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僕と君の終わらない夏  作者: 霧雨桜花
2/4

彼の場合ーこうしてあの夏は終え、新しい夏は始まるー

彼の場合編完結です。まだ彼女の場合編があります。次の投稿予定は未定です。誠に申し上げませんがもう少しお待ち下さい。

「「「誕生日おめでとう」」」

三人の友人に囲まれ僕は19の誕生日を迎えた。しかし僕はもう19になったのだと思った。今日はこのループの最後の日。明日になればまた体は眠かった15に戻り、皆僕のことを忘れてしまうからだ。何で僕はこんなことになってしまっているのか?僕はこのループに入る前何を思ってこんな地獄に身を投げたのだろう。僕にはもうわからない。ただ今は漠然とした絶望のみが残っていた。

「よう、颯汰。誕生日おめでとう。」

マイクが1人僕に近づきグラスを差し出す。

「あぁ、ありがとう」

僕もそんなマイクからグラスを受け取る。中には琥珀色の液体が入っている。その液体を一口飲む。ワインだった。

「うまい。うまいなこれ。な、マイク。」

「だろ。俺のイチオシだ。」

マイクはいい笑顔でそう言う。この時間が過ぎて欲しくない。そう願うのは間違いなのだろうか?しかし明日にはもう何もかもが終わってしまう。そんなことをずっと考えていたらいつの間にか時間が過ぎてしまっていたようだ。体が眠りに入ろうとしている。他のみんなももう帰ったようだけど

「一言言って帰れよ。」

文句を口にして意識がブラックアウトする。

「もう何も忘れたくない。」

僕の独り言は闇に吸い込まれた。




ーーーー

目が覚める。カレンダーを見ると前日の次の日だった。

「ループしてない?何故だ?」

思うところもある。だが僕はあの地獄から解放されたのだ。やった。これで人生が自由に…

ドックン

心臓は大きく動く。汗が止まらない。息がしずらい。

「何だこれは。」

僕は苦しいのを抑えようと深呼吸をする。すると脳裏に一つの光景が浮かぶ。

女性が1人ベットに横たわっている。周りには看護師と医者がおり、その後ろに自分がいる。僕は女性に抱きつき、涙を流している。僕が抱きついている女性には見覚えがあった。女性は最近夢で出てくる女性と同じ顔をしている。何故か僕の胸が締め付けられる。胸の痛みについに耐えきれなくなり、意識が落ちるそう思った時、胸の痛みはなくなり、脳裏に浮かんでいた光景も浮かばなくなった。しかし1つわかったことがある。僕は彼女のためにこの地獄にいるのだと。この地獄は彼女を救えなかった僕の罪を裁くためにあるのだと。そう考えているといつも地獄へと叩き落としてきたあの携帯に手を伸ばしていた。かつては僕から手を伸ばしていたのだろう。今は自分から手を伸ばしたことはない。しかし今は僕から手を伸ばす。今から遠く先の僕は今の僕を恨むだろう。それでもいい今はこの感情を理解できれば。僕は携帯に唯一入っていたアプリを立ち上げ、実行を迷いなく押す。待っていて僕は君を。




ーーーーー

僕はまた目が覚める。4年前に今度は戻っていた。僕は自分に喝を入れる。彼女を救う。そのためには今のままじゃ無理だ。自分で研究施設を作ろう。大学院から研究サンプルをもらいそれを自分の研究施設でさらに精密に検査をかける。それぐらいしないと4年後までには間に合わない。そのためには。

「まずはギャンブルで一儲けするか。」

幸いここはアメリカ。カジノなんてありふれている。そして僕には過去へ戻れる手段がある。一儲けなんて簡単いける。今までは恨んでいたばかりだったが今はとても頼もしく見える。

「頼むぞ。僕の希望。」

ポケットの中の携帯を硬く握りしめる。僕はカジノ街へと向かった。





ーーーーー

カジノで時を遡るズルを繰り返し僕は一丁前の金持ちになった。僕はその巨額を注ぎ込んでタイムリープを繰り返してその時代にはあってはいけないほど高性能のスパコンと研究装置を作り上げた。これを完成させるのに400年ぐらいかかってしまった。ループ中新たな発見をした。リープ前に持っていた荷物は過去の時代に持ち込めるという点だ。それに伴い研究スピードも爆発的に上昇した。しかし、type-Ω症候群はとても手強く、ここまで環境を整えたのに一向に特効薬が完成しない。何故かはわかっている。この病気は今までのどの生き物も当てはまらないDNAを有しているこの一点に尽きる。これはDNAの螺旋構造が違うと言うわけではなくDNAの構成成分がそもそもこの世界では見つかっていない未知の成分。それゆえにどうしても研究が進まなくなる。

