46 依存都市 Ⅳ 宿泊
「これが外神の家…これはすごいな、本当に泊まってしまって良かったのかな?」
「はい…お風呂先にどうぞ、僕は食事の支度をしておきますね。服を洗濯してもいいですか?」
「……風呂?洗濯?」
「はい…案内しますね」
「頼むよ」
鉱石を採掘したすぐ側で家を出して中にイォを入れる、靴を脱ぎ興味深く周囲を見ていたイォに風呂と服の洗濯を尋ねれば少々首を傾げられるので風呂場へ案内した。
「家の中に風呂があるのか?それに石鹸も」
「はい、洗濯もします…服の中に何か物が入っていたら出してください…そっちの瓶は頭洗う物で隣の瓶は髪を洗った後に髪に付けて洗い流す物です」
「外神…」
「はい…」
「君は貴族かい?」
「違います…」
「石鹸もそうだが…髪を洗う用の石鹸水等見た事がない、それに服は家で洗えるのか?」
「はい…服はみなさん自宅で洗わないんですか?」
「洗濯屋がある、頻繁に使うと高いんだが…家で洗っている所もあるな…成程…では風呂に入らせて貰うとしよう」
「着替えはここに置きますね…」
少し考え込みイォが興味津々で早速風呂へと向かうので、着替えをとタオルを置いて食事の支度を始めた。
「外神!すごいな!あの風呂ははまってしまう!というか作り方を教えて欲しい。石鹸や髪を洗うあの石鹸水も!」
「はい…食事の支度は大体出来たので僕も風呂へ行きます…座っていて下さい」
「それは悪いな、何か手伝いたいのだが…」
「では果物を剥いて欲しいです、飲み物はその箱に入っています」
「ああ、分かった」
興奮気味のイォが風呂から上がる結構な長湯だった、既に食事が出来上がっているので冷めないように収納に入れている、イォに果物ナイフを渡し風呂へと向かった。
「綺麗な細工…」
「あの箱すごいなく飲み物が冷えている、果物を切ったよ。少々はしゃいでしまった」
テーブルに置いてあるのは様々な形に切られた果物、飾り切りというのだろうかどう切ったのかさっぱり分からないが花や動物、皮を使って幾何学的な模様を施された物に食べるのが勿体ないという気持ちになった。
イォはイォで冷えた果実水を飲んで嬉しそうにしている、シンプルな装いをしていると若く見えるがやっぱり年齢不詳だった。
「食事にしますね…」
とりあえず先ほど作ったキノコと野菜のスープ、収納に入れたままの焼き立てのパンとジャムを数種類、ミートボールと茹でた肉を割いて香辛料と酸味のあるフルーツを絞ったサラダに、綺麗に切られたフルーツが並びイォが驚いている。
「す、すごいご馳走だな…なんだか気を遣わせてしまった…」
「いえ…あり合わせですみません、お茶もあるので好きに飲んで下さいね。お酒もありますけど…」
「酒まであるのか?興味深いな少し貰っても良いだろうか?」
「はい、割りますか?」
「割る?とは」
「そのままでも良いですし、水や氷で割っても良いと思います…」
「……なら氷?」
果物を漬け込んだ果実酒と作ったグラスと氷の中に注ぎ食事が始まる、イォも良く食べる酒もお代わりをし多めに用意したつもりだったが無くなり、パンの追加を出してスープのお代わりをついだ。
「外神はあまり食べないのかい?」
「元々少食です」
「それは勿体ないこんなに美味しいものをたくさん食べられないとは」
「…ありがとうございます」
イォは心底気の毒そうな顔をする、外神は充分な量を食べているので綺麗に切られた果物を口に運んだ。
「そうだ、外神お願いがあるんだが私に石鹸水や風呂の造り方を教えてくだないか?あんな素晴らしい物とは離れがたい。あの髪用の石鹸水も素晴らしいなだから外神の髪は綺麗なのだな」
「いえ…」
元々日本にいたのであれば風呂シャワーは毎日入りたい、そこは譲れない異世界でこれが出来なかったら日本に帰りたいと思っていたかもしれない。
「あの風呂良い香りもしたが」
「今日は果物の皮を乾燥させた物を入浴剤にしてみました」
「風呂に香りも付けるのか?一国の王だってそんな事しないと思う」
「大した事ではないので…」
「君にとってはな…外神はいつ位に休むんだ?」
「まだ暫くは起きています…」
「そうか…なら泊めてくれた礼にとはならないかもしれないが、本を譲ろう」
「良いんですか?嬉しいです…」
「良かった」
そう言ってイォが収納袋から出したのは古い本、鉱物を丁寧に緻密に描いたイラストが多い物や形に魔石の使い方の本、刺繍の本や歴史の本等ジャンルはバラバラで何処かあの本が好きなストフスを思い出した。
「こんなに良いんですか?」
「もちろん、もう読んでしまった物だしね。よければ今夜の読み物に外神の本を幾つか貸して欲しい」
「分かりました…」
外神は魔獣の本や小説の様な物語の本、薬草の本等をを渡した。
「客間があるので、そこを使って下さい」
「何から何まですごいな」
「いえ…」
イォは本を受け取り顔を綻ばせた、客用の部屋に案内するとそこでもまた驚かれた。
「こういう宿で泊まるとすると最低5万ログは飛ぶな、こんな質の良い宿はそうそうない」
「……また明日…」
「ああ、外神また明日」
明日は風呂や石鹸水、冷蔵庫の造り方を教える事になり少し早めに休もうかと自室に戻る。
自分で採った鉱石を棚に幾つか並べ暫く眺めた、昼の顔と夜で見せる石達の表情は違った。
輝きも色も別の石の様に見える、そうしていつもの時間位にベッドに潜り込んだ…。




