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あなたは異世界に行ったら何をします?~番外へん 開店中~  作者: 深楽朱夜
あなたは異世界に行ったら何をします?~番外へん 開店中~

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異界の天屍 ヴァンユモゼナの章

天屍ヴァンユモゼナは欠伸を1つ嚙み殺す、退屈だ退屈でどうにでもなってしまいそうな程に退屈だ…だが、ヴァンユモゼナ以外は退屈処ではなく、ヴァンユモゼナの眼前にはすぐ足元に死が手招きをしている状態の世界が写っていた。

「お前だけは!」

「お前さえ屠ればこの世界は…」

「やっと此処まで……」

「みんな…仇は必ず…」

「お前を打ち倒し世界を取り戻す」

RPGのゲームならラスボスの最終決戦のムービー挿入といった場面、5人の勇者パーティが文字通り命掛けで此処まで長い旅路を経てやって来たのだ。

「……私を討てば世界に平和が訪れ…めでたしめでたしですか…精々虫けらの勇者共頑張ってみて下さいな」

ヴァンユモゼナは宙に浮かび傷だらけ満身創痍の勇者達を見下ろし退屈気に伝える、勇者達は歯を食い縛り攻撃を始めた…世界最後の全てを賭けた死闘…。


「おしまいおしまい…世界が滅んでしまいました」

ヴァンユモゼナの背に生えた7枚の、白黒金と淡い粒子で構成された翼と耳の部位に生えた白い小さな翼をひらりと動かしパチパチと白い手を叩いた。

ヴァンユモゼナの足元に転がる勇者達の屍、この世界の生命がヴァンユモゼナを残し潰えてしまった、

「ではどうしましょうか、このままここにいてもいいですが……ああ、《異界渡り》成程この世界を滅ぼしたご褒美でしょうか」

目の前にステータス画面が浮かびステータスが書き換わっていく、《破壊者たる天の屍》《異界渡り》が付け加えれれ大輪の花の笑みを浮かべならばと空間を裂いて他の世界に行く事にする。

「弱いから滅んでしまったのです」

そう言い捨て、ヴァンユモゼナは滅んだ世界を後にした…。


「この世界…病んでいますね…私が滅ぼすに値するのでしょうか?」

「そう思うならば…この世界から出て頂けると嬉しいのですが…」

「…こんにちは、挨拶は合ってしますか?」

「はい、ですが今は夜なので…」

「そうですね、こんばんは。私は天屍ヴァンユモゼナと申します」

「こんばんは…外神といいます」

《異界渡り》を使い訪れた見知らぬ世界、ヴァンユモゼナは外れを引かされ少々腹を立ててみる、病んだ世界…つまりは死に掛けの世界だが…来て早々出迎えがあるとは外れはそれで相殺させようと肉体も魂も全てを泣き笑いながら差し出す狂人たちが跪いて乞う笑みを浮かべて、やる気も覇気も生気もない虚ろな男に向かって挨拶をする。

「おいー外神ーヤバいの来たなーどうする?」

「このまま帰ってくれませんか?」

「厭だと言ったら?どうします?」

虚ろな男の背後にいる数名が警戒心を露わに此方を見ているが、眼の前の男からは何も読み取れない。

「出て行って貰うか…討ちます」

「クス……出て行くのは、今来たばかりですから」

「お茶位は出します…」

「それは魅力的なお誘いですが、今は喉よりも別な渇きを癒したいですね…」

「そうですか」

「その前に1つ貴方は《神の代理者》ですか?」

「…?違います」

「そうですか」

「ゼナドさん、メシュレラさん、ギーギスさん…始めます結界を任務ランク《疵渦級》天屍ヴァンユモゼナ討伐開始します」

『了解』

「結界は問題ない」

「この辺り一帯の退避も完了している、暴れたい放題暴れられるぞ」

「しかし、あんな綺麗な生物見た事ない」

メシュレラ、ギーギス、ゼナドが外神の合図に頷き、距離を取って防御結界の維持に専念する事にした……。


「と、そのような感じで解体されかけ今ここにいます。外神との戦闘での相性は最悪でした。翼も7枚全て引き千切られ外神の収納の中に納められています…」

かつての過去を振り返り上品に茶を啜るヴァンユモゼナ、ちょっとした茶会の席、イシュター、綴、ヴァンユモゼナとゼナド、カトゥーシュカ、トラングとアガニータという面子だった。

「なるほど…異界の者は外神の討伐不可ではないからな」

「ええ…それはもう徹底的に」

「翼を返してもらえないんですか?今のヴァンユさんなら返して貰えると思います」

「そうですね、以前に外神から返すと言われたのですが、私が要らないと言ったのです。不便はありませんし」

「翼を失ってもお前は綺麗だからな」

「ゼナドもこう言ってくれていますから」

「へーあま」

ゼナドが微笑み、トラングが甘いと舌を出す。

「それほど、ゼナド殿はヴァンユモゼナ殿を愛しているのでしょう」

「ああ、俺の全てだ」

「ゼナド…」

アガニータが木の実を摘まみ、愛し合う2名を眺めてからカトゥーシュカに微笑みかけ茶の追加を頼んだ。

「俺にも」

「ああ、ほら。砂糖は1つだろう、アガニータ殿は2つですね」

トラングも飲み終わったカップをカトゥーシュカに向ければ、角砂糖も入れて2名に渡した。

「ありがとうございます」

「外神さんはすごく強いんですね」

「ああ、魔力が底なしだからな持久戦に持ち込まれれば魔力が尽きる方が敗けだな」

「私もほぼ底なしですが、魔法…魔術に頼り切りで物理攻撃に脆いという事を知りました」

綴が尋ねればヴァンユモゼナは遠い眼をしている、翼を捥ぎ取られるのあの激痛は二度と味わいたくはない、翼を失い弱体化はしたがそのお陰で《アタラクシア》の神々からも正式にこの世界に住める許可を、ソスォサチとアムドキアと共に貰い晴れてこの世界の一員になれたのでそれはそれで良いのだ。

「今日もお茶が美味しいですね」

「そうだな、明日の茶も美味いぞ」

「そうですね…」

ゼナドの笑顔に朗らかに笑う、あの時外神に敗北して手に入れた物は多い、失った物よりも遙かに…ヴァンユモゼナは《異界渡り》で最初に渡った世界が《アタラクシア》で本当に良かったと心の底からそう思っていた…。



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