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ステゴロ魔法少女の受難  作者: 南部忠相
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第58話 ダム防衛戦

 風が強すぎる。雪が強風で顔にびちびち当たる。痛い。

 ここは北上川本流をせき止めて造られた四十四田ダムの重力式コンクリートダム部。発電所作業員からの”幽鬼が大群”という通報により久しぶりの全員出撃だ。

 敵総戦力は不明、現時点で撃破数はオウルベア22、アプタルボックス11、ナーガ9、ゴブリン49。アプタルボックスというのは1立米くらいの黒い箱だ。どうやってるかは知らないが空を飛び、遠距離攻撃を得意とする。あんな奴でも飛べるのに、なぜ?

 とりあえず奴の装甲は紙みたいに脆いため投石で楽々排除できる。

「みんなケガはない?」

 心配性のたつなから無線が入る。

「ぶじ」

「お腹減ったっす」

「たつなこそ前に出過ぎないでね」

 ここ数日、発電施設を狙った幽鬼の攻撃が報告されている。大型の幽鬼を主軸とした編成で脇を遠距離攻撃を持った幽鬼が固めている。以前から戦略的に動くことは確認されていたが、標的が施設となると今回が初めてだ。

 それでも出てくる敵が見知ったものだから自衛隊が到着するまでの間に合わせという気楽なものになった。だったはずが既に一時間を超えて戦っている。遅刻、許しがたい。

 幽鬼の攻撃は第3波を超え、物量で押されれば対処できないかもしれない。

 そう思った瞬間がたしかにありました。そんな心配をものともせず、たつなとみちるの広範囲攻撃が見事に敵を圧倒していく。疲れ知らず。

 単体相手では大味で使い難いたつなのトゥインクル☆スターライトもこういった状況では獅子奮迅の活躍をしている。爆発を生き延びた連中はみちるのホーリーブレイドで瞬殺。敵ながら哀れ。

「出る幕無いっすねー」

「らく」

 自衛隊から連絡がないせいで身動きが取れないが、アプタルボックスや群れから遠い位置に出現したナーガを仕留めるだけでほぼ何もしていない。リンと二人でたつなとみちるの活躍を観戦しているだけ。さぼっているみたいで気まずい。

「吾味さんに電話してみるっすか?」

 幽鬼は後回しにしたっていいことなど一つもない。ほかに出現があればそちらに回ったほうがたつなとみちるの負担も少なくなるだろう。リンは電話を取り出して談笑し始めた。仲良し。

「たつな、ごみさんに、でんわちゅう」

「了解、もし移動するならその前に教えて」

 これだけの敵を前に、たつなもみちるも余裕がありそうだ。もともと吾味と三人で県内すべてを回っていたのだからそれはそうか。

 あなどっていた訳ではないが、普段から当たりのやわらかい二人だから荒事のイメージがわかな・・・そういえば初めて見たとき、たつなはチンピラに食って掛かっていた。みちるには派手に投げられて逃げ損ねた。・・・ちゃんと荒々しかったな。

「近くの発電所にも出てるらしいっす。…どこっすか?」

「きたのほう」

「うわー、ざつー・・・」

 ここから北上川をさかのぼっていけば見えるはずのところだ。灌漑時期には落差を使って田に水を送る施設としても活躍する。破壊されれば3000hの水田に水を送れなくなる。米、大事。

「抱えてくんで、案内よろしく」

 大事なんだが防寒着が心もとないのでついて行きたくない。なんとかリンだけで向かってくれないだろうか。

「おうえん、してる」

「だめっす」

「さむい、うわぎ」

「だめっす」

「!?たつな!」

「了解、いってらっしゃい!」

あー、寒い。春はまだまだ先か。

ダムってすごいですよねー

軟弱地盤にも技術革新で建てられるそうです。四十四田ダムは弱地盤、強酸性とダムには向かない土地だったらしいです。今は水質改善していますが、昔は鉱山からの水でひどい有様だったとか。当時の最先端技術で建設されたダムは今も水害を軽減したり発電したりと大活躍。

心霊スポットしても有名らしい……こわー

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