あなたは異世界に行ったら何をします~30歳、童貞。ある日突然民族衣装が着物っぽい異世界に行ってしまったら、みんな下着をはいてないから下着を広めたい件~
※何も深く考えずに読んで下さい
「あー包容力があって優しくて僕の全てを肯定してくれる恋人が欲しい…」
最近の口癖がそればかりの乞ノ鳥 奏30歳、童貞の彼はしたい事やりたい事も夢も無く淡々と彩のない日々を送っていた…。
「誰とも付き合った事とかないし、恋愛がしたいわけじゃないんだけど。特別な人が欲しいんだよね」
フリーターでいまいち仕事も続かない奏は楽な方へ行きたい性分だった。
「はあ、バイト先のパン屋で貰ったパンでも齧って寝るか…」
カサカサと手に持つパン屋の袋と作業着を詰めたリュック、明日はスーパーのバイト…バイトばかりだ…仕方ない。
両親が早くに亡くなり祖父母が暮らしていた古い家に帰る前に近所の自販機で今好きなコーヒーと野菜ジュースを買い、パンの袋に入れてまた歩き始めようとした所で足元に宇宙の様な空間が出現し吞み込まれていった…。
「うえぇ!わ!なに!?酔いそう…いや本当なに!?」
宇宙空間をジタバタと動き回ったり回転したりと目が回り乗り物酔いのような気分に陥り口元を抑えつつパニックに陥っていると先に光が見えポンと宇宙空間のような穴から弾き出され地面に尻もちを着いてしまって腰を抑えた。
「いて…ん?痛くない、ここはどこだろ?」
痛みもなく土を払って立ち上がり周囲を見渡す、馴染みの近所の景色もなく周囲は昼…石や木で作られた異国の街並みに首を傾げた。
「えーあれ、いつの間にドラマのセットにでも入り込んだかな…そんな告知してなかったけど、しかも昼?……これってもしかして異世界に来たって事?」
それしかないだろう…見知らぬ場所、目の前をこちらをじろじろ見ながら通り過ぎる…着物の様な服を着た人々だが、顔は日本人ではない皆彫りが深く手足が長い良く似合っている。
「異世界来るようなキャラというか性格じゃないと思うんだけどなー」
流行っている異世界転生と言うのだろうかまさか自分がするとは…あの日本にそれだけ異世界に来たいという人々がいるのか、宝くじで1等当たるよりも確率は低いだろう。
「あーそういえばこの間ネットで異世界から戻ってきたとか言う人の話で盛り上がっていたけど、あれ本当だったのかな、それなら戻れるのかな…」
いろいろ考えながらこれからどうするか、リュックにパンを入れて取り合えず今日は野宿か泊まれる場所があるのか、何かを売って現金にしなければと思い、大したコミュニケーション能力も無いが生きて行く為にとやる気を出して街を歩いてみる事にした。
「うーん、リサイクルショップとか質屋があれば…金に換えられそうな物…あ、店長の娘さんがくれたビー玉とおはじきはどうかな」
道行く人々から感じる視線、気にしていたらダメだと自分の世界に入りつつリュックの中身を思い出せば、仕事中に店長夫婦の娘の面倒を頼まれそのお礼にその子がくれたビー玉とおはじきがリュックのポケットにあるのでそれを売ろうかと、よしと覚悟を決めて質屋かリサイクルの場所を聞こうとすればドンという衝撃でまた尻もちを着いてしまった。
「なんだ、てめえ」
「そっちがぶつかって来たんだよ、わざとだ」
「あん、てめえぶつかったせいで肩を痛めたんだ、おーいてぇ」
「そんなまっちょで僕がぶつかった位で痛める訳ない、痛めたのは僕……」
身体を起こして見上げれば、ごろつきの男がぶつかった肩をさすりながらニヤニヤと薄汚い笑みを浮かべていた。
「治療するから金を出せ」
「質の悪い当たり屋だなーお約束すぎる」
「あん、お前俺が誰だと思っている?」
「知らないよ」
弱気になってはダメだと奮い立たせ立ち上がり睨み付ける、取り巻きもにやにやと笑い周囲はそそくさと速足で避けていった。
「まあ、夢とか物語ならだれか助けてくれるかもしれないけど…まずないよなー僕みたいなモブなんかここで終わるのが妥当かな…」
