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僕と君の終わらない夏  作者: 霧雨桜花
1/4

彼の場合-例え僕が狂おうとも-

こんにちは。霧雨桜花(きりさめおうか)と言うものです。この小説は高校生の頃から書いていた物なので少し文法が無茶苦茶かもしれませんがそんな駄文ですがお付き合いしてくださると幸いです。

ピッピッピッピッ

僕は病室の内にいた。中には僕とベットに横たわる彼女だけ。彼女の右腕からは無数の管が伸び、口には酸素マスクをつけている。

「今日、お仕事はどうしたの?」

彼女は口を動かす。彼女の言う通り今日は月曜日だ。

「そんなの決まってるじゃないか。」

僕は彼女に強めに言う。

「今日が峠なんだろ。いない訳ないじゃないか。」

僕の言葉に彼女は微笑む。

「そっか。今日なんだ。」

「知らなかったのか?」

「最近、考えるのが怖くて。」

僕はその言葉にハッとなった。

「ごめん。」

「ううん。いいよ君がいてくれたらなんか今日を乗り越えるたれるような気がするよ。」

彼女は笑う。僕は自然に彼女の左手を握っている手に力が入る。

「もう痛いよ。」

彼女の言葉に自分の手に力が入り過ぎていたことに気づく。

「ごめん。」

「もう今日は謝ってばかりだね。」

「ごめん。」

「もうまた言った。」

彼女の両頬が膨らむ。少し気まずくなり壁に掛けられている時計を見る。6:45。時計はその時刻を指していた。彼女が医者に告げられている残り生きられているだろうと言われている時刻までもう30分を切った。

「どうしたの?」

彼女が不思議そうにこちらを見つめている。僕は自分に言い聞かせる。不安な表情をするなと。

「なんでもないよ。」

僕は必死に笑顔を作る。その顔はとてもひどいものだったと思う。それを証明するかのように彼女の表情は何かを察したものだった。

「そっか私もう死んじゃうのか。」

彼女の表情はとても健やかなものだった。

「違う。」

僕は声を荒げ

「君はまだ生きるんだ。だってまだ、君と行きたいところがあるんだ。君に見せてあげたいものがあるんだ。まだ…まだ…。」

頬から涙が溢れる。

「まだ君と一緒にいたいよ。」

僕は自分の思っていることを彼女にこぼす。すると彼女は僕の涙を左手で拭き

「そっか。じゃあ私はまだ死ねないね。」

僕が欲しい言葉をくれた。

コンッコンッ

扉がノックされる。おそらく看護師が彼女の着替えを持ってきたのだろう。

「少し、席を離れるね。」

「うん、わかった。」

僕は彼女に告げ席を離れる。扉を開け看護師とすれ違う。病室の前では邪魔になるのでロビーへと足を運ぶ。type-Ω症候群。彼女が罹っている未知の病気だ。そのウィルスの形は地球上で今まで発見されたどの株とも異なり、一説では異世界から来たウィルスとも言われている。またこの病気に発症例も極端に少なく今分かっているのは『免疫の低下』『ガン細胞の発生率の急激な上昇』『肺機能の低下』『消化器官の機能低下』など発見されているものだけでも命に関わるものばかりだ。潜伏期間が非常に長く、感染力が低い。未知の病気というのもあり研究も大して進んでいない。つまり罹ったら自然治癒か死ぬしかない。思考がマイナスになっていることに気づき、また時計へ視線を移す。7:00。時計はそう示していた。もうそろそろ着替えも終わっているだろう。そう思い彼女の病室へと移動する。彼女の病室の前に着き戸を開けようとした時。

ピーーーーー

音が聞こえる。

「美桜さん。美桜さん。」

中から看護師の焦った声が聞こえる。奥から医師が走ってくるのが見える。

「嘘だろ。」

僕も慌てて中に入る。そこには心電図の値が0になっているモニターと焦っている看護師。そして彼女…美桜がいた。

「すみません。避けてください。」

医師が入ってくる。先程まで焦っていた看護師も正気を取り戻し、心臓マッサージを始める。しかし彼女の心臓は動かない。動いてくれ。頼むから。僕は君とまだ一緒に。そんな奇跡は起こるはずもなく。

「死亡が確認されました。」

8月25日7:25。彼女は余命宣告通りこの世を去った。僕だけを残して。気が狂ったように僕は彼女を抱き寄せ泣いていた。その体はまだ温かかった。まだ死んでいるとは思えなかった。





