あなたは異世界に行ったら何をしますAnotherSid Extra×MoneyofMoney〜渡る世間は金かねマネーの力でなんとかなるかも?〜
「ありがとうございましたー」
荷物を受け渡し頭を下げてマンションから出る、下に置いている相棒こと荷物を収めた白いバンの運転席に座って、シートベルトをしてエンジンを掛け周囲の確認を行い走らせる。
大手通販会社の個人事業主で始めた運送業、歩合制で結構な額を稼ごうと思うと立派な社畜だが、面倒な人間関係は然程生じない、客も大半は荷物の引き渡しや置き配で接客もそこまでない。
三芳 那由多は今日も1日安全運転で荷物を運ぶ、趣味の為に…。
「うう、あーやっと明日は休みだ…する事もないけど」
仕事が終わったのは20時を過ぎた頃、倉庫の定位置に車を止めて荷物が残ってないか等のチェックをして自分の荷物を取り会社のデバイスを返せば今日の仕事も終了だ。
運動不足解消の為に会社から自宅まで30分を歩く、明日は休みだから洗濯や掃除をして過ごそうといつも通りの休日の予定を立てた。
スーパーの値引き品を買い、遅くまで営業しているドラッグストアで栄養ドリンクと日用品を買い込み家路に着く手前にふと足元に浮遊感を感じ足元を見れば宇宙空間が広がぽっかりと広がり那由多を呑み込んだ…。
「あーもう疲れ過ぎているのかな…死ぬのかな…」
宇宙空間を何処かへ滑っていく、妙に落ち着いてしまっていて荷物を抱えて死ぬのかな…と思いつつその時を待った…。
「って、ここは…夜だった筈…」
宇宙空間から弾き出されて尻もちを尽き、空を見上げれば青空に白い月と青い星が輝く、日本の空じゃないのかもしれないと立ち上がり周囲を見渡せば森が広がり……一応頬をつねってみれば痛い。
「はぁ……って!溜息ついている場合じゃない!僕の金!貯金!」
見知らぬ土地にいきなりいる事も死んだかもしれない事も帰れないかもしれない事もこの際どうでも良い、問題は無趣味というか唯一の趣味の貯金…その金がどうなってしまうかが今の問題だった。
「あーなんで…ここどこ…あれかなーなんかファンタジー?トラックに轢かれたり動物守ったりすると行っちゃうやつかなーあーいうのって残った家とか貯金とかどうなるのかなって思ってたけど…どうなるんだろう」
『自然に辻褄が合うように調整されます』
「そうなんだ……ん?何処からか声が…」
『申し遅れました、マスター私は貴方のナビゲーターです。貴方のスキルです』
「え?姿とかなのに声だけ…やっぱり仕事のし過ぎでおかしく…」
『仕事はし過ぎていますが、マスターの脳は正常ですね。ここは《アストロトス》という神無き世界です。神がいれば話は早かったんですがね、マスターが思っている通りの異世界転移です』
何処からか聞こえる丁寧な男の声に那由多はキョロキョロ周囲見渡すが、木と草だけしかないどうやら耳に直接語り掛けているらしい。
「異世界転移、俺の貯金は?」
『最初に気にするのがそれなのは実にマスターらしいですね、ステータスオープンと声に出して下さい』
「え…僕もう32歳なのに…恥ずかしい」
『…誰もいません』
「そうか…えーステータスオープン…なんか出た」
自分をナビゲーターという声に従い恥ずかしいがステータスオープンと言えば目の前に画面が浮かび、後退りそうになるのを耐えて画面を覗いた。
三芳 那由多 : 不老不死 肉体年齢 32歳
所持魔法
土魔法 水魔法 火魔法 風魔法 岩魔法 浄化魔法 金属魔法(※金が生み出せる魔法じゃないです )
スキル
状態異常無効 無限収納(時間停止) ステータス隠蔽 攻撃無効※ 転移
固有スキル
ナビゲーター 車(※ガソリン代わりに魔力が必要 メンテナンスには金が必要)
成金(金を稼げば稼ぐほど出来る事が増える)
所持金:1万3,211円 (チロ)(貯金700万円)
「………………良かった、貯金が表示されてる…ほっ、これ使えるんだよね?」
『使えます、もっと他にも気にする所は多々ありますよ、不老不死ですよマスター』
「あっ、ほんと…それはいいや、すぐ死なないならいいんじゃない?成金とか、あはは…変なスキル?だね」
貯金が一緒に来たのが余程嬉しいのか、後は特に気にしない感じでナビゲーターが呆れている。
「えーとどうすれば良い?日本には戻れないんだよね?」
『神がいないので交渉は不可能ですね、現在戻れる手立てはありません』
「明後日仕事で持ち場があるんだけど」
『先ほども伝えた通りです、消えた者の穴埋めは辻褄が合うように書き換えられます』
「というと?」
『いなくても誰かがマスターの仕事を行いますし、住居などから物は消え人々の記憶から薄れていきます』
「そうなんだ、良かった。仕事穴が空くと大変だから…この後どうしたらいい?」
『どうもしません、役目や使命もないので自由に過ごすだけです。私がフォローします』
「それは助かる、よろしく。住む家とか食料とかどうしようか、これしかないけど」
『スキルの車がありますからその中で寝るといいですよ、家もマスターの魔法で出来ますし、風呂等も出来ます』
「そうなんだ、君がいて助かる。よろしくね、さっそく……車を…どうやって出すの?」
『収納空間からだします、車をイメージして下さい』
「分かった、本当に出た。これ会社のバンだけど」
『問題ありません、ただの複製品です』
「森の中走るの無理そう」
『走れますよ、魔力で走りますから。障害物を避けて水陸両用で走れます。成金の力を使えば空も飛びます』
「それ…車?」
『車です』
「住むとこも問題ないから、食事か…君は食べないの?」
『必要ありません、気遣いは無用です』
「1人で食べるのも気が引けるけれど…」
『気にせずに、日本から持ち込んだ物は消費しても元に戻ります。ちなみに栄養ドリンクはポーションに変わっていますよ。状態異常無効のマスターには必要ありませんが、毒や疲労が効かなくなりましたから』
「え、それはすごい。今度売ろう…そして金を稼ごう貯金減るのは嫌だし」
『はい、車で走らせて1日程の場所に国があるのでそこに向かいましょう』
「すごいなー助かるよ、君がいなかったら僕は何も出来ずにずっとここにいたかもしれない」
『……想像できます』
「改めて、よろしく。じゃ行こうか」
『はい、マスター』
「マスターはなんだかくすぐったいな、那由多で良いよ」
『はい、那由多様』
車に乗り込みいつもと同じようにシートベルトを締める、那由多はナビゲーターがいて本当に良かったとハンドルに手を置けばエンジンが付く、車を走らせれば舗装された道路を走っているような感覚だ、木や草が車を避けている印象だった。
「えーと異世界で目標は金持ちになる事」
『那由多様なら、すぐに叶えられますよ』
ナビゲーターの言葉真実になるのは少し先の話し、大国一の富豪成金として成り上がる彼の物語は今開幕した…。
ではまた何処かで…三好 那由多でした…お金は大事…