18 お酢が欲しかっただけなのに…
「……ワインビネガー…思ったよりも酸っぱい…」
「だろ?な売れないぞ」
樽の中のワインビネガーをコップに掬って貰う、濃いし酸っぱさがきついが問題ない、主人が不安そうに見ている。
「まず…これを水で割ります、お湯でもいいです…」
水を魔法で用意し、お湯は店主が用意してくれ、小さな鍋にも水を張り砂糖と蜂蜜と水ワインビネガーをいれてそれも焚火を熾して煮ていく。
「お湯…酸っぱいが飲める…」
「水で飲むとさっぱりします!」
店主と従業員がコップで飲んで目を見開く、酸味があるがうまい。
「瓶に果物と砂糖を入れて2日程漬けて果物を食べたり、お湯か水で飲んで下さい」
「おお、こんなきれいな瓶見た事ねぇ」
「すごいすね!こんな中も赤くて果物が入って綺麗です!」
「後は野菜を切って瓶に入れて2日漬けて食べてみて下さい」
「きれいなもんだ!」
「あ、こっちの飲み物出来たっす!!」
『うま!あちぃ』
コップに淹れて出来たワインビネガーのホットドリンクを飲めば美味いと唸る、酸っぱさがクセになると喜ぶ。
「いくらですか?」
「ちょっと待ってくれ、1樽はうちで飲みたい!」
「2樽で10万ログでどうだ!」
「はい……」
「あ、あの!もしこれをうちの店で造って飲み物を売っても良いです!?」
「あ、おいこら!」
「………飲み物は良いと思います、果物と野菜漬けは管理が悪いとダメになると思います。自家消費にした方がいいです……」
「あーそうだなこんな綺麗な瓶なんか仕入れたらとんでもない金額になるからな!ありがとうよ!兄さん!ダメになっちまったもんを活かしてくれて…これはうちの正真正銘の美味い酒だもってけ!」
「いえ…はい…売ってくれてありがとうございます…」
10万コインを支払い樽と貰った酒を収納袋にしまい店を後にする、後日…この酢のドリンクが噂になりこの店がワインビネガーを売って国一番の大きな酒の商会になっていく…のはあまり関係のない話し…。
テントの家に戻り木を何本か出す、すっかり家周辺は木々生い茂る庭のようだ。
シナモンの様な木、スパイスを木に吸収させカラフルな実や葉が繁る木が生まれる。
「酢…元々葡萄?……………」
果物が成る木にワインビネガーを吸収さればリンゴもどきはその色に染まり食べてみれば…酢だ、酸っぱいし果物の酸味もあり中々良い物が出来た。
一旦それらの木は置き樽のワインビネガーでピクルスと酢漬けを作り始めた、浄化魔法を瓶にかけ野菜を縦に切っていく。
ピクルスはピクルス液を作る、小鍋にワインビネガー、塩、レモン、香辛料、香りの良いローリエに近そうな葉を入れて
煮立たせる、食べるというか…その過程が好きなのかもしれない…異世界に来てそう思った。
好物や嫌いな物…特にない、日本で食べていたあれやこれや食べたいという気持ちは湧いて来ない。
誰かに振る舞うという気も…あまり無い、入れ物に野菜を詰めてワインビネガーを注いで棚に並べる、綺麗だ。
「…………………」
冷めたピクルス液を注いでそれも並べる、明日は果物から酢を作り石鹸水に混ぜたりしてみようか。
気付けば夕方……昼も食べていない、魚を捌いてスープにし白身は塩を振り軽く炙って野菜と混ぜてサラダにし…これでいいと果物を剥いて夕食にした。
「本……ブックカバーと糊…」
食後にあっさりしたお茶を飲みながら、本屋から買った本を読む…2軒目の本屋で買った本は糸等で留められている為に脆い、布と糊があるから本の修復とブックカバーで保護しようと準備する。
糸で留められた本は糸を外し背表紙になる方に糊と水を混ぜた物を塗り、紙で背表紙を作り他の本を重しにする。
角等に出来たシミは道具屋で錆びていたヤスリを直したもので削り、開いた途端にページが取れた物は糊を塗り慎重に貼り付ける……気が付けば真夜中とも言える時刻、一先ず作業をやめて風呂に入る、ワインビネガー少々と薬草の風呂に入りぼんやりと風呂に浸かる、明日は家から出ずに作業しよう、入れ物も出来たらまた売りに行っても良いし、他にも金を稼ぐ方法事を考えよう。
魔石自体は効果だ浅い階層なら独りでもなんとかなるかもしれない、乗り気はしないが行くだけなら行ってみても良い。
「生活は大変…」
ただ食べて寝るだけならこれで十分過ぎる、それで良いのかもしれない、魅力的だ。
人が好きでもない、自分が好きでも無い、仕事もしたくないが生きているのならしなければならない事はしないとという意識はある、髪を洗いワインビネガーと蜂蜜を石鹸水に混ぜた物をリンス代わりにして髪濯ぎ、身体を洗う。
身体を風魔法で乾かし、良く冷えたレモンもどき水を飲み、ベッドでゴロゴロしながら枕も欲しいなと思いつつ、気に入った鳥のタペストリーを眺めながら瞼を閉じた。
その夜綺麗な青い2羽の鳥が枝に止まり仲良さそうに身を寄せ合う夢を見た、ああ、絵の中ならば絵が在り続ける限りずっと一緒なのか、それはある意味永遠なのだろう、それが幸せなのかきっと万人が見ればそうだと答えるだろう、誰の事も好きになった事が無い自分には分からない事だった…。