「あん、何いってんだてめ!」
「金がだせねぇってんなら…」
「お前らもうよせ、やばいのはお前らの方だ」
「げ…ハオシュの旦那!」
「う……行くぞてめえら!」
背後から1度聞いたら忘れられないような声、男たちが引き攣り後ろをちらりと見て捨て台詞を吐き走って去っていく。
「うわ、すごい。美形……」
「アンタ……なんであいつら蹴散らさないんだ?」
「え…?」
「そういう態度で躱そうって魂胆かい?」
「えーと」
「まあ、いいさ。この街と国を壊さんでいればいい」
奏を助けてくれたのは見たこともない程の容姿端麗な男、金と銀を混ぜ合わせた髪を緩く束ね前に流し、左目は濃い青、右目は黒い眼帯を付け、黒に蔦模様の着物に上着を羽織った姿は現実離れした物だった。
「えーと…すみません!僕を助けて下さい!」
「ん?」
「僕たった今此処にきたばかりで…お金もないのでりさ…質屋とか知りませんか?」
「……」
とにかく普段の自分なら絶対にしないであろう見ず知らずの他人に頼む、相手…さっきのゴロツキが言っていたハオシュという男に頼めば男は目を細めて少し考える。
「私は質屋を営んでいる、儲からんから色々やっている」
「な、なら!僕の物を買い取ってくれませんか?」
「……いいだろう、私はハオシュだよ」
「僕は、乞ノ鳥 奏といいます!ハオシュさん!」
「ハオシュでいい、奏。来てくれ」
「はい」
周囲はざわざわとしているが、とにかく奏は必死になんとか野宿や金をどうにかしないとという気持ちで周囲は見えていなかった。
「ここが私の家兼店だ、どうぞ」
「おじゃまします。わ、なんか雰囲気がある店」
ハオシュに連れられて来たのは、奏がいきなり着いた場所から歩いて30分程の場所、長屋のような同じ建物ばかりの一角、石造りの箱のような形の家ドアをハオシュが開けると質屋らしい佇まい、様々な物が乱雑に並んでいた。
「奥が住居になっている、見るのは後にして進んで欲しい」
「あ、はい!進みます!」
見たいのを我慢し言われた通り奥へ進む、靴は手前で脱ぐようでハオシュも草履のような靴を脱ぎ上がった。
「台所と奥が風呂場で隣が手洗いだ他に部屋はない、ここで寝ている。布団も1つしかないからな」
「あ、僕は雑魚寝でいいです!」
「………夜は冷える、一緒にねればいい」
そもそも買い取りに来ただけな筈、先に居座られないように釘を刺したつもりがやはり泊まる気だったのかとハオシュは呆れた。
「すみません、迷惑ですよね。買い取りが終わったら泊まれる場所教えて下さい」
「1日位なら構わん、うちの店の物は盗み防止の魔法が掛けてあるから持っていけないしな」
「盗むなんて…そんな…魔法?やっぱりあるんだ」
「……使えない者もいるからな、魔法は金と時間を掛けて学ぶ。貧しい者は学べない」
「あーそ、そうなんです。貧しい家で…」
「そうか、では売るもの出してくれ」
ハオシュが金と学がないと魔力があっても魔法は使えないと教えてくれる、奏も話しを合わせるが身形は良く顔色も悪くはないとハオシュはそれは嘘だと見抜きつつ買い取り品をテーブルに出すように言う。
「えーと、これとこれをお願いします」
「これは…美しいな」
「ビー玉とおはじきです、やっぱり売れないですよね」
「いや、値段の付けようがない…」
「え」
「これらは晶石だな、しかも色付きか…悪いが私も金がある訳ではない1つだけ買い取ろう。100万リロでそうだろう?」
「100万リロ…」
価値が分からない、それに晶石…見知らぬ単語が出ていまいち呑み込めない、ハオシュが言うのであればその値段で構わないが…。
「ならば、110万でどうだ?」
「分かりました!100万リロで構いません!その金額でお願いします。それとこのビー…じゃなかった晶石を1つあげるので僕をここに置いて下さい!一緒に寝るのも構いません、お願いします」
「……少し時間が欲しい所だ」
「は、はい!お願いします!」
