10 カーテスと父
カーテスは今現在とても幸せだ、今までも勿論幸せだったが今はその言葉の上にとてもやかなりが付く位には幸せだ。
「うーん」
「う?」
魔人の子供エクトとセレネがカーテスの膝の上で昼寝をしている、2人の頭を撫でながらカーテスはにこりと笑った。
「あー可愛い、僕ももう1人産みたいなー」
「ぶふぉっ」
「もーウォルくん汚いなあ」
「700歳以上離れた弟とかちょっと…」
「なら、ウォルくんが産む?」
「いつかはあるかもな」
居間にはカーテスとエクトとセレネとウォルゾガの他、現在黙ってゴーレム達の修復をしているタナトスとゴーレム造りをしているメートがいた。
グローリーはイザラとイデアと公園の新しい遊具造りをしに行っている、そんな昼下がり改めてカーテスは幸せを噛みしめていた…。
父たるゲーターダイルラフテスの原種であり偉大なる大地の覇者の一体から産まれたカーテスは、ゲーターダイルラフテスの2体目して亜種だった。
『お父様ごめんなさい』
『何故謝る?カーテス』
『だってお肉食べれない…』
『そんな事か…つまらん事を気にするな』
いつも、カーテスは自分が父と違う事を引け目に感じていた。
『ほら、これを食べなさい』
『はい』
『お前達も』
父は狩りが上手くいつも他の種族の亜種で分けありの子供達を引き取り、カーテスと共に育てていた。
皆父を尊敬し敬い憧れ、カーテスと共に健やかに育った。
『お前は私に似なくて良かった』
『父さん?』
『いいんだ…』
そうやって長い月日が経ちカーテスにも子供が産まれた、父に名ウォルゾガと名付けて貰った息子は父に似て肉食の元気な子だった。
狩りが下手なカーテスの代わりに父が狩りを行い、共に育って来た隣人たち皆でウォルゾガを育てた。
その間も父はこの世に3体しかいないゲーターダイルラフテスの長として、周囲をまとめ上げていた。
『息子の心を最優先にする』
ウォルゾガがある程度育つと、龍皇国から婚姻の打診が増えた。
温厚なカーテスをドラゴンの伴侶にと望む声が増えたが、父はカーテスの気持ちをいつも最優先にしてくれている。
『父さん、僕は父さんとウォルくんといつまでも一緒に暮らしたいです』
『カーテス、その願いを叶えてやりたいが。私と同じように子…ウォルゾガの気持ちと心を最優先にしてやれ、いつか旅立つ日が来たらウォルゾガの心を汲んでやると良い』
『はい…』
父はいつも真っ直ぐに正直に生きている、強く気高くカーテスには遠い存在だった…。
そんなある日ウォルゾガも1体で充分狩りが出来るようになり、他のカーテスの幼馴染みの隣人達にも獲物分けられるようになり父も喜んでいたそんなある日彼が来た…。
彼は強い剣を求め素材を探し此処まで遥々やって来た、父に素材になる鱗を欲しいと頼んでいた。
自分たちの鱗が剣になる…信じられない話しだ、父は何故必要なのか尋ねた。
剣になったとて戦に使われ多くの血が流れるのは不本意だ、彼は聖剣や魔剣からは怯えられ普通の剣を使えば撃ち合う前に砕ける、だから強い剣が必要だと。
父は了承しならばと自分の鱗、牙血肉を使い13振りの剣を打ち彼に選んで貰った。
2本は彼、1本は父、カーテスとウォルゾガも1本ずつ選び、残りは収納袋に入れてカーテスに託した。
そして2人の間にどんな話しがあったの分からないが、父は彼と共に行く事になった。
カーテスは行かないで欲しいと思ったが、父の気持ちを最優先にし笑顔で送り出した…。
しばらくして彼が剣星帝となり傍らに父の姿が在ると噂を耳にし、戻って来るかと期待したが帰って来る事はなかった。
そうしてウォルゾガが旅に出るようになり、家を開ける事が増え益々カーテスは寂しくなったが、ウォルゾガも言葉にはしないが父を探しているのだろう。
そんな日々が長く続いた在る日、家に龍皇国の使者が訪れウォルゾガが魔人の子供を育てる為龍皇国に住むという話しの書状を読み気が動転した。
会いに行ってみると飄々としたウォルゾガとグローリーと子供達がいて楽しそうにしている、ならば自分もと押し掛けた。
自分の気持ちを最優先にしてみた、ウォルゾガは困った顔をしていたがグローリー達は歓迎してくれた。
カーテスだって寂しいのだ、近所の友人達も気に掛けてくれるが家族だって恋しい。
「僕真ん中辺りがいいな」
「いいよ、コイツら寝相悪い」
「えー子供の時のウォルくんは寝ながら岩噛み砕いていたからへーきへーき」
「うん…」
「親父…」
寝る場所は子供達の側が良い可愛いから、それから子供がもっと増えるらしいカーテスは楽しみにしている。
「みんな、可愛い大好き」
「俺も好きだよ、カーテスパパ」
「俺も好き…」
「うん!」
「うー!」
「わあ、嬉しい」
「はいはい、寝るぞー」
ウォルゾガがうんざりした様子で電気を消して眠る、父に合ったら皆を会わせたいと思いカーテスは眠った。
「カーテス、ウォルゾガ…」
遠く離れた場所で1人夜空を見上げる、必ずいつか帰ると少年は暗緑のひとみに夜空を映した…。