ーーーーー

彼女が亡くなってから1か月が経とうとしていた。僕はあの日以来外へ出ることがなくなった。彼女の葬式には出なかった。あれに出てしまうと気が狂ってしまいそうだから。彼女の遺品と一緒にかつて彼女と過ごしていた部屋を借りている。そこでずっと彼女を待っている。待ち続けている。

「君にもう一度会いたいよ。美桜。」

僕は自分と彼女が写っている写真を手に取る。もう二度と撮ることが出来ない彼女とのツーショット。その事実が僕の心を深く抉る。

プルルルルップルルルルッ

電話の着信音がする。もう1ヶ月は充電していないが充電が残っていたらしい。携帯を見るとそこには『父さん』と表示されていた。それを見ると僕は着信拒否をした。くだらない説教ばっかしてくるからだ。

ドンドンドンッドンドンドンッ

扉が思いっきり叩かれる。おそらく父さんがここまで乗り込んできたのだろう。そう予想し、また彼女の遺品群へと目を向ける。そこに目を向けている間まだ彼女がそこにいるかのような錯覚を受ける。

「おい、お前。」

ふと声が聞こえた。聞いたことがない男性の声だ。気のせいか。そう結論づけまた彼女の遺品群へ目を

「おい、無視するな。」

やはり声が聞こえる。声がする方へ目を向ける。そこには一人の青年が立っていた。

「お前の願い叶えてやる。」

そう青年は告げた。

「本当か?」

僕は怪しみながら青年の顔を見る。その顔は僕には人を騙すようなことをしないように見えた。

「本当だ。何でも一つだけ叶えてやろう。」

その言葉に僕は

「じゃあ、彼女を美桜を蘇らせてくれ。」

「いいだろう。しかしどう叶うかはわからないそれでもいいのか?」

青年は深刻そうに告げる。でもそんなの

「どうでもいい。彼女が無事ならばそれでいい。例えそれで僕を忘れようとも。」

「いいだろう。その願い叶えよう。」

視界が白く染まる。意識が黒に染まる。それでも僕は彼女が残した携帯電話は手放さなかった。最後見たのは青年の満足そうな顔だった。





ーーーーー

「ーー起きなさい。ーー起きなさい。」

誰かに話しかけられている。

「颯汰起きなさい。」

その言葉にハッとする。目を覚まし横を見る。そこには最後見たことがある顔より19才ほど若くなった母親がいた。

「母さん。なんか若くなった?」

「何言ってるのよ颯汰。母さんはまだ26よ。失礼じゃない。」

母さんがこちらを不審がる。26?母さんは45の筈。僕は自分に体を見る。体は自分でも分かるほど小さく。窓の外は小学生まで過ごしてたアメリカの風景だった。僕はその事実に自分に起きた現象を理解する。過去に戻ったのだと。

「何でもないよ母さん。」

未だ不審がっている母さんの言葉をかけ下へ降りる。美桜を助けられる。その事に胸が躍る。美桜がtype-Ω症候群に罹るのは19の時。それまでにこの病気を解明し切ろう。type-Ω症候群が世界で初めて確認されるのは今から10年後。それまでにできることをしよう。下へ降りると1通の手紙は置いてある。颯汰様へ。手紙にはそう書かれていた。僕はその手紙を警戒しながら開封する。手紙には

『無事過去に戻れたようだな。俺はあの時お前を過去に戻した者だ。お前に好きな時に好きな時間まで過去に戻れる力を与えた。それを活用しお前の大切な者を助けるがいい。発動する条件はお前のポケットに入っている携帯電話だ。ではな。』

その手紙を見て自分のポケットを確認する。確かにポケットには携帯が入っており、その携帯は彼女が残していった携帯だった。僕はその携帯電話を握りしめ決意する。

「絶対に美桜を助ける。例えどんな犠牲を払っても僕自身が壊れ切っても。」

そして行動に起こす。取り敢えずはひたすら小学校から高校をループしよう。高校は全て違う高校を受ける。落ちたら中学校の最初まで戻る。そして時期が整ったらハーバード大学に合格する。もちろん落ちたら中学校まで巻き戻す。今度こそ絶対に彼女を助けるんだ。