「一旦寝るか。」

どこまでいっても進まないなら横になる。僕がこの400年でたどり着いた答えだ。

「おやすみ。」

周りには誰もいないがそれでも僕はおやすみと声に出し意識を夢の世界へと飛ばす。




「おはよう。今日はどうしたの?」

女性が目の前にいる。おはようと言っているがここは夢の中だ。女性にとってはおはようなのだろう。

「おはよう。研究がうまくいかなくてね。」

女性からの質問に答える。

「そっか。あれだよ。もっと頭を柔らかくしよう。」

女性は僕へ意見を言う。ここは夢だがいつからか女性と話ができるようになっていた。さまざまな研究装置は女性の助言によって生まれた。

「頭を柔らかくするか。」

僕は考える。しかし僕はどこまでいっても頭が固いので答えに辿り着かない。

「例えば何でtype-Ω症候群って呼ばれてるかだよ。だってΩ()があるならα()もあるんじゃない?」

その言葉にハッとなるΩ日本語にすれば最後。ならα日本語にすれば最初となる病気があるかもしれない。その可能性を女性は僕に示した。

「なるほど。ありがとう。その方向で研究進めてみるよ。いつも見ず知らずの僕に付き合ってくれてありがとう。」

僕は夢から覚めるための扉を開け奥へ進む。

「そんなことはないよ。君は私のために…」

女性は僕が夢から覚める直前何かを言っていた。しかしそれは僕の耳に届くことはなかった。




ピッピッピッピッ

携帯のアラームで目が覚める。僕は目が覚めるや否や知り合いのウィルスマニアに電話をかける。

「オイ。ジャクソン。」

「なんだい。颯汰。僕は今起きたんだけど。」

ウィルスマニアジャクソンは、眠そうにて電話に出る。

「お前に頼みがある。」

「俺へ頼むだなんて珍しい。さては結構重要なことだな。」

ジャクソンは眠そうな声を一転として真面目なトーンになる。

「type-Ω症候群。は知っているだろう?」

「当たり前じゃないか。今君が研究している俺的にはとても食指が伸びそうな道のウィルスのことだろう?」

「あぁ。それに関してお前に頼みがある。」

「なんだい?」

僕は一息置き頼みを言う。

「研究を手伝ってほしい。」

「本当かい?そんなことなら喜んでだよ。で何をすればいいんだい?」

飲み込みが早いやつでよかった。お陰でこの無茶振りを頼める。

「type-Ω症候群の反対になるであろう仮称type-α症候群を見つけてほしい。」

「くくッ。そいつはとってもクレイジーなアイデアだないいだろう。」

「ありがとう。」

「あぁ。用はそれだけか。これから忙しくなるからあるならあるならとっとといってほしいんだが?」

「大丈夫だない。」

「わかった。よーしこっから忙しくなるぞ。」

ジャクソンはウキウキとした様子で電話を切った。よしこれでもし見つかれば研究はさらに一歩進む。


この会話があってから1か月凄い速さでジャクソンtype-α症候群を見つけてきた。ジャクソン曰くtype-Ω症候群が見つかっているからすぐ見つかったらしい。僕の今まで苦労は。そう思ってしまうが、しかしこの結果を見通して彼に電話をかけたのだ。あとはこのtype-α症候群を研究してtype-Ω症候群を中和できないかどうかを調べるだけだ。ここまで来たらもう研究終了はすぐそこだ。



ーーーーー

type-α症候群の研究を始めて早2年僕はtype-Ω症候群の特効薬の開発に成功していた。type-α症候群は人に害はなく、type-Ω症候群のウィルスが罹る病気と言う特殊な性質を持ち、さらには突然変異もしないと言うとてもご都合が良い病気だった。まるで誰かが意図して作ったようなものだ。だがそれでもいい。彼女が救えるなら。僕は急いでジャクソンへ電話をかけた。

「ジャクソン。できたぞ。」

「何ができたんだよ。颯汰。」

「type-Ω症候群の特効薬だよ。お前のおかげだ。今からこれを発表したいからお前もこい。」

「そうか。」

ジャクソンは少し考えたような声を発する。

「俺はいいわ。お前の手柄にしな。」

ジャクソンは自分の手柄を手放す発言をした。

「何でだよ。お前がtype-α症候群を見つけてくれたから生まれたんだぞ?」

「いいさ。お前が大半だったし。それにお前だれか助けたくてこれ研究してたんだろ?」

「っ。ありがとう。」

僕は涙を流していた。ジャクソンの思いを無駄にしてはいけない。この発表絶対に上手く成功させるんだ。僕は研究結果を持ってアメリカの製薬会社に持ち込んだ。


僕の研究は全世界に発信され、治験を終え、正式全世界で使えるようになった。生産に関しても原料であるtype-α症候群がすぐ手に入る。それも手伝ってかなり値段安くなった。これで彼女にも届くはず。その後と言えば僕はその年のノーベル賞を受賞した。だがそんなことはどうでもいい。それよりもtype-Ω症候群は地球上から消え失せた。僕が特効薬を発表してから3年のことだった。それを称されアメリカ大統領から何か凄いものをもらった。だがそれもどうでもいい。type-Ω症候群がなくなったということは彼女は救われた。僕のループも止まった。あの携帯はいつの間にか電源がつかなくなっていた。あの女性の夢も見なくなった。全てが終わったのだ。そんなことを思いながらロサンゼルスの街を歩く。

「あのー。」

後ろから辿々しい英語で喋りかけられる。

「今いいですか?」

その言葉に僕は後ろを振り向く。

8月25日7:25。今までの夏は終え、新しい夏が鼓動を始めた。

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