ハオシュは暫し考える、良い取引きだ変わった同居人が増えるだけで貴重な晶石が1つタダで手に入るのは魅力的だ、よほどこの街に不安があるのかこれが今後悪手になるか分からないがまずは1日泊めてみる事にする。
「ならば、食事にしよう。これが100万リロだ。1つこの赤い物を買い取ろう」
「は、はい!」
流石に金の種類を聞けない、コインがどさりと渡されどれも中央にひし形の穴が開き数字が刻まれている。それを数枚ポケットにいれ残りをリュックにしまい食堂に連れて行って貰う。
「美味しかった…」
「あそこは安くて美味い」
ハオシュの連れられていったのは無口な店主がいる屋台、メニューはうどんに似た茹でた麺に野菜と茹でた肉が乗り魚ベースの出汁が効いていて美味しかった。
住居兼家に戻れば空は陽が沈み暗くなって来ている、家の中の天井は晶石が使われそれが灯りを付けてくれる、どうやら電気のような物を溜めて置ける道具らしい、日本のビー玉が異世界にくるとそういう物に変わるのだろうか、よくわからないがなんとか今日明日の住処は何とかなった事に喜ぶ。
「風呂に湯を張っている、先に使うといい」
「い、いや僕は…」
「今日は客だからな、ゆっくり浸かれば良い。服はこれを」
「ありがとうございます」
家に戻りハオシュが風呂の支度をしてくれる、渡されたのは浴衣のような布と帯と身体を拭く布、礼を言って先に入る。
「石鹸だけなんだ…ハオシュさんの髪綺麗だったけどシャンプーとか使ってないんだ…良かった、桶とこれ身体を洗う軽石だよね」
檜のような香りの風呂場、桶にお湯を汲み身体を流して石鹸をつけて髪を洗い軽いしで身体を擦っていく、あまり痛くもない、全身を洗い湯で流して風呂に浸かる程よい温度で気持ちが良い。
「色々考えていかないと、日本に戻れないだろうなぁ」
そう呟くが不思議と悲しみは湧かない、此処でどうやって何をして生きて行かないと行けないのかと考えていかなければならない。
「長湯も悪いから早く戻ろう」
軽く風呂場を流し出て布で身体を拭く、吸水性の良い布で肌さわりも良い髪もごわごわせずにしっとりしている。
「……下着…」
浴衣の着付けは知っているので身に着け、着ていた服は後で洗濯の仕方を教わろうとそのままにしているが足りない物が1つそれは下着だった。
「流石にハオシュさんのを借りる訳にはいかないもんね、何処に売っているか聞かないと…ノーパンは落ち着かない」
と言いながら部屋に戻る、ハオシュが1組しかない布団を敷いてくれていたので下着を売っている場所を聞くと首を傾げた。
「下着?なんだそれは」
「この下に履くものです」
「ない、お前が住んでいた国にはあったのか?」
「………まさか、ここの人達ってこの下に何も身に着けていないんですか!?」
「当たり前だ」
「え、う、嘘!ハオシュさんも何も?」
「だから何を着けるんだ?」
奏の顔色が悪くなる、下着を身に着ける文化がない…いや、日本も昔はそうだった…確かにそんな時代があったが……ハオシュが訝し気な表情で奏を見る、奏は狼狽えつつ下着を後で洗って干そうと思い、早めに代用品になるような物を探す事にした。
「縫おうかな…裁縫得意じゃないけど」
「何か縫うなら、明日服屋に連れていこう」
「は、はい!ぜひ!」
この街…もしかしたこの世界に下着という概念はないのかもしれない、だが奏は下着は必要だせめてズボンの替え…それもそうだが今ある1枚しかない下着にも限度はある。
なるべく早く見つけようと固く誓い、ハオシュが敷いた布団に入る。
「冬が近くなると、冬支度が始まる。この辺りは雪が降り続け身が凍えそうな寒さになる」
「はい…」
「……寝るのが早いな、まあ、いいおやすみ」
ハオシュが寝る前の世間話しとして冬の話をしようとしたが奏はすぐに眠りに落ちてしまう、ハオシュも笑って目を閉じた。
何処かで犬の遠吠えが聞こえる、奏は深い眠りについた…。
では、またね恋人募集中の乞ノ鳥 奏でした…断固ノーパン反対!




