ。
ご飯を食べた翌日、感謝と共に次のお誘いの連絡がきていた。友人として申し分ない彼のソレを快諾し日程調整を始めたのだが、なかなか合わず。そうしている間に連絡すら来なくなって1ヶ月。
アプリの通知は他のお知らせが面倒でオフにしているので、毎回確認しては新着メッセージ無しに落胆。彼のプロフィールは確認出来るので、辞めたりブロックされたりしているわけじゃないのだが。
(他に良い人でも見つけたのが濃厚だよなぁ…でもなぁ…)
もしそうなら一言くれたらいいのに。
一度起きた体をポスンッとベッドに沈めてスマホの画面を睨みつける。映し出されてる彼の情報は何度見たって変わらない。
「こんなん、好きみたい。」
そう、本当にそんな感じ。
でも、断定するには弱い感情。
(こっちから連絡するか?いや、でも、返事来なかったらめちゃめちゃ凹みそう…)
(…あ)
繰り返しスクロールして見たプロフを見てふと思い付いたことを実行するため、アタシは小走りで洗面所へ向かった。
◇◆◇
『次はー〇〇、〇〇ー。』
ちょっとだけ落ちてた意識が浮上する。そろそろ目的地に着くようだ。
あの後急いで支度をして家を飛び出し、電車に乗り込んでやってきたのは、彼の最寄り駅。駅前には自分もよくお世話になるチェーン店のカフェ。
(勢いで来たものの、なかなか気持ち悪い行動だな…)
早い時間でまばらな店内の、外が確認出来るカウンターに座ってモーニング。
彼が休日は早い時間から喫茶店巡りをしてると話していたのを思い出して、此処にいれば駅を使う彼に会えると思ったのだ。
ストーカーみたいだと反省するが、駅の近くにはショッピングモールもあるから買い物に来たことにして偶然を装うことはまぁ不可能ではないはず。多分。
ずっと外を見てるのもアレなので、持ってきたノートPCの電源を入れて作業しているフリをしてみる。これなら長時間滞在も怪しまれないと思いたい。
(この辺ってあんまり喫茶店とかないのか。だから休みの度に出掛けるのねぇ。)
近辺の情報を確認してみると、このお店以外でカフェなどは無いようだ。今日も既に出掛けているのだろうか。
引き続き調べものをしているフリをしつつ、コーヒーのおかわりを頼んでカップを傾けるタイミングで外の様子を確認する。時間と共に通りを歩く人は増えていき、店内も客の入れ替わりが激しくなってきた。
(うーん、2時間が限界かな…。流石にこれ以上コーヒー飲めないし…。)
元々可能性はゼロに近いわけで、本当に遭遇できるとは思っていない。
また来週にでも来るか、と帰る支度をするためにPCを閉じた時。
「……あ。」
恐らく人生で一番間抜けな顔になっていたと思う。視界の左に侵入してきたソレは、そのまま右へ流れて駅の改札方面へと消えていった。
彼と、その隣の女の人。しっかりと繋がれた手。
(うわぁ…キッツ。)
片付ける手が完全に止まってしまった。両サイドに他のお客がいなくて良かったと思う。今の自分、絶対怪しい。
(元々彼女持ちだたのか、既婚者だったのか。それとも、あの人もアプリの人なのか。)
ズキズキする胸を無視してスマホを手に取る。開いたアプリに勿論メッセージは届いていない。でもまだ存在はしている彼のプロフィール。
右上の設定を開き、ブロックに指を置いて、戻せなくなるという警告など気にせずOKをタップした。
(よし、飲みに行こう。)
この駅周辺にカフェはほとんどない。しかし、飲み屋街はあるのだ。少しショッピングモールで時間を潰して、昼から一人で飲んだっていいだろう。
外に出ると朝には見れなかった太陽がいい感じに暖かかった。
大丈夫。
これは失恋じゃない。
終わり方に納得はいっていないのですが、実らせるつもりはなかったです。モヤモヤで申し訳ないです。