39 ゆっくり
外神は基本動作がゆっくりとしている、TPOの使い分けはある程度と行うがそれ以外はゆっくりだ。
《エモスド》の街は何処か忙しない皆足早に歩く、印象は合わない感じだった。
元気な市場、活気もある、人々は足早で買い物も早い。
「………」
品揃えも良い、値段も程よいのでじっくり見たい所だが落ち着かない。
少し先に肉屋を見つければ、人だかりが出来ているので通り過ぎるついでに横目でちらと見れば、捌いたはがりの肉が風魔法で吊るされ、客が求める部位と量をその場で切り取り売っていた。
「………」
面白い、前に日本で見たマグロを解体してその場でトレイに乗せて売るような物だろうか、子どもの時に見たマグロの解体面白かったなと思い出し暫く遠目から見てその場を立ち去る。
「どうだい?うちのスープ!豆と木の実のスープさ!」
「…1つ下さい、この器にお願いします」
「あいよ、綺麗な器だね」
優しいふわりとした匂い、元気の良い店の女性と目が合えば進められ1つ貰う事にする。
「1杯300ログだよ」
収納袋もどきから器を出して入れて貰う、この世界は洗剤は高級品だから使わず洗う店が大半だ、自分の器に入れて貰えれば洗う手間が減り安くなると知ってそれからは器を出す事にしていた。
「美味しい」
幾つかの種類が入った豆は口で溶け、細かく刻んだ木の実は歯ごたえがあり腹に溜まる、味は薄いが豆の味がしっかりする。
周囲の人々は立って食べ次から次へ器を返しにくる、それに倣い立って食べるがなんとも食べ辛い、時間を掛け完食し浄化魔法を掛けて器をしまいまた歩く。
「いらっしゃいませー」
市場を歩くと子どもが露店を出している、見れば見慣れぬ動物を木で彫った物が並ぶ、可愛らしいのから細部にこだわった物まで、だが客は素早く足を動かし見向きもされない。
「見てもいいですか?」
「いらっしゃい」
「しゃい」
聞けば兄弟だろうか、愛想と元気よい笑顔で出迎えてくれる。
子供苦手だ、接点も少ないだからあまり関わらないように手早く見ていこうと思った。
「兄ちゃんが彫ったの上手でしょ」
「でしょ」
「……はい、1つ幾らですか?」
「うんと……300ログ!です」
少年が少し考えて指を3本見せる、弟も兄を見て真似している…原材料は拾った木だから掛かったのは時間と技術、特に鳥の置物は嘴や羽が凝っていて見事な物だった。
よくよく見れば兄弟はの来ている物はボロボロで汚れている、身体も小さくて細い、生活がどう成り立っているのかは定かではないが貧しいのだろう。
「これ、全部貰えますか?」
「え、え、うん!いくらだろう…えと…」
「6,000ログですね、20個あるから。これは……気持ち?です」
懐から2万ログ分のコインを子供たちに渡し、置物お全て収納袋もどきにしまう帰ったら並べる為の棚でも造ろうかと思い立ち去ろうとすると、兄の方から声を掛けられる。
「あ、あのまだ家にいっぱいあるから!見に来て」
「きて」
「……」
今迄の経験上この誘いに乗ってしまうと面倒な事が起こるそう思う、本当に心底…だが品物が売れて嬉しいのだろう……家にあるから買って欲しいというのではなく見て欲しいと言う純粋な子供らしさに了承した。
「ここが家!」
「いえ」
「……」
「兄ちゃんは今森に採取に行っているから、売れたって言ったら喜ぶよ!入って」
案内されたのは所謂貧民街という物なのだろう、探しい街中から少し外れれば木で簡単に作った家、布を被せてテントにしたような家、様々な臭いが混じり…顔には出さないが内心長居はしたくないと思いつつ案内された……地面に棒を刺して継ぎ接ぎのだらけの布を被せた家とも呼べない物に案内されて固まってしまう。
布の隙間から潜っていまう兄弟は身体が小さいから入って行けるが…強い風が吹けば飛んで行きそうな代物、布を捲って中を覗けば…。
「え?」
「入ってー」
「てー」
以外に広い…というか外観と中の広さが合っていない、鑑定してみれば家?家ですか?うーん…この布はわりとこの辺りでは主流のテントの材料になる物です、収納袋にも使えます、魔力の固定は魔石で出来ます…家を手に入れるよりは安いですね…なんとも歯切れの悪い鑑定結果、成程と思いその布後で買おうかと思いながら家の中を見れば雑然としていた、3人分の物が散らかり何処で寝ているのかも分からないが、少し奥には木の細工物が沢山置いてあったので見せて貰う。
「ドラゴン?亀?蛇?それに羽が8枚の鳥?シャチ?ペンギン?」
「これはねーぎんゆーしじんが歌っているのを聞いてお兄ちゃんが彫ったの」
「なるほど…」
「これ、これ」
「これはオオカミ?」
「それ、ジャニのお気に入り。俺はジャテ、弟はジャニ」
「僕は外神といいます」
弟のジャニが服の裾を引き、オオカミが空に向かった吠える木彫りを見せてくれる、そのオオカミの背中には水晶のような突起が生えていたが緻密な物だし、置かれている置物もどれも見事な物だった。
「おれのいちばん好きなのはこれ!」
「これは…何…」
兄のジャテがお気に入りと言ったのは、少し太めの丸太をそのまま使って彫った丸い球体に沢山眼が付いている…全て閉じているが、リアルで緻密な分気味が悪い物だった…。
「わかんない、お兄ちゃんはちょっとまえにこの街に来た見世物小屋の手伝いをした時にちらと見た物なんだって」
「………」
こんな物がこの世界に存在するのか、しかも見世物小屋に…実物は少し見てみたいような見たくないようなそんな感覚が生まれる。
「にー」
「兄ちゃん、いつもならもう帰ってくるんだけど」
「お兄さんは1人で行ったんですか?」
「ううん、ここに住んでる人達で行ってるー大人や大きい子供は行くよ」
「そうですか…」
にしては確かに遅い、もう夕方も過ぎる、結構な人数で行っているなら迷う訳でも無いだろう…」
「お、おい大変だ!森に行った連中が!」
テントもどきの外で息を切らし誰かが慌てている、何か事件が起きたのか…厭な予感しかしない…




