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ステゴロ魔法少女の受難  作者: 南部忠相
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第63話 帰り道

「で、連れてきちゃったわけっすか…?」

 呆れたようなリンの視線が痛い。ちょっと目を逸らして残りの2人を見る。たつなは困ったような顔をしているがみちるは両手の人差し指と親指で四角を作ってこっちを見ている。よくわからない。

 みんなにはまだ話していないがここに来るまでにわかったことがある。それは人型を抱えていると…いや、正確には人型に触っていると記憶が甦ってくるのだ。黒い部屋の事、話した時の表情、悲しみ。自分でも信じられないが人型は人だったのだ。そして死体は消えない。

「あと、いままでの、ひとがた、どうなったの?」

 たつなが顎に指を当てて難しい顔をしながら思い出すように口を開く。

「そういえば消えてなかったかも? エステルのケガがひどくて気にしてなかったけど」

 たつなの言葉にみちるも相槌を打つ。なんで連写モードで写真を撮ってるかはわからない。フラッシュをたくな。

「私は後処理で残ったから見ていたけど、最初の人型はヘリで回収していたよ。間近で見るとすごいね、あれ」

 輸送ヘリといえばCH-47J。燃料を文字通り湯水の如く使う恐怖の乗り物。戦闘ヘリのAH64Dなどは既に退役状態で弾薬すら積んでいない。それなのに回収ごときでそんなものを飛ばすとは驚きだ。

「いきさきは?」

 静寂。倒すのが仕事だからそれから先は知り得ないのは当然か。今回の出撃は去石が自衛隊との連携を乱したのだから、きっと上層部に聞いても答えないだろう。

「ぜんかいの、ひとがたも?」

「うん、緑のおっきいトラックで運ばれてったよ」

 緑の大きいトラック、3t半の事だろうか? 妹の方もお姉ちゃんと一緒に埋葬してやりたいが行き先がわからなければどうしようもない。

 いずれにせよこのお姉ちゃんをどうするか決めなければならない。魂は既に旅立っているが、研究材料にされるのは可哀想だ。思い切って火葬?

「あ、つきにいったひとたち、なんにん?」

 これも確認しなければならない。その中で何人が日本人だったのかも。

「んーと、調べないとちょっと……」

 考え込むたつな。歴史とか弱そう。話し出そうとしたたつなを遮ってリンが口を開いた。

「病院行ってからで良いっすか?足、結構痛いんすけど……」

 あんまりにも顔に出さないから完全に忘れていた。我慢強すぎる。とりあえずリンは病院送りにして、お姉ちゃんを抱えて事務所に戻る。

「ところで、なんで月の話だったの?」

 たつなが不思議そうな顔で聞く。突拍子もない事だが、ひとまずあらましだけでも説明しなければならない。

「たぶん、かえってこなかった、ひとが、ひとがた」

 説明しなければならないのだが寒くて喋るのが億劫。おっふ、たつなの腕に力が入る。食べてないけどなにか出そう。

「どうしてそう思ったの?」

「このひとがた、まえのひとがたの、おねえちゃん」

「え?」

「ふたりで、つきにいって、ああなったの」

「そん、な…」

「ぐ、」

苦しい。

「ご、ごめん!」

 変な話をしたのも悪いけどぬいぐるみじゃないからもう少し大事にして欲しい。みちるみたいになんか手つきが嫌にベタベタするよりは良いのだが、あばらが折れそうだ。今更だけどたつなもみちるも普段から力が強い。なにゆえ?

「たつな、とにかく事務所へ戻ろう? エステルも寒そうだから」

 遠のく意識の中ちょっとだけみちるを見直した瞬間だった。

りんちゃん我慢強いので話が落ち着くまで黙っていました。

実はとっても痛かったのです。


というか一週間かかって一話しか書けてない……

最初の勢いはどこへ

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