AnotherSid×売れない男は異世界で夢を見る track.02:男は馬車に揺られて
「う…」
ガタンガタン、南へ向かう荷馬車に乗り込んだ鍔騎とサック…とりあえず次の街迄1人1,000アロ、安いのだろう…今は金に余裕がない上に鍔騎の背にはベース言う大荷物、別料金を取られずに済むだけマシと尻の限界を我慢で乗り越え、次の街で金を少しでも稼いで少しでも旅を快適にしようと色々考えつつ、隣のサックは静かにフードを被り目を閉じて寝ているのだろうか微動だにしなかった。
寝ているのかと気を利かせ話し掛ける事はせず、荷馬車の乗客を見てみる事にした。
乗っているのは冒険者だろうか4人、結構な装備をしていてガタイも良い連中だった。
サックが言うにはこの国も他の国も小競り合いや戦争、盗賊や人攫いに略奪もある危険な場所しかないと…鍔騎は内心溜息を吐きながらどうやってこの世界で暮らして行けば良いのか、冒険者になったとして果たして稼げるのか悩みは尽きない、日本でだって金を稼ぐために色々仕事はした、好きな愛している事だけで食ってはいけないのだ。
「この先、小休憩をとるぞー」
御者が後ろに声を掛けてくれたのでほっとする、少し先の木の下には露店がありそこで何かを買って食べられるという事だろう、パチリと目を開ける人形の様な子だなーと鍔騎は思いながら停まった荷馬車から降りた。
「さ、食べよう。腹減ったな」
「良いんですか?」
「もちろん、さ、何が美味しいのか教えてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「子どもがそんな事気にするな」
小休憩は馬に餌と水をやり終えるまでのようだ、露店では竹筒のお茶といかにも固そうなパンとどす黒い何の肉か不明な干した肉、リンゴのような梨のようなその中間の果物……というかそれしかないのでそれぞれ2つずつ買う、全部で1,000アロ…安いので果物を追加し、その隣の露店は雑貨屋の様で売っている物を見つめた。
「……これ枕かな後は肩掛けカバンを2つずつ貰うよ」
「あいよ、2,000アロね」
「ありがと、はいサック君」
「良いんですか?」
「いいんだよ、これを馬車の椅子の下に敷くと良い」
「ありがとうございます」
木の下に座ってバックと枕を渡し食事を始める、サックが本当に良いのかと何度も確認して都度鍔騎が頷いた。
「ありがとうございます、鍔騎さん」
「なあに、これで少しは旅も楽になると良いけどな」
簡単な作りの肩掛けバッグと綿ではない、何かの植物の実を入れた枕をサックが嬉しそうに抱えている歳相応の笑みに鍔騎も笑った。
固いパンと塩気の強い干し肉をなんとか齧り、残った物は乗せられて葉に包んでバッグにしまい、竹筒の水筒にお代わりの茶を淹れて貰いまた馬車に乗り込んだ。
意外に枕を敷くと大分振動が和らぐなーと感心し、鍔騎もウトウト隣で目を閉じているサックに倣い寝入ってしまう。
「鍔騎さん、着きましたよ」
「ん、おお。すまない」
「いえ」
サックの声で目を覚ますとサックの身体に身体を預けていたようで慌てて謝れば首を緩く振り、馬車を降りるとすっかり夜になった辺りは薄暗い、一緒に乗っていた冒険者?達も何処かへ行ってしまい、取り合えず安宿を捜す事にした。
「風呂とかってある?」
「……公衆浴場か外で身体を水で洗うかですね、風呂付の宿はかなり高いです」
「そうか…宿を見つけたら公衆浴場に行こうか」
「分かりました」
「腹減ったな、よし酒場に行こう。明日は仕事探しをしよう」
「そうですね、次の場所に向かうのにも金が必要ですから」
「そうだな、よし宿を探そう」
「はい」
そうしてサックも初めて来た街で宿を探す事にした、何にしても金は掛かる、宿を探そうと夜の割と静かな街を歩いた…。
「あん、この国で1番安い宿がここかよ」
「そ、そうですよ」
「おれは雑魚寝で寝るだけでいんだよ、なあ?6,000アロはボリすぎだろ?」
「そ、そんな事はないですよ?」
「あ?へぇ、なあ、ここ帝国領だろう?」
「は、はい」
「許可取ってんのか?」
「なな、なんのことでしょうかぁ?」
「娼館の許可だよ。2階の奥の2部屋でよろしくやってんよな?」
「ししてませんよ!?お連れの方々ですよ?」
「へぇ、じゃ、騎士団呼んでいいよなあ」
「あ、あ…」
安宿の受付に入った鍔騎とサックの目に最初に飛び込んで来たのは、少年が片手で宿の亭主だろうかを片腕で持ち上げている所だった。
「……なあ、サック君。許可のない娼館は違法なのか」
「はい、バレなければもしくは賄賂を渡して目溢しをしてして貰います…彼のやり方は暴力的ですが脅しには効果的です」
「へぇ、俺達はどうする?とても営業って雰囲気じゃないしな。安いわけでも無さそうだし」
「そうですね、野宿しますか?」
「そうだなー俺も酒呑んで終電逃して野宿とした事あるし、野宿しようか」
「?はい」
「まーまーそこの親子?お2人さん宿代割って1部屋とらねー?外よりかまだマシだろ?な?6,000アロ割って2,000アロでどうだ?」
「ひ、1人6,000アロです!」
「あん」
くるりと回って出口に向かうとすれば目を付けれてしまい、割って泊まらないかと話しを持ち掛けられ、亭主が1人6,000アロ1部屋では無いとしっかり訂正し少年から眼を飛ばされ黙った。
「いや、無茶な値引きは良くないからな。悪いが俺達は野宿をするよ」
「へぇ、まあそんなあっさり決めんなよ。おにーさん、俺も金なくて困ってんだよー助けてくれない?」
ニヤリと笑う軽薄な少年に呼び止められ振り返る、薄汚れてはいるが灰色の髪に青と黄色交じりの差し詰め蒼い月のような瞳、サックとはまた毛色の違う美少年だった、サックとユニットを組んで歌って欲しいなーと鍔騎は思いつ出会いは一期一会、鍔騎は首を振った。
「すまない、俺も金は無いんだ」
「へぇ、じゃ冒険者をするって事?おにーさんじゃ傭兵は無理でしょ?」
「行きましょう、彼に関わっていても時間の無駄ですから」
「まーまーそんなつれない事言うなよー冒険者やるだんろ?パーティ入れてくれよ」
「……お断りします」
「俺も本当に困ってんのよー役に立つし」
「……なら条件がある」
「鍔騎さん?」
「俺達に危害を与えない、取り分は3等分、揉め事を起こさない、明日試しで組む、無理なら解散だ。飲めなければこの話しは無かった事にする。それなら明日試しに組む」
「……ああ、いいぜ。おにーさん意外と頭働くねぇ」
サックと同じ位の少年だ、ニヤニヤ軽薄な態度だが必死な事は必死なのだろう、ならばこちらに有利な条件を加えてそれを飲み本当に出来るのか明日見れば良い。
「どうだ?サック君、明日彼がこちらと合わなければそれまでの事だ。俺達も金がいる」
「……分かりました、私はサックです」
「話しが早くて助かるぅ、俺はガブ」
「俺は鍔騎という訳で流石に野宿はなーでも…旦那騒がせてすみません」
「あ、あ、いえ…」
新しくいきなり加わったガブを連れて、宿の亭主に謝罪して外に出る事にした…。




