あなたは異世界に行ったら何をします?~僕の異世界紀行と空を駆ける飛行空海艇~
「いぇーい」
「今から廃墟探検の生配信するんでよろー」
「今日は俺ら9人でやりますーちょーきんちょうー」
「みなさーんチャンネル登録評価よろしくぅ」
10人乗りのハイエースの中ではしゃぐ男女、8人のうち1人だけ後ろの座席でスマートフォンの動画を眺めて気配を消している青年、配信された動画は異世界から戻った人物がもう1度その世界に行く方法を探しているという物で視聴者たちはやらせだとコメントを出しているが、顔出しに本名迄公開している為、中には本当に異世界に行って帰って来たと信じている信者のような者達がいる。
「こんかいはーバイト仲間で集まっての廃墟探検ですー」
「なかいいっしょ」
「ん、後ろの静かなやつ?幽霊?違う違う、今回機材運びとかのアシスタントー」
「ちょっと真面目くんなやつーよろしくぅ」
車を運転しているのはバイト先のリーダーの男で、一番後ろの隅にいるのは視聴者達が幽霊なんじゃないかって言う位静かな人物、周囲はどっと笑う。
「もうじき某県有名な某廃墟病院に到着します!」
そう、後部座席で熱心に動画を観ているのは同じバイト先で今回に運びやアシスタントして金が貰えるから来ただけだ、バイト先のネカフェの改装の為暫く休業する間の稼ぎに乗っただけ、彼らとは同じバイト先というだけの繋がりだ、画面越しの青年は必死に異世界に残して友人と再会して連れ戻したいと訴えている、果たしてその友人は本当に戻りたいのか自分だったら……。
「いえーぃとうちゃくぅ」
「おおー雰囲気あるなー」
「こわーい」
「あがるー」
車が到着したのはテレビでも取り上げられ、動画投稿サイトでもよく出て来る有名廃墟病院、さっそく車から降りて動画を撮ったりしてはしゃいでる中、黙々と機材を出す。
「八角ー頼むな」
「はい」
今夜の手伝いでネカフェのバイト2日分の給料はでかい、車の所有者でリーダーの先輩は人気配信者でもあり金はあるから、八角 双芭は淡々と言われた指示に従う。
「この部屋で仕込むから、先にこれを持って撮っていてくれ。合図はスマホで伝えるからイヤホンするの忘れずにな」
「わかりました」
車内で指示された通り動画に映らないように、指定された部屋に日本人形と撮影機器を持ち込む、やらせというか事前に他には伝えずドッキリを行う為、双葉には指定した部屋で待機しリモコンを仕込んだ日本人形を走らせそれを撮るという準備に向かった。
「動画とかテレビとかでいろんな人が来ている場所に今更…」
指定されたのはよく幽霊が出ると言われている場所、1人で待機する事に恐怖もない、幽霊とかも信じていない。
割れたガラス、散乱したゴミと壁の落書きは画面越しに見れば雰囲気はあるが実際見るとそうでもない、奥の部屋に行きリュックから人形を置いてリモコンで動くか動作チェックを行う、日本人形もこんな事に使われて可哀想だ、動作チェックは問題ない、後は隅に隠れて待つだけだ。
『ザサ……もう…つく…』
「電波悪いですね、分かりました…」
『ザーたのむ……ザザ』
リュックに入れていたペットボトルのお茶を飲む、夏の終わりの秋になり掛け夜は涼しいが喉は乾く、あれから1時間、ようやく先輩から連絡が来たが山奥で電波が悪いのかノイズ交じりだがもうじく来るという事だろう、傍の三脚のビデオカメラや設置したスマートフォンが動いているのを確認し息を顰めリモコンに手を掛ければ地面に穴がいきなり空いて足が呑み込まれた。
「えっ!やば……」
違和感に気づいた時には遅い、穴に全てが呑み込まれた…。
「なんだ?日本人形?」
「おい、八角?」
「えーなになに、どうしたの?」
「いや、あいつどこいったんだ…」
「うわっ、うわっ!何これ…なんで…」
双芭が宇宙のような長い空間を滑るように落ちていく、先輩たちは困るだろういきなり撮影していた人間が消えたんだ…バイトは…いなくなってもいいかもしれないし、家だって行方不明になったら…引き払われるのか…部屋には最低限の物しかないし…でも自分はどうなるんだろうという気持ちだ…とにかく長い、その間に色々と気持ちに整理が付く…そして白い光が見えて目を閉じた…。
「ん…」
「あー起きた!」
「ね、ね、だれ、だれ」
気を失っていたのかゆっくり目を開ければ額に角を生やした子供達が覗き込んでいる、双芭は勢いよく身体を起こし空を見上げた…。
「飛行船が沢山、いいなーすごい」
「あれは《飛行空海艇》だよー」
「空海を駆ける大金持ち達の所有物ー」
「え?スカイシーシップ?なに?えーとここは」
「ここは《芥の国》!」
「…異世界かー」
空を見上げ優雅に上空を飛ぶ飛行船は《飛行空海艇》と言うらしく、この国は《《芥の国》》というらしい……。
「えーと貴方達は?」
「おれたちはインプーだよ」
「僕は八角 双芭です…」
「はっかくー」
「ふたばー」
額に角を生やした子供達が双芭の回りをくるくる回る、粗末の布を纏った子供達だが表情は明るい、さっきまで夜だった筈の空は昼、白い月が見えていて…本当に異世界に来たよと案外途方には暮れていない。
「どうしようかな…」
「はっかくー」
「ふたばー」
「くるー」
「びんぼーだよー」
「ひもじいよー」
「くるうー?」
「いいんですか?」
「びんぼー」
「ごみあさりー」
「でもいいよー」
「…よろしくお願いします」
異世界で手を差し伸べてくれる存在がいるのはありがたい、双芭は立ち上がりよろしくと頭を下げる。
不安しかないが、双芭は彼らの無邪気な笑顔に救われた。
空は綺麗だ、地上は雑然としている、はっきり言って汚い、テレビで見るスラム街のようだ。
瓦礫もあるし《芥の国》というのは正しい、異世界転移、神様とか召喚した国とかはない、本当にうっかり来てしまったんだ。
「…ステータスオープン」
本の試しに、試しに行ってみる、異世界に来たのだ、やってみる価値はある。
八角 双芭 : 不老不死 肉体年齢 19歳 現在神へ進化中 神成
所持魔法
空風魔法 空海魔法 浄化魔法 焼却魔法 闇魔法 転移魔法 死滅魔法(使用条件有り) 回復魔法
他随時公開
スキル
状態異常無効 無限収納(時間停止) ステータス隠蔽 並列思考 他随時公開
固有スキル
千弾の雨(広範囲攻撃) 死者蘇生(使用条件有り) 時間逆行(使用条件有り) 他随時公開
※《アンクラーク》よりメッセージ
《アンクラーク》へようこそ、この世界は神が暇つぶしに創造し飽きて放棄した世界です、貴方がこの世界の新たな神です、おめでとうございます、よろしくお願いします。
「………ええ……」
ステータスが出たのは良い、そしてメッセージはなんとも酷い物だ、要らない世界を貰ったっておめでとうと言われても…。
「はっかくー」
「ふたばー」
「こっちー」
「はい」
インプー達に呼ばれ双芭は歩き出す、生きて行く場所が変わった位だ、とにかく生活の基盤を作らなければとインプー達の後をついていった…。
…それではまたお会いしましょう、八角 双芭でした…。