ーーーーー

それからというもの100回以上のループを繰り返した。その甲斐もありハーバードの大学院に受かった。ここではウィルス学の研究をしている。もしかしたらtype-Ω症候群の研究もしている。飛び級を駆使して15でここに入れたが美桜が死んでしまったのは25の時。あと10年で研究を終わらせ、特効薬を作る。出来なかったら。大学院の1年目に戻る。次はこれを繰り返す。絶対に彼女を助けるんだ。

「颯汰さん。研究サンプルが取れました。」

「ありがとう。」

僕は手渡された研究サンプルに手をつける。待っててね。美桜君を助けるから。絶対に。





ーーーーー

もう何回ループしているかはわからない。何でこんなことをしているかもわからない。でも僕は何かをしたくてループしている。おそらく目の前のこの病原体だろう。type-Ω症候群そう呼ばれている。この病気を解明しようとしているのだろう。何でそれがしたいのかもわからない。止めようとすると頭が痛くなる。それと同時に1人の女性の顔が浮かぶ。それが誰かも僕には分からない。でもその顔が浮かぶたびに早くしないとと焦燥感が湧く。そして19になると体が勝手にループを始める。ループする時に使う携帯いつから持っているかもわからない。だがこれを見ると胸が締め付けられる。よくわからないまま僕は手を動かす。

「颯汰。」

隣から声が聞こえる。そちらを向くと同僚のマイケルがいた。マイケルは心配そうな顔をしてこちらを見ている。

「最後いつ寝たんだ?」

その言葉に僕はすぐに答えられなかった。最後寝たのがいつかわからないから。

「もう五日は寝てないぞ。このままじゃ死ぬぞ。」

僕はマイケルの大丈夫だと言おうとする。その時脳裏に

「颯汰。もういつまで起きてるの?もう寝なさい。寝れないなら私も一緒に寝るから。」

女性の声が聞こえる。不思議とその声に抗う気持ちが湧かない。

「わかった寝る。」

僕はマイケルにそう答え仮眠室へ移動する。仮眠室で横になると体は眠かったようですぐに眠りに入った。


「颯汰。今日は早いわね。」

目が覚めると女性がいた。理性では彼女を不審がっているが本能は彼女を求めていた。

「おはよう。ーー。」

答えを返す。しかし名前の部分にノイズが走る。自分の声なのに聞こえない。女性へ手を伸ばそうとする。すると場面が変わる。寝室だった場所がいつの間にかリビングになっていた。先程まですぐ近くにいた女性はいつの間にかキッチンに立っていた。動き的に料理を作っているにだろう。女性の台所に立っている後ろ姿を見ると何故か涙が流れる。それが二度と見ることが出来ないことを知っているかのように。

「颯汰。ご飯出来たよ。」

女性がご飯を持ってくる。白飯と味噌汁。一般的な日本の朝食だ。

「ほら食べよ。」

女性が催促してくる。僕はその言葉で手を合わせ

「いただきます。」

「いただきます。」

朝食に手をつける。白飯を食べ味噌汁に口をつける。その瞬間また場面は変わる。リビングだった場所は消え自分1人だけだった。いや、実際は数々の荷物で部屋が汚くなっているだけで部屋自体は変わっていなかった。その場所はどこか懐かしく感じていた。僕は僕は…


目が覚める。そこは見慣れた仮眠室だった。僕の頬は涙で濡れていた。人間は見た夢を忘れるものだが今日見た夢はどうにも忘れる気がしなかった。それどころかまた見たいと思ってしまうほど何故か求めてしまうものだった。

「へい颯汰。いい夢は見れたかい。」

マイケルが声をかける。

「その様子はいい夢見れたようだな。鏡を見るといいぞ颯汰。」

僕は鏡を見る。鏡にはいつ浮かべたか分からないほど昔にしていた笑顔がそこにあった。これからは毎日寝よう。そう思えるほどには今日見た夢は心地がよかった。


それからというもの研究が面白いほど上手くいくようになった。今までわからなかったウィルスの基本構造。DNAの基本骨子。あの夢を見てからすごい速度で進んでいった。しかし、どうしてもそれに対する特効薬を作ることができなかった。

「颯汰。滅入ることはないぜ。日本ではこういうらしいぞ。急がば回れってな。」

マイケルが僕を励ましてくれている。だが、特効薬が出来ないままもう数えられないほど迎えた19になる年になった。

読んでいただきありがとうございます。初心者ですので何かありましたら感想などお願いいたします。

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