夢見ること
小さない頃の夢、勇者、魔法使い、戦隊モノのレッド――
剣を取って勇敢な心を持ちながら人のために戦う勇者。
ありとあらゆる魔法で人々を助ける魔法使い。
悪い敵と戦い世界の平和を守る戦隊モノのレッド。
どれも現実ではなれない子どもの頃の夢。
そして、今の夢は公務員。
父親が安定していて、現実的という夢だ。
でも、本当になりたいものは――。
演技やバラエティーで人々を魅了し、人々に笑顔と頑張る糧をくれる。
そして、俺に頑張る力と生きる理由をくれる推し。羽柴大夢君みたいな人間になりたい――。
とあるファーストフードフード店で一人の男子高校生が働いていた。
「ありがとうございます。またのご来店をお待ちしております!」
お客さんを見送り、ふーっと一息をつき時計をみると「あと、5分で当落の時間だ」と急に心がざわつきだす。
「優斗なにそわそわしてんだよ、トイレ?ささっと言って来いよ。」
厨房から優斗の先輩が覗き込む。
「違いますよ!18時から当落なんで心がざわめいてるんですよ。休憩がもう待ち遠しくて待ち遠しくて」
「舞台のだろ?本当に夢中になれるものがあるって羨ましいな!そんな推しに会いに行けるかそわそわしてる可愛い優斗君の為に店長に休憩出していいか聞いてくるわ」
その言葉を聞いた瞬間、キラキラした目で先輩を拝む。
「先輩様、ありがとうございます!もう推します。」
「いや、推すな推すな」
ある意味「推せ」とふりなのかと思いながら優斗は接客に戻った。
18時を少し過ぎたあたり、別のアルバイトに引き継いで、休憩に入る。
メールを確認するとまだ、当落が届いてなかった。そわそわした心に「人」と書いてツバを飲みながらチケットのサイトを開こうとする。いつもは気にならない通信速度に気になりながら操作進め、手汗をにじませながら最後の画面をタップする。
「嘘だろ……」
思わず声が出た主のスマートフォンの画面に「落選」の文字が続いてた。残りの休憩時間は悲しみを胸に眠りについた。
そして、残りの時間は「次のために徳を積もう」と心に使命感を宿し、無心で働いた。
アルバイト先から帰宅すると姉のめいが「やばい!やばい!」と駆け寄ってきたので振り向いたら、勢いが良すぎてスリッパが綺麗な放物線線を描いて玄関に座っていた優斗の顔面に直撃した。
「姉さん、いきなり何の洗礼?何がそんなやばいの?」
放心状態な声で投げかけた。
「運が巡ってきたの!チケットがご用意された!」
「えっ!?うそ?」
画面を見せながら「どこに嘘つく必要があるの」とめいがスマートフォンの画面を見せる。
「姉ちゃん、ありがとう…。俺、息を吸って吐いててよかった。」
「感謝してよね!テスト前だからちゃんと勉強してお父さんに怒られないようにしなよ。」
姉の運の強さと偉大さに感激しながら優斗が頷く。
その日の夜、嬉しさを胸に眠ったからかほんの少しだけ懐かしい夢を優斗は見た。