表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

夏の暑い日に

7月のとある日の夕方前に、僕は再び散歩へと出かけた。

この時期になるとさすがに暑い。僕は大通りを歩いてセブンイレブンまで行き、チョコモナカアイスを買った。モナカアイスなら、この炎天下でもすぐに溶けてドロドロになる心配はないだろう。


わき道に入ってしばらく歩くと、小学校があった。もう夏休みに入っているのか、校庭では数人の子供がサッカーをしているだけだった。僕はフェンスのそばに立ってそれを見ながら、モナカアイスをぼんやりとかじっていた。校庭のそばのベンチでは、中学生らしきカップルが何かについて話し込んでいた。

うだるような暑さが、僕の思考回路を麻痺させていた。この暑さの中では、過去と現在と未来がごっちゃになって、その境界を失っていくような気がした。


近年になって地球温暖化が声高に叫ばれるようになったけれど、僕が小学生だった20年前もの夏も、負けず劣らず滅茶苦茶に暑かった。放課後になると、僕はクラスメイトと一緒に校庭で、宝陣取りだとかドロケイだとか氷鬼だとか高鬼だとかをして遊んでいた。


宝陣取りというのは相手の陣地に置いてある宝を走って取りに行って、自分の陣地まで持って帰ってきたら勝ち、という遊びである。宝は、運動会で使うカラフルなボンボンみたいなやつだ。ただし、宝陣取りには「新しい」「古い」という概念があって、安全地帯を出て時間が経つにつれて段々自分は古くなって行き、より「新しい」敵にタッチされると捕虜になってしまう、というのがミソだった。だから宝を取りに行く時は相手にタッチされないように全速力で走らなければならない。僕はそんなに足が速い方ではなかったので、宝を取れた記憶はあまりなく、大体は味方のアシストのために囮になっていた。


余談になるけれど、前に関西出身の嫁に聞いたら宝陣取りなんていう遊びは知らないと言っていたので、もしかしたらあれは東日本の遊びだったのかも知れない。ドロケイ、氷鬼、高鬼とかは知っていたから、そっちは恐らく全国区の遊びなのだろう。


焼けるような暑さの中でそんな遊びをするもんだから、終わった後はとにかくいつも汗だくだった。水分補給のために校舎に設置されているウォータークーラーの水を、何度も繰り返し飲んだ。飲んだ後に友達とふざけて跳ねて、胃とか腸にたまった水をチャプチャプ言わせて笑っていたのを覚えている。


それだけ水を飲んでも、帰り道を歩いている内にすぐに喉が渇いてくる。帰り道の途中にあるスーパーは、僕らにとってまさにオアシスだった。学校の規則で下校中に入ったりするのは禁じられていたのだが、前に立つのは別に禁じられていない、という屁理屈を使って、自動ドアの前で中から吹き出してくる心地の良い冷気を楽しんでいたのだった。


僕は電車通学だったのだが、小学校の近くの駅のホームにある立ち食いソバ屋のおっちゃんは、今風に言うとまさに神であった。夏になると僕らがとにかく喉が渇いていることを知っていたおっちゃんは、氷入りのお冷を、いつもタダでくれていた。今まで人生で色んな水を飲んできたけれど、どんな天然水よりも、あの水道水が一番美味かったような気がする。しかし残念なことに僕らの不正はそのうち先生にバレて、おっちゃんからお冷をもらうことは禁じられてